第6話 邂逅の時
さて、自分の見間違いを証明するために2人を置いて、ここまで見に来たわけだが
「...」
目の前には黒髪黒目の愛らしい妹、アイシャ。
アイシャが裏から出てきてしまっていた。
裏と表を行き来する扉に鍵をかけている訳では無いから絶対に来れない訳では無い。
しかし、外に出る危険性を1番理解している人が自分から出てくるなどと考えられるだろうか
「...言い訳を聞こう」
「え、えっと皇国からいらっしゃった雌ぶ...皇女様と皇子様を人目見てみたくて...」
「こちらに出てくる危険性は知っているだろう...」
「...はい...」
「とにかく誰かに見つかる前に早く戻...」
「テルミス様、どうかなされたのですか?」
「「!!」」
「テルミス様のお声が聞こえたもので、気になって見に来てしまいました。ところで、そちらの方は?」
まずい
見られてしまった
しかし聞かれたからには紹介はしないといけない。
「こちらは妹のアイシャウトです」
「アイシャウト=フォン=ライズでございます、皇国の方々。以後、お見知り置きくだされば幸いでございます」
初めてアイシャのしっかりとした挨拶を聞いたが、驚いた。努力の成果だろうな。
しかし、彼らにとって黒髪黒目の彼女はどう見えているのだろうか。
また以前のようにならなければいいが...
「お初にお目にかかります、ソフィア=デ=メストです」
「......弟のソルス=デ=メストです」
「それにしてもテルミス様には妹様がいらっしゃったのですね。綺麗な黒髪、とても魅力的ですね」
「え、えぇ。自慢の妹です」
「......お褒めいただきありがとうございます」
横目で妹の表情を伺う。
少し顔を俯けているせいで表情は読めないが少なくとも黒髪を褒められて喜んでいる、という訳では無いようだ。
「すみません、妹はこれから予定がありますので、ここで失礼させていただければ、と」
「申し訳ありません。今宵の晩餐、楽しんでいただければと思います」
「そうですか...。それは残念です。できれば一緒に食事をと思ったのですが」
「お心遣いありがとうございます。それでは」
そう言い妹は裏に続く扉に向かう。
それを後目に僕は2人を促した
「すみません、少し寄り道してしまいましたが、向かいましょうか」
「いえいえ、もっと仲良くなりたいのでお時間あればまたお会いしたいです」
ソフィア殿はそう笑顔で言う。
妹にそう言ってくれる人は家族以外では初めてかもしれない。
いい人だと思うが自分の黒髪黒目に良い印象を持っていない妹にはあまり良く捉えられないだろう。
妹との仲が深まることは難しいかもしれない...
そんなことを思いながらソルス殿の方を見ると
「.........」
ぽかーん、と
本当にぽかーんという言葉が似合うような顔をしていた。
「あ、あのソルス殿?」
「ソルス、どうしたの?」
「い、いえ!なんでもありません!」
僕とソフィア殿が声をかけると冷静沈着なソルス殿がボッっと音がするくらいいきなり赤くなり、声を上ずらせながら返答をした。
「うふふ、ソルスにはアイシャウト様のような女性が珍しいのね。テルミス様、ソルスはいつもは冷静を装っていますが動揺すると...」
「ね、姉さん!やめてくれ!」
「ソルスはかっこいいから貴族のご令嬢は放って置かないものね。どの令嬢もソルスにを見ると一様に目がギラギラするもの。それに比べてアイシャウト様は...」
「姉さん!!!」
「うふふ」
仲睦まじい姉弟の関係を眺めながら、僕はこの後の妹に来るであろう面会希望の対応と晩餐のため僕達の戻りを待っている父母達の小言を聞き流す用意をしながら必死で笑顔を作っていた。
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