第4話 見つけた光

私、アイシャウト=フォン=ライズ、このあいだ13歳になりました。

王様のお父様と2人のお母様、かっこいいお兄様がいます。


皆私に優しくしてくれます。

お父様もお兄様もお仕事忙しいのに時間がある時は私に会いに来てくれます。お母様達はご飯を作ってくれたり、ご本を読んでくれたりします。最近はお勉強を見てくれます。

皆仕草が綺麗です。私も見習って綺麗な姿勢を頑張っています。


そんな私には悩みがあります。

私の髪の色です。

私の家族の髪は金か銀なのに私は真っ黒。目も他とは違い黒。どうして私だけ黒なのでしょうか。私もお父様やお母様達のようなキラキラした色がいいのに。


そして私にはやってみたいことがあります!

私は今まで外に出たことがありません。窓から外の景色をのぞむくらい。ご本で読んだんです、外にはいっぱいの人がいて、美味しいものが沢山あるんです。外からお城も見てみたいなぁ。


お母様にもお父様にももちろんお兄様にも何度もお願いしてるのに誰も許してくれないの。


どうして私だけ外に出ちゃダメなんだろう


どうして...


どうして...


...


...


「どうしてよ!!!」


何度も何度も断られ、何度も何度も我慢して、それでも出てみたくてたまらなかった私はとうとう癇癪を起こしてお母様達を怒鳴りつけてしまった。

優しいお母様達が悲痛な顔をして黙り込む様子に心が痛む。


でも私は外に出たいの


外の世界を見てみたいの


気まずい空気になってお茶とお菓子を取りに行ったお母様達の目を盗んで、前に私が眠ってしまった時にかけてくれたお兄様のローブを羽織って部屋を飛び出した。


ここはお城だからたくさんの人がいるはず

兵士さんやメイドさんに見つかったら連れ戻されちゃうかもしれない


そう思い隠れながら城の門近くまで来るとたくさんの人が城の中にいた。

お城の人の格好じゃなさそうなので紛れ込むことにした。


私はまだ小さいから溶け込めるはず


と、人混みに紛れて城門を通り抜けた。






初めて城の外に出た。

ご本で読んだような綺麗な街並みと活気のある人達。

興奮して色々覗いた。

見世物屋で毛むくじゃらの動物達がはね回るのを見た。

お腹が空いて目に付いた食事処を覗いてたら優しいお婆さんがパンをくれた。お母様達のパンの方が美味しいけど、それでも初めての外での食事はとても美味しく感じた。

お酒に酔った鎧を着た人達を素早く取り押さえて連れてった人にこっそり着いて行ったら同じ格好をした人が沢山いた。あれ、私も着れるかなぁ。今度お母様達にお願いしてみようかなぁ、と考えて私はお母様達に怒鳴って、黙って出てきてしまったことを思い出し今までの楽しい気持ちが急に萎んでいく感じがした。


皆私が嫌いで外に出そうとしなかったのでは無いことは知っている。

何か理由があったのかもしれない。

怒ってるかな

帰ろうかな


気付けば日も暮れかけて人もまばらになっている

私は城をめざして歩き始めた。



城は夕暮れの光を反射して赤くキラキラしてる。

キレイだなぁ、とよそ見しながら歩いていく。



それがいけなかった



私は前から歩いてくる人にぶつかって転んでしまった


「キャッ」


「おっとごめんよ嬢ちゃん、怪我はな...」


「あ、すみませんよそ見してて」


私がそう謝って顔をあげるとぶつかったおじさんが目を見開いて驚愕の表情をしていた。


「あ、あの...」


「なんで」


「え?」


「その黒」


転んだひょうしにローブのフードが脱げてしまったらしい。私の黒髪黒目が周囲の人達の目に映っていた。


「なんで王室の悪魔がこんなとこにいんだよ!」


「俺達に不幸を撒き散らしに来たんだ!」


「子供を家の中に入れろ!」


「手の空いてるやつを呼んでこい!」


「殺せ!」


「殺せ!」


「殺せ!」


「「「「「殺せ!」」」」」


わけがわからなかった


でもさっき私のことを心配してくれたおじさんが、楽しそうに話していた人達が、急に怖い顔になった


なに?なんで?ころすって...


状況が理解できずにその場に立ち尽くしていた私を誰かが投げた石が襲った。


「キャッ」


頬が痛い


痛い


痛い


私は急に怖くなり一目散にその場を駆け出した。


「逃げたぞ!追え!」


「あの悪魔を殺せ!」


大通りを走る私を色んな人が追いかけてくる


石も沢山飛んでくる


逃げなきゃ


無我夢中で走る私は狭い路地に飛び込み人の少ない裏通りを逃げる。


何度も石をぶつけられすでに身体はボロボロ。靴も脱げ、服もところどころ破れている。


そうしてもう足も動かなくなりそうな時、一際暗く狭い道を見つけた。

私はそこに飛び込み、誰にも見つからないよう願いながら、震えて蹲った。


私を探して裏通りを走り回る人達の声が聞こえる。


「あの悪魔を絶対に逃がすな!」


「俺が仕事で上手くいかないのも」


「私が夫と上手くいってないのも」


「俺の子供が病弱なのも」


「「「全部あの悪魔のせいだ」」」


「「「絶対に許せない!」」」



どうして...


どうして...


わたしなにもしてないのに...


痛いよ...


怖いよ...


...


...


助けて...


お父様お母様お兄様


誰か助けて...


外に出たの謝るから


ちゃんとゆうこと聞くから


だから


たすけて









どれだけ時間が経ったか分からない


外の人達の声は聞こえなくなった


でもこのまま出ていったらまた追いかけかれる


私、このまま死んじゃうのかな












何もかも諦めかけたその時








「すまない。遅くなって本当にすまない」





光が差した


暗闇に差した光


私の大好きな声


優しい声


顔をあげる私の前にいたのはお兄様


目が潤む


私を助けてくれる人がそこにいる


「さあ、帰ろう」


泣きじゃくる私はお兄様の腕に抱えられ、私の部屋に、私の居場所に帰った。






王座に座る彼女は古い記憶に思いを馳せる


あの頃とは何もかも変わってしまったけれども


あの時お兄様が


お兄様が助けに来てくれたからこそ私があるんだ



私のお兄様は渡さない



絶対に

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