第3話 華の海

時は飛び、妹の歳は13を数えた。


僕達は頑張って妹を守ろうとしたが彼女の成長とともにそれは難しいものとなって行った。

妹は好奇心旺盛で部屋や城の外に興味を持っていた。そのためことある事に外に出たい、とねだるのだが外に出したら妹がどうなってしまうのか僕達にはわからなかった。

いつも僕達は困ったような笑顔でもう少ししたらね、と言う他ないのだ。


そして、事件は起こった


何度言っても聞いてくれない僕達に怒った妹が父と僕の公務中、母達の目を盗んで飛び出して行ってしまったのだ。

その日はちょうど建国の記念のお祭りで、城門は開け放たれ、城下は出店が立ち並び、人でごった返していた。


不幸中の幸いか彼女は顔がすっぽり隠れるようなローブを着て行ったため、祭りの途中で騒ぎになることは無かった。

しかし、父と僕がその事を知ったのは祭りも終わりの頃。日も暮れようとしていた。


城内を探し続けていた母達から妹が見つからない、ともしかしたら外に出ていってしまったかもしれない、と聞いた時、心臓が止まりかけた。

家族の中でも自由に動けるのは僕だけ。僕は急いでローブを羽織り、街に飛び出した。


随分探した


大通り、見世物屋、食事処、兵士の詰所、あと探していないのは裏通り。


焦る、焦る


妹は、アイシャは酷い目にあっていないだろうか


いくら統治が上手くいっているとはいえ、裏通りまで手が及んでいる訳では無い


どこだ...どこにいるんだ...


必死になって探す


そして、暗い裏通りのさらに奥、道幅も狭く、月の光も入らないような場所に彼女はいた。


酷い状態だった


腕や足には傷が無数にある。

ローブはボロボロ、その下の服もところどころが裂け、そこから見える肌はどこも紫色に腫れていた。片頬も赤くなっており、目元が少し切れていた。

そんな彼女は息を押し殺し、震えながら蹲っている。


なぜ、どうしてという疑問は後回しに彼女に近づく。

僕だと分からない彼女は怯え、逃げ出そうとする。そんな彼女を抱き寄せ、フードをとって、僕は言う。


「すまない。遅くなって本当にすまない。」


その声に妹はハッと驚き、同時に目に涙をいっぱいに貯める。


「さあ、帰ろう」


泣き出してしまった妹を優しく抱えて人の目に触れないように帰り道を急いだ。

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