第2話 光の道
妹が生まれた。
ライズ王国第1王子、テルミスの、僕の妹だ。
父はあまり妃を取ろうとしないから僕の母と妹、アイシャウトの母の2人しか妃はいない。
母達は中が良く、父も正妃や側妃などと優劣をつけないため王家にしては珍しく円満な家庭を築いている。
産まれたばかりの妹は、愛らしく、天使のようだった。眠り、泣き、動く、その全ての行動が皆を惹き付けてやまなかった。
誰もが妹は愛され、健やかに育つことを願ったことだろう。
しかし、妹が成長するにつれそれは叶わないものとなってしまう。
妹は違った。
僕とも、僕の母とも、僕の父とも、そして彼女の母とさえも。
僕は金の髪、金の瞳。父と母も同じだ。彼女の母は銀の髪に緑の瞳。しかし彼女は黒髪黒瞳。
家族はたとえそんな姿だろうと関係ないと彼女に惜しみなく愛情を注いだ。
しかし、ここは王宮。兵士、メイド、庭師、その他にも多くの人が存在する。
人間は噂が好きな生き物だ。栄光の王家に不吉な黒が、だの本当の子ではないのでは、だの心無いものが飛び交った。
ライズ王家は国民にかなり親しまれている。それは代々皆を惹きつける王が続き、国民を考え、豊かさを与えようと模索してきた王家に対する信頼と感謝による。
ただ、親しまれているからこそ彼らは不純物を嫌った。
災害も訃報も、最終的には個人の不幸も彼女のせいにした。誰も彼もが彼女を悪といい、その嫌悪感は広まった。そして王宮の中さえも満たしてしまった。
彼女の世話をするメイドはおらず、彼女の食事を考えるコックはおらず、王族を除く全てが彼女に牙をむいた。
たった5歳の少女に、なんの罪もない無垢な彼女にそんな厄災が降りかかったのだ。
僕達家族は必死になって彼女を守った。父や僕は公務をこなしながらなるべく彼女の世話をし、母達は人の目を盗んで食材を集めたり、料理をしたりした。
もちろん僕達の食事はコック達が作ってくれていた。しかし、彼女のために料理をするコックはいない。もしも彼女のために僕達が料理をしているなんて知れたら諸々の器具を取り上げられた上、監視がついて自由に動けなくなってしまうだろう。それでは彼女は終わりだ。
そうして、妹、アイシャを育てていく中、ある出来事によって、僕達の生活に天気が訪れるのであった。
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