檻の中から
四野之乃
第1話 檻の中から
「もう諦めたら?」
僕のよく知る2人が剣呑な雰囲気で向かい合っている。
片方は王座から王として、そしてもう片方は立ったまま侵略者として。
「今ならこの国は綺麗なまままるっと返してあげる。もちろん景品は貰うけどね」
景品という所で彼女は僕の方を見る。
この戦争が始まって初めて見る彼女は口を喜びに歪ませ、綺麗な碧色の目の中には狂気を思わせる淀みを
「...」
そして彼女は王座にいるいかにも敗色濃厚で打つ手がないように見せている女、僕の妹に向き直り、言う。
「あなたは負けを認め、景品を、私の大事な大事な彼を手放すとさえ言えばいいの」
「さあ!早く彼を渡して」
その言葉と共に王座のあるこの戴冠の間に彼女の兵士達が次々と姿を見せる
もう城はあらかた制圧されてしまったのだろう
王座にいる妹は未だ目を瞑り、無言を保っている
妹は何を想っているのだろうか
僕がそんなことを考えている間に数を増す兵士達はますます前進し、ついに僕のいる檻までたどり着く。そして檻の入り口の錠が壊される音が響き、扉が開けられる。妹では無い人が檻の入り口を開けるという初めての光景を目にしながら僕は───────
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