第7話 俺だけのスペシャルメニュー。

「最近、会えなかったのは何で?ただカフェが忙しかったから?それとも…」


「くそっ!」耳元で平良がこういった。俺は意外な反応に驚いた。

すると突然、抱きしめられた腕の力が強くなった気がした。

「…何?平良…?」沈黙の後に出てきた言葉は…


「ごめんな」だった。


俺は平良の意外な反応に驚いたと同時に、安心していた。

こんなこと言ったら呆れられると思った。だから…。

「何で謝るんだ?」純粋にわからなかった。


「俺、早千に思った以上に心配かけて、不安にさせてたんだな。いくら早千が言いにくかったとは言え、それに気づかないなんて恋人失格だ。実は…」

平良はそう言いながら申し訳なさそうに、ある袋を見せてくれた。

出された袋には、平良が働いているカフェの持ち帰り用にカップが入っていた。


「もしかしたらちょっと冷めちゃったかもだけど…」

と言いながら照れくさそうに俺に袋をくれた。


俺は、ゆっくりと袋からカップを取り出す。飲んでみてと言われたから飲んでみると…。ほんのり甘くて優しい味がした。

「これって…俺の好きなミルクフォームのラテだけど味が違う」

そういった俺に「どう?美味しいか?」と心配そうな表情で聞くから「美味しいよ」というと、微笑みながら「よかった」と言った平良の表情にキュンとした。


「こんなメニューあのカフェにあったっけ?」と俺が言うと「スペシャルだよ」と言われた。俺はどういうことかわからず「スペシャルって?」聞き返すと「早千スペシャルだ。早千だけに俺が作った新メニュー。いつも同じメニュー飲んでたから、たまには違うメニューもと思ってね。でも、思ったより難しくてさ。作りながら思ったよ。俺って意外に早千の好み知らないんだなってさ。」と照れくさそうに言うから、嬉しくてたまらなくて、また泣いていた。


「ちょちょっと!?早千!?」焦った平良の表情が可愛くてありがとうと言いながらまた抱きしめ合った。


俺のためにいつも遅くまでお店で頭を悩ませてくれてたの?

俺のこといっぱい考えながら作ってくれたの?


いろいろな質問が溢れてくるけど、聞いてたら長くなっちゃうからとりあえず、今は大丈夫。平良に会う前だったら、質問の1つ1つが胸をチクチクさせてたはずなのに、平良に会ってギュッてしてもらったら俺の中に浮かんでくる質問は、心をポカポカさせてくれる。


誰かを好きになるって苦しいときもあるけど、それを上回るくらい嬉しいこともあるんだよな。


「ありがとう。平良…大好き。」と言いながら俺は平良の顔を見つめていた。本当に嬉しくて嬉しくてたまらなかったから。そんな俺の顔に平良の顔が近づいてきて、優しいキスが落ちてくる。



「今度はちゃんと出来立てごちそうするから…。」平良の紡ぐ言葉が優しくて愛しくて何とも言えない気持ちになった。

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