第6話 素直な気持ち

「電話にも出ないし、連絡もないから心配したよ」と平良の声が耳に響く。こんな時でも俺は「うん…大丈夫」と強がりを吐いてしまう。本当は今すぐにでも会いたいのに…。


「嘘つくな。」平良の声色が変わった。太くてどっしりとした声。「我慢しなくてもいいんだ。ごめんな。なかなか会えなくて。」そんなことない。俺が弱くて嫉妬深くて、心配性で自分に自信がないだけだ。平良はいつも俺を気遣って、心配してくれる。


「早千、ちゃんと話そう。夜部屋に行くから…。」という平良の言葉に「うん。」胸が高鳴った。心臓の音が自分の耳にも聞こえてくるほど。そんな時、マスターの言葉を思い出した。『あいつを信じてやれ。』そうだよね。平良は俺の自慢の恋人だ。平良を信じて、今の思いをちゃんと話そうと決意した。


平良から連絡が来たのは、夜の10時頃だった。『今から帰る。』という短い連絡だったけど、嬉しかった。今日こそ平良と会える。まるで父親の帰りを待つ子供のような心境で平良の帰りを待った。その時、ピンポーンという呼び鈴の音が鳴る。


ドアを開けるとそこには、平良の姿があった。「………平良」平良の顔を見た瞬間もうダメだと思った。「早千、ただいま。」その言葉を聞くと同時に、平良に抱きついていた。「おっと。大丈夫か?早千。体調が悪そうだけど。」平良の胸に顔を埋めながら「うん。」と返事をする。


「とりあえず、中に入っても良いかな?」平良が少し困った声色で俺に尋ねるから、仕方なくしっかりと背中に回した腕をはずして部屋の中に招き入れた。


「昨日から知恵熱が出てね。休んでた。でも、もう熱は下がったから平気だよ。」と微笑むと「なんで言わなかったんだ?」少し低めのトーンで平良が問いかける。「だって、平良忙しそうだったし、わがまま言っちゃダメかなって…」と言った途端、「それはわがままじゃねぇだろ?俺たち付き合ってるんだから、大切な恋人の心配をするのは当然だ。恋人なんだから頼ってくれよ。」と言われた。


「我慢するな。もっとわがまま言っていいだ。それが恋人だろ?」と言われた瞬間、また涙が溢れ出して来た。「怖かったんだ。あまりにも幸せで、俺の少しのわがままや嫉妬心や独占欲を口にしたら、この関係が崩れてしまうんじゃないか。平良に嫌われちゃうんじゃないかって、心配で…」そう言いながら泣いている俺の身体を平良の腕が優しく包み込む。


「俺は全然平気だよ。早千がわがままでも、嫉妬心や独占欲が強くても大丈夫。俺に言ってよ。」まるで子供をあやすように背中をさすってくれたり、ポンポンと叩いてくれたり、背中に回された手の平から平良の温もりが伝わって来た。


—————————聞いてみよう。俺が一番聞きたかったこと。

「最近、会えなかったのは何で?ただカフェが忙しかったから?それとも…」

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