第5話 知恵熱
平良は今日も夜遅くまでバイトで夕食を一緒に食べれないらしい…。
『もうどれくらい会ってないかな?』LINEや電話はかけるけど、ちゃんと会ってないの5日くらい経つんじゃないかな。隣同士なのに、何でこんなにも会えないんだろ。かといって、突然押しかける勇気もない。
俺ってそんなに臆病だったっけ。会いたい気持ちが溢れそうなのに…。
『疲れてたら迷惑だよな』
『重い奴だって思われたらどうしよう』
『嫌われたらどうしよう』
そんなマイナスな感情ばかりが頭を過る…。
平良にずっと恋して来て、いざ両思いになって付き合って。嬉しくて幸せで…でも、恋人同士になるとどんどんわがままになって、平良が他の人と話してるだけでも嫌で、そんな真っ黒い感情を抱えてる自分自身も嫌で…。グルグルグルグル頭の中を駆け巡る。
いっそ友達のままのほうがよかったのだろうか。そんなことを考えてしまうくらい苦しくて痛い気持ち。
もう疲れた…とりあえず寝よ。もう何も考えられなくなっていた。
朝になったけど、大学に行く気にもなれなくて学校を休んだ。ウジウジ考えてる自分も嫌だった。身体が少し重かったから熱を測ると「げッ…38度」完全に知恵熱だ。小さい頃から知恵熱はよく出していた。頭の中でいっぱい考えすぎて、ヒートアップしたように熱が出る。
喉も痛くないし、咳も出ない、風邪の症状は一切ないのに熱だけが出るのだ。
「…マジか。とりあえず冷えピタ貼って寝よ」冷蔵庫に行って、冷えピタを貼り、レトルトのお粥があったので、温めて食べた。
解熱剤を飲んで、ベットに入る。『汗をたくさんかけば熱も収まるな』そう思いながら眠りについた。
一眠りして起きたて、部屋の時計に目をやるといつのまにか4時くらいになっていた。身体を起こして熱を測ったら、なんとか37度台だったので、ふと胸をなで下ろす。そういえば…と携帯の存在に気づいた。
「電源落ちてるよ。いつからなんだ?」充電が無くなっていて急いで充電器に指す。
俺は、着信履歴を見て驚愕した。平良の名前がズラッと並んでいたのだ。LINEにも平良のところだけで10件のメッセージが残ってる。
『早千、今仕事終わったよ。今日も会えなくてごめんな。』
『もう寝てる?』
『起こしたらごめん。ゆっくり休めよ。おやすみ。』
『おはよう。早千、怒ってるのか?』
『早千、何かあったのか?』
『なんで電話に出ないんだ?』
ひとまず平良に電話をかけようと青いボタンを押す。携帯の向こうで呼出音の音。
呼出音が途切れたと同時に…「早千!大丈夫か?」と平良の焦る声がした。「平良…」その声がどこか懐かしくて、長い間、聞いていないような気がしたんだ。
——————————————知らない間に、俺の頬には涙が伝わっていた。
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