第4話 信じること。

「はー」ため息をつくのは朝から何回目だろう…。すると、後ろから肩を叩く奴が。「よ!涼風〜。あれ?何か元気なくない?」冬和はこういう時だけ勘がいい。「何か悩み事?それなら俺が聞くよ?」ほらやっぱり…。「なんでもないよ。昨日の課題がキツくてさ」と言ってごまかす。


納得いってないような表情で「ふーん、てっきり平良のことかと思ったんだけど…違うのか。」と言われてドキッとした。「もう!どっか行けよ!」気持ちを見透かされてるみたいで、すげぇ嫌だ。冬和は、はいはいと言いながら違う席に移動した。


大学の帰り、少しでも良いから平良に会いたくなってカフェに向かう。『平良が誰と話していようと気にしない。気にしない。』と唱えながらカフェのドアを開く。すると、店内には平良の姿はなくて「早千、大学終わったのか?」と、マスターだ。俺はカウンターに行っていつもの飲み物を頼む。


「あの…マスター、平良は?今日はシフトじゃないの?」少し小さな声で尋ねてみると「あれ?あいつ今日、休みだぞ。」と聞かされた。『…聞いてない。』突然胸の奥がギュッと締め付けられた気がした。「早千?どうかしたか?」と心配そうに声をかけてくれるマスター。


「いえ、何でもありません。」というと「早千、あんまり無理すんなよ。無理してるとパンッて爆発しちゃうぞ。」と言われた次の瞬間…我慢していた感情が一気に込み上げる。涙となって…。


「お、おー、早千、早千…ちょっとごめん。カウンターお願い出来る?」と慌てた様子でマスターがバイトらしき女性に声をかける。それもそうだ、だって良い年した男が目の前で泣き始めたのだから。


店内のバックヤードに案内されて、俺の大好きなミルクフォームたっぷりのラテをポンと置いてくれた。俺は小さな声で「すいません。」とだけつぶやく。


「早千、何があったかはわからないけど、お前は臆病で、いざという時に自分の気持ちを抑えるクセがある。特に、本気で大切だと思ってる奴にはなおさらだ。感情もな。無理をしたら溜まりすぎて自分ではどうしよもなくなる。相手を信じろ。信じてやれ。平良はそんなにひどい男じゃないことくらい、お前が一番良くわかってるだろ?」その言葉に驚いた。


「え!?マスター、もしかして気づいてたの?」と聞くと縦に一回コクンとうなづいた。否応でもわかるらしい。改めて言われると…恥ずかし過ぎる。


「ったく、さっきはホントびっくりしたよ。早千のあんな姿見たことなかったしな。」そう言いながらクスッと笑っていた。平良と一緒に働いてるマスターの言葉は、説得力があった。


—————————だから、俺は信じてみようと思った。あの時は…。


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