第2話 信じる気持ちと不安の間

「はい。できたよ!」と言いながら平良は、できたカフェラテを渡してくれた。ふと紙カップを見るとマジックで『早千、頑張れ!』の文字と一緒にスマイルマークが書かれていた。俺はそれを見るなり、思わずクスッと笑いながら平良に向かって「ありがとう」と伝える。


そんな平良の姿を見たらさっきの不安もどこかへ飛んで行ってしまった。俺は、カフェを後にしてもう一度平良の方を振り帰り、『大好き』と呟いて大学へ向かった。平良に伝わっていたかどうかは別に良し。




授業を受けている間、平良が作ってくれたカフェラテを机の上に置いてじっと見つめていた。「ちょ、ちょっと涼風!」長峰冬和ながみねとうわが声をかけてきた。長峰は、平良と俺の高校の同級生で、平良と付き合い始めてからさらによく話すようになった。


「お前さっきからそのカフェラテばっか見てんな。あっ、もしかして平良の手作りか?」こいつって時に鋭いところがある。「……うん。朝ね。」というとニヤニヤしながらふーんとだけ言った。



講義が終わって夕食の買い物を済ませて帰ろうと思った時に、ふと平良の顔が浮かんだ。『今日は、一緒にご飯食べれるかな?』とウキウキした気持ちでメールを打つ。『平良、バイトお疲れ〜★もう終わってる頃かな?今日は一緒にご飯食べれそう?リクエストがあったら聞くよ。』と打って送信した。


しばらくすると、受診を知らせる音と『平良』という名前が液晶画面に現れた。俺は、ワクワクしながらメールを開いた。すると、そこには『早千、ごめん!今日、夜予定があってさ。飯一緒に食えそうにないや。本当にごめんね。ありがとう。』とだけ書いてあった。


俺のワクワクした気持ちは一気に冷めて、買い物へ行く気力もなくなった。最近、平良と一緒にご飯食べてないな。冷たくて重たい感情が胸を締め付ける。平良のことは、もちろん信じてる。大好きだ。でも、その分不安になるし、心配にもなる。『今すぐにでも会いたい。』という感情と『しつこくして嫌われたくない。』という感情が俺の中で喧嘩を始めた。


俺はその感情を「大丈夫」と言う言葉で抑えながら家路についた。いつもなら講義が終わってからも平良のいるカフェに顔を出すんだけど、さすがに行くと平良のことを思い出すから今日はやめとこ…。


部屋に帰っても平良のことが気になってしょうがなかった。連絡はあれから来ないし、部屋に帰って来ている気配も感じない。『またバリスタの勉強でも遅くまでやってるのかな。』そう思ったら、ある考えが浮かんだ。俺は、夜食のサンドイッチを作って、平良の部屋がある隣に向かう。


案の定、ドアを叩いても呼び鈴を鳴らしても返事はなくて、作ったサンドイッチはドアノブにかけて自分の部屋に戻った。


シャワーを浴びて、そろそろ寝ようと思っていた時、携帯に1通のメールが受信された。「平良だ!」俺は急いでメールを開く。『サンドイッチ、早千が作ってくれたんだろ?サンキューな。うまそうだ。』という内容で俺は即効返信をした。『今まで勉強してたの?お疲れさま。ゆっくりお風呂にでも浸かって休んでね。おやすみ★』




——————————俺の感情とは、まるで裏腹な内容だ。

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