大好きなんて言えなくて〜恋人編〜

@rainbow-baby

第1話 恋の病

—————高校の時の初恋だった相手である天野平良あまのたいら


あの頃は、大好きなんて言う勇気がなくてそのままだったけど、俺と同じマンションの隣に引っ越して来たあの日再会して、仲良くなって、友達から今は恋人になった。夢みたいでたまに怖くなる。平良は、何も考えていないように見えて意外に、気が利くし、よく見てる。


この前、「平良ってさ、意外に周りの人のことちゃんと見てるよな。」と言うと「俺、早千のことしか見えてないよ。」ってむずがゆくなるようなセリフを平気で言うから、思わず逆切れしてしまった。我ながら大人げない。


でもふと『平良ってカッコいいし、こんなセリフも平気で言えちゃうからモテるんだろうな。』という考えが頭に浮かんだ。


平良と付き合うようになって、今までの俺が俺じゃないような不思議な感覚になる。平良の言葉に一喜一憂して、嬉しくなったり、ムカついたり、時に寂しくなったり…。恋ってこうだったけ?と思うくらい。


巷でよく言う「恋の病」とはこのことなのかと思うほど。かなり重症だ。


pulululu…pulululu…


「わぁ!」思わずびっくりしてしまった。携帯の画面を開いてみると、平良からの電話だった。「もしもし、平良!」とはしゃいで出てしまう自分が恥ずかしい。「おー!早千か?ごめん!今日は会えそうにないだ。急にシフト変わってくれって言われちゃってラストまでバイトになっちゃって…」という電話だった。


俺は拗ねたような口調で「了解。わかった。仕事頑張ってね。」とだけ言って電話を切った。たぶん仕事終わってからでも良いから来てと言えば、平良は来てくれそうな気がする。でも、言えない。バイトで疲れてるのに、わがままなんか言えないよ。


恋って、人を強くもさせるし、弱くもさせるのかな…。


次の日の朝、俺は講義のために朝一で大学に向かっていた。習慣で、平良の働いているカフェに立ち寄る。すると、昨日も遅くまでバイトだったはずなのに、今日も朝からバイトをしていた。


「あっ、おはよう。早千。今日朝から講義か?」と笑いながら言うから、「平良、昨日も遅くまでバイトだったよね?今日もこんな朝早くからなんて…体調大丈夫?」と心配そうな声で聞くと、「あー!大丈夫だよ。俺以外に体力あるから。」と笑っていた。俺は、「そっか。無理しないでよ。」としか言えなくて…。


そんな俺の頭をポンポンと叩きながら「ありがとう。」と言われた。平良は、周りの目を気にせず自分の気持ちをストレートに表すところがある。俺が恥ずかしくなるくらいだ。「ちょっ、人が見てるじゃん」と言うと「いいだろ。別に」と言いながら会計をし、俺の大好きなミルクフォームたっぷりのカフェラテを作ってくれる。


改めて、平良の恋人になれたことを幸せに思った。それと同時に、少し不安が過ったんだ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る