三度の流産と不妊治療を経て、子供が産まれました
本日は『小覇王の暗殺者』の最終話をアップする予定でしたが、家族愛が一つのテーマである小説を書いている最中に筆者の子供が産まれましたので、少しそのことを書きたいと思います。
本編のストーリーとは全く関係ありませんので、ほとんどの方は無視していただいて結構です。
三月十四日、この文章をアップするつい前日に子供が産まれました。
表題にある通り、私たち夫婦は三度の流産と不妊治療の末にこの子を授かりました。
そのあたりの経験を踏まえ、趣味とはいえ文章を書いている人間として、誰かに伝えられたらいいと思うことを残しておこうと思います。
〈流産を経験された方々へ〉
私たち夫婦は生化学流産、稽留流産、完全流産をそれぞれ一回ずつ経験しました。
ちなみに医学的には生化学流産は流産にカウントしません。ですから二回といえば二回なのですが、私の中ではやはり三回です。
私は薬剤師免許を持っていますので生物学的な知識として、
『染色体は減数分裂を行う際に結構な確率でミスを起こす』
『結果として、受精卵はできた時点で遺伝子上の異常を有していることが多い』
『流産のほとんどは遺伝子の異常によるものであり、防ぎようがない』
ということは知識として元々持っています。
上記は少し分かりづらい表現になりましたが、要は
『妊娠しても、その赤ちゃんには産まれて生きるだけの力がそもそも無いことがとても多い』
という事です。
私はそれを知っていましたし、学生の頃は、
(流産で悲しい気持ちになっている人がいたら教えてあげよう)
などと無邪気に思ったことを覚えています。
もちろんそのことを知識として知らせてあげることは大切だと思いますし、それで救われる方も多いと思います。
しかし、人の悲しみというものはそう単純なものではありません。
ちゃんと知っている、ちゃんと理解している私は普段の仕事中、急に涙があふれてきて休憩室に駆け込みました。
そのお昼休み、スーパーで買い物をしてお店を出る時に、また涙が流れてきてすれ違う人にビックリした顔をされました。
流産は仕方ないことだし珍しいことでもない、ということを知っている私は、やはり悲しかったのです。
どうしたら悲しみが和らぐのか、その方法は人によってまちまちだと思います。
稽留流産の手術が終わった後、私の義理の母は私に、
「むしろ変な病気を持った子が産まれなくてよかったじゃない」
という言葉をかけました。
もしかしたら、これをひどい言葉だと思う人もいるかもしれません。
ですが、義母は私たち夫婦にとても優しい人です。この言葉も、間違いなく私を励ますために言ってくれたのです。
私は流産に関し、私の心に響いた一文をここに書きます。それは人によっては不快に感じる方もいる一文かもしれません。
ですが、もしかしたらそれで前を向ける人もいるのではないかと思い書くことなので、どうか許していただければと思います。
『産まれても生きるだけの力がない赤ちゃんは、お母さんの体と命を守るために自ら死を選ぶのです』
私はこの一文を見てまた泣いてしまいました。でも、少しだけ前を向けたような気がします。
流産を経験された方々。
あなた、もしくはあなたのパートナーは、あなた達の赤ちゃんに守られて生きています。
ですからどうか、自分たちのことを大切にしてあげてください。
単純に頑張れなどと言えはしませんが、あなた達の赤ちゃんはきっとあなた達の幸せを願っています。
〈不妊治療をされている方々へ〉
不妊治療の一番の苦しさは、確実なゴールの見えない中で走り続けなければならないことだと思います。
ですから実際に子供の産まれた私としては、その苦しさに対してかけられる言葉を持ち合わせていません。
加えてうちは二人目不妊での治療でしたから、不妊治療と言ってもその心労は軽い方だったのではないかと思います。
なので、不妊治療に関しては具体的な行動について一点書きたいと思います。
『シリンジ法』
というものをご存知でしょうか?
その名の通り、シリンジにより行う子作りのことです。
多くの場合、精液は性交によって膣内に注入されますが、シリンジ法ではカップに出した精液を注射器のようなシリンジで吸い取り、それを膣に挿入して注入します。
シリンジの先端はシリコンなどの柔らかい素材ですので、痛みもありません。
私たち夫婦は通常の性交と産院で受ける人工授精、そしてこのシリンジ法の三つを併用して子供を授かりました。どれで妊娠したのかは全く分かりません。
『性交が義務化してしまい苦痛』
『タイミングを多く取った方が確率が上がるのは分かっているが、体力的に辛い』
『時間がない』
などといった不妊治療の苦労あるあるを、シリンジ法なら回避できます。
人工授精は行っていてもシリンジ法は知らない、もしくは抵抗があってやっていないという方も多いのではないかと思います。
私たち夫婦は二人とも全く抵抗がなかったのですが、初めはお互いに『相手は嫌がるんじゃないだろうか』と思って言い出せずにいました。
しかしふとした拍子に話題に上がり、お互い『え?大丈夫なの?じゃあやろうよ』とその日のうちにネットでキットを注文しました。簡単に買えます。
本来なら喜びであるはずの子作りですが、お互いやりたくないことが分かっている状況でも行わなければならないのは正直かなりのストレスでした。これでカップルの仲が壊れる方もきっと多いはずです。
うちはこのシリンジ法を始めてから随分と気が楽になりました。タイミングを取らないといけない日でも、どちらかがキツイと思えばシリンジ法で済ませられるのです。
もちろんパートナーの気持ちは尊重しないといけませんが、どんな人でも
『今日はちょっとしんどいなぁ……』
と思う日はあるはずです。
一度パートナーに声をかけていただいたら、お互いに楽になる選択肢を選べるカップルが多いのではないかと思います。
〈全ての方々へ〉
昨日子供が産まれてから、多くの人々が『おめでとう』と言ってくれました。
もちろん社交辞令だって多いわけですが、それだって祝福一個です。
どんな人でも産まれた時にはたくさんの人々に祝福してもらえます。
これを読んでくださっている全ての方々が産まれた時もそうだったはずです。
そうして祝福された命を、自分を、大切にしていただければと思います。
『おめでとう』は、きっと『この子が幸せな人生を送れますように』という願いだと思います。
筆者は全ての人のその願いが叶うことを、願ってやみません。
墨笑
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