第34話 トビウオ釣り

オレ達は用心棒枠で乗船していたので、ファンタスマ号の甲板上での仕事はなかった。

この船の中では上等の船室をあてがわれ、早々に眠りについた。

船の揺れはさほど気にならない。気になったのは……


翌朝、オレ達は疲れた顔をして船の中の食堂に集まった。

パマーダとマスキロが食堂を離れてから、ゲネオスがオレに尋ねてきた。

「サルダド、昨日は眠れた?」

「……まあまあ」

「そう。ちなみに何か変な音は聞こえなかった?」

「ゲネオスもか!?」

オレは人がすすり泣くような声が聞こえた。

ゲネオスは叫び声や、船の下層で人が動き回るような音が聞こえたらしい。

船乗り達も寝ている時間である。

奇妙に思ったが、その場ではそれ以上の話にならなかった。


一方、昼間の甲板は楽しかった。

海の上の太陽は明るく、良い風が吹いている。

海上を飛ぶ魚の群れにも出会った。

ミョルニルで捕らえてみると、魚なのに胴体から羽根が生えている。

トビウオという名前だそうだ。

食べられる魚なので船乗りたちの評判は良かった。

というわけでオレはミョルニルを投げまくって、漁にいそしんだ。

船乗りたちは生で食べていたが、山間やまあいの街で育ったオレ達はマスキロに火を通してもらってから食べた。

ファイアー・ボールで焼いたトビウオのグリルである。

こいつは旨い!


そうした日が何日か続いたある日の夕暮れ、オレは漁にも飽きて何とはなしに海上を眺めていた。

太陽は水平線に身を重ねつつある。

全てのものがぼんやりと見えづらくなる薄暮はくぼの時間帯だ。

海面にキラリと光るものがあった。

オレは目をこらしてもっとよく見ようとした。

巨大な目があって、こちらをのぞいていた。

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