第16話 Sea Blue
光の扉に入ると身体が小さな粒々に分解されるような錯覚に捕らわれた。
粒はやがて粉となり、目に見えない粒子のようになり、そしてある処から別の処に流されていくような感覚を覚えた。
「このまま元に戻らなかったらどうしようか?」
しかしなぜかミョルニルの感触だけは手の中に残っているような気がした。
気が付くと小さな部屋の中にいた。木製の床と壁に囲まれた空間で、頭上も木の梁と屋根でできている。床は掃き清められていた。
光の扉はその部屋の片側にあり、部屋のもう一方には扉があった。所々に空いた窓から外界の光が差し込んでおり、部屋は明るかった。
オレは自分の身体を触り、全てのパーツが揃っていることを確認した。ミョルニルやその他の武器防具も元のままあった。
オレは扉に向かって歩いた。そして扉を思い切って開けた。
その先には海があった。
オレは海を見るのは初めてだったが、本や話で聞いたとおりのものだったので、すぐにそれと分かった。
しかしそれでも水の多さに圧倒され、そして水が大量に集まってできる青さに圧倒された。
しばらくすると、ゲネオスが光の扉から現れ、パマーダ、マスキロが続いてやってきた。
海岸線に沿って視線を滑らせると、その先に街があるのが見えた。
「さあ行こう」
目的地はあの街だ。オレはみんなに向かって声をかけた。
「いや、ツギノ村に戻るんだ」
ゲネオスが予想外に反論した。
「え?」
どういうことだとゲネオスに詰め寄った。
「忘れてない? ボクたちは報酬を受け取らないと」
そうして俺たちは再び光の扉に入り、ツギノ村で報酬を受け取ってから、もう一度光の扉に入り、そうしてようやくオレたちは、海沿いに広がる街を目指して歩き始めた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます