第15話 エルフの短剣は本物?

オレの手元にはスティングがあった。しかしスティングの刃は、以前見たときとは違い青白く輝いている。いや、単に輝いているだけじゃない。輝きには濃淡があり、よく見ると刃の表面には、見たことのない文字がいくつも浮かび上がっていた。


ジャイアント・スパイダーに突き刺さっていた部分も黒ずむことなく、刃の上に僅かに残ったジャイアント・スパイダーの体液は、すぐに乾いて黒い粉末に変わり、息を吹きかけるとサッと散ってしまった。もうそこにあったことを思い出すことすら難しい。


刃の光は徐々に弱まり、元の地味な短剣に戻っていった。これは本物のエルフの短剣なのだろうか? だとしたらなぜ街の武器屋に、それもあんなにも安い値段で売られていたのだろうか?


オレはゲネオスに近付いてスティングを返した。

「大丈夫か?」

「ああ、骨折も全部パマーダが治してくれた」

「普通ならオーバーキルダメージよ。生きていたのは運が良かったとか言えない」

パマーダが口を挟んだ。

「私のレベルだと死んじゃった人はどうしようもないから、頑張って生き残ってね」

「それは死んでもどうにかしてくれる僧侶もいるということか?」

とオレは訊いた。

「いるにはいるけど、生前の正気を保ったまま蘇られるかどうかは術者の気分次第ね」

「気分?!」


オレ達は再び光の扉の前に立った。

「これは単にこの中に入っていけばいいんだな?」

オレが誰とはなしに尋ねると、

「多分」

とゲネオスが答えた。

「誰から行く?」

お互いがお互いの顔を見回した。

皆、得体の知れないものに生身を預けることに誰もが躊躇しているようだった。

「よし!切り込み隊長は戦士のオレだ」

オレは思い切って光るもやの中に身体を投げ入れた。

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