第14話 大蜘蛛との闘い

ジャイアント・スパイダーは一度後ろに下がると、今度は物凄い勢いで体当たりを仕掛けてきた。

速い! 8本の足の動きが見えない。

これほどに大きな身体を持つモンスターから想像できないほど、ジャイアント・スパイダーは高速で動いた。


オレは武器を構えることもできず弾き飛ばされた。

ジャイアント・スパイダーは続いてゲネオスを襲った。

ゲネオスは剣を抜くのがやっとで、ただそれを前方に向けて突き出した。

しかしジャイアント・スパイダーの固い身体に当たると、剣はバチンと折れてしまった。


ジャイアント・スパイダーは自分を傷つけようとした相手を見て、今度は胴体を地面に付けると、そこから脚を一気に伸ばし、その勢いでジャンプした。

彼女の顎は獲物を砕くには向いていない。確実に一瞬に獲物を殺す方法は、その身体で相手を押しつぶすことだった。


ゲネオスに向かってジャンプしたその瞬間、マスキロが叫んだ。

「ゲネオス、短剣を使え!」

ゲネオスは反射的に右の腰に付けたスティングを抜き、頭上に突き出した。


ジャイアント・スパイダーは丁度その上に落ちてきた。スティングは彼女の腹に深々と突き刺さった。

ジャイアント・スパイダーはギャーと悲鳴を上げると脚を踏ん張り、短剣を抜こうと身体を揺すったり脚を曲げ伸ばししたりし始めた。


しかしゲネオスはその間もスティングを握りしめていた。脚の伸縮しんしゅくに合わせてジャイアント・スパイダーの胴体が上下動する度、ゲネオスもまた地上10メートル辺りまで揺さぶられた。


ジャイアント・スパイダーは再びジャンプした。着地の衝撃で抜こうとしたものだが、スティングは腹に突き刺さったままだった。

しかし落下の加速と地面からの衝撃とで、遂にゲネオスはスティングから手を離してしまった。そしてそのまま地面に叩きつけられた。骨が折れる嫌な音がした。

「ゲネオス!」

思わずパマーダは走り出し、癒しキュアーの呪文を唱えながらゲネオスに駆け寄った。

ジャイアント・スパイダーは二人には目もくれず、ただ身体に刺さった短剣を何とかしようと暴れ回っていた。

ここだ!

オレは倒れ込んだまま「スティング!」と叫び、ミョルニルを投げた。


ミョルニルは動き回るジャイアント・スパイダーに合わせて複雑な弾道だんどうを描き、ゲネオスが手を離してしまったスティングに到達した。

そしてスティングをくっつけると、その勢いでジャイアント・スパイダーの胴体から一気に引き抜いた。


スティングが抜けたあとからジャイアント・スパイダーの体液が勢いよく噴き上がった。

ジャイアント・スパイダーは再び悲鳴を上げた。

その直後からジャイアント・スパイダーの動きは鈍くなり、やがて脚を折り畳んで身体に引き寄せると、そのままの状態で死んだ。

脚を畳んでしまうと、蜘蛛は思いのほか小さく見えた。

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