第四話 冠を戴いた少年
サティンとディオールはカイムを発ち、東方のジーファステイアを目指していた。
現在のサティンはカイムの武具商店で購入した薄手の革鎧と短槍を身につけていた。無論、これには事情がある。ザイスまで真っ直ぐ南下する前にジーファステイアへ迂回する経路は、敵も予測するであろうこと、サティンが楽師の姿をしていることは既に明らかになっているであろうこと、純然たる戦士にしか見えないディオールと、あまりに美しい楽師の組み合わせは、嫌が応にも他人の目を引いてしまうこと、そういった事情を踏まえての行動だ。
――ただし、二人は大きな思い違いをしている。この二人は何をしたところで、はっきりと目立ってしまうのだ。無自覚なわけではないが、自分達の外見を過小評価している。
変装、それも、戦士の格好をしろと言ったとき、素直にサティンが従ったのを見て、ディオールは意外に思った。
「私は貴方を命綱に決めたのですもの。それにね、戦士の格好ってそんなに嫌じゃないわ。私にそういう素質があったなら、戦士も良いなって思うもの」
「人を殺して生きる、というのは、それほど楽なことではないぞ」
ディオールはつい、そう言ってしまった。言っても仕方が無い事なのに。
「そんなこと、言われなくてもわかっていますとも。だから、こんなことしてるんじゃない。出来うる限り貴方の足手まといにならないようにする。それすらもできるかどうか怪しいわ」
それでも、母の形見だという大琴は手放そうとはしなかった。ディオールとて、そこまで強要するつもりはない。誰にでも聖域はあるのだ。
「母様は、元はフレイズ戦士団の兵士だったそうよ。それは勇敢な人だったって聞いた。でもね、父様と一緒の母様は、全然そんな風には見えなかった。なのに、自分の粗忽さを気にしていたみたいでね、私にはいろいろな習い事をさせたわ。音楽はね、その一つなの。リィンは嫌がってたけどね。私はこんなの向かないって。母様みたいになるんだって。結局、母様も折れて、剣術を教えてたっけ」
サティンが楽しそうに、懐かしそうに言う。それは既に失われた時なのだ。
「そういえば、妹君のことを聞いていなかったな。目立つ特徴はないのか?」
「あら、貴方も探してくれるのかしら?」
「見つけるなら早い方が良いだろう」
「そうか……よく考えたら、リィンの身も危ないのね」
(あいかわらず勘が良い)
ディオールには、この娘の頭の回転の良さが好ましかった。この娘は決して、ただの足手まといなどにはなるまい。
だが、同時に恐ろしくもある。次代の藩主として養育されているのだとしても、それなり以上の世間知らずでもあるはずのこの娘の認識力は、少々常軌を逸している。経験に因らず、かといって当てのない勘に頼るわけでもなく、ただひたすらに事実を直感している節がある。
「そういう事だ。とはいえ、妹君が敵の手にあるとは考えにくい。貴女が狙われている間は大丈夫、そういう事と思っていいだろう」
「今頃、父様はなにをしているのかしらね」
サティンの父、現フレイズ藩主ヴィダルモールは危険な人物として有名だ。優れた民政者として、勇敢な軍指揮者として高名なのだが、昏い面の悪名は、それをはるかに上回る。一部では【北の餓狼】と蔑まれていると聞く。手元を離れた娘を策略に利用するくらいのことは考えるかもしれなかった。
――そんな父親を、リィンは嫌っていた。憎悪していたと言っても過言ではなかった。妹が出奔したのは、これ以上父親を憎悪すれば、それが殺意に変わることを知ったからかもしれない。
「リィンの特徴といってもねえ……。なにしろ、あの子が失踪したのは12歳の時だから……。いま生きていれば17歳。会っても、お互いにわからないかもしれないわね」
「そんなこともあるまい。肉親とは、遠く離れていても、それとわかるものだ」
サティンの言葉を、即座にディオールが否定する。
「へえ。貴方がそんなこと言うなんて、思いもしなかったわ。まあ、それはともかくリィンの特徴ね。身長、体格はわからないから……まず髪。私と同じ銀。これは母様譲りなの。瞳は翠。えーと、ティフの瞳の色よりもっと深い、青に近い翠」
「貴女と同じような色違いというわけではないのだな?」
ディオールはそう言った。サティンの瞳は右目が藤色、左目が銀で、非常に目立つ。変装しようの無い部分なだけに、何気ない確認のためだった。しかし、その何気ない一言は、サティンに重かったようだ。
「……ついでというわけではないけれど、これも言っておいた方が良いのかしら? 護衛するのに必要かもしれないものね」
サティンが沈んだ顔で、そう言ってため息を吐く。
(なんのことだというのだ?)
サティンに翳った暗い影を、ディオールは気に掛けた。こんなとき、この娘の生気は危ういほど薄くなる。
「私の目は、本当は色違いじゃ無いの。この左目がこんな色をしているのはね、幼い頃の怪我のせいなの。こっちの目はほとんど見えていないのよ。だから……」
見てみれば、確かに左目の挙動が不自然だ。言われなければ気が付かない程度だが、視線を動かす時などに、右目の動きよりも半瞬ほど遅れる。瞳孔も常時散大気味で、その色も相まって、さながら鏡面のごとくだ。
片目が見えないというのは、決して軽いことではない。遠近感は失われ、視界も狭くなる。運動能力に甚大な悪影響を及ぼしてしまうのだ。さらに言うなら、もう一方の目に負担がかかり、将来的に全盲になる可能性さえある。未来に絶望していたとしても、おかしくはない。
「……これも言っておこうかな。リィンにも関係あることだし」
まだ何かあるらしいが、ディオールがそれを制した。これ以上は、サティンのような娘には酷だ。
「やめておけ。見ているこちらのほうが泣きだしたくなるような顔をしている。またの機会でよかろう」
「うん……ありがとう。じゃあ、機会があったらね。……えーと、リィンの話はどこまでしたのだっけ?」
「髪と瞳の話だ。12歳から5年となると、確かに体格は難しいな」
「じゃあ、外見的なことはそれだけね」
「そうだな。内面的なことはどうだ?」
もっとも、若い娘が5年も生きていれば、人格がまったく変容してしまっていても、なんら不思議は無い。ましてや、故郷を離れた遠い地で生活しているとなれば、なおさらだろう。
「5年も経ってるからね。そうね、昔のあの子を一言で言うなら、『猛々しい』ね」
猛々しい? これは意外だ。サティンからは、しばしば力強さを感じる。鮮やかな光輝もあれば、昏い影も持ち合わせている。だが、猛々しいなどという要素はまったく無い。ディオールには、とても想像がつかなかった。
「さっき言ったでしょ。習い事を嫌がったって。母様みたいになるって言ってたって」
「だからと言って、仮にもフレイズ公女ともあろうものが、猛々しいはないだろう」
「そうでもなかったわよ。あの細刀術は、子供ながらにも見事なものだって、皆ほめていたしね。家出直前の頃、凶賊に襲われたときにも蹴散らしたくらい」
「その凶賊とやらはどうなった」
「3人いたんだけど、2人は頸をばっさりとやられて即死。首領と思しき1人は片足片腕をこれまたばっさりで戦意喪失。レイシュ達の方が驚いてたっけ」
それは本物だ。小物2人を仕留めた上で、首領を生け捕りなど、訓練された大人でも難しい。それを12歳の少女がやったというのだ。守役ならずとも驚くだろう。
「きっと、あの事件が、あの子に自信をつけさせたのでしょうね。元々、きっかけを探してたみたいだし。……あの子は狭い世界に閉じこもっていられる子じゃなかった。ティフの様な子とも、ちょっと違うわね。感情が外に向くっていうのかしらね。そんな感じ」
「なるほど。それは有力な手がかりになるかもしれんな」
「そうだといいのだけれど」
そんな按配で、二人はジーファステイアへの街道を行っていた。さすがは自由国境域を代表する主交易街道なだけに、人通りも多く、宿場も充実している。それでも、ジーファスティア・カイム間は徒歩で10日以上かかる。その間に、サティンはディオールの目的について聞いておこうと思った。
「ところで、貴方の用事、約束って言っていたけれど、どんなお話なの?」
「昔使っていた剣、ああ、この剣のな……」
ディオールはそう言って、背の長剣を指した。
「対になっている剣があったのだが……8年前……にな、砕いてしまったのだ。【ジルワ・ノエル・クリク・ファーン】の名を持つ一品だったのだが。それの修理を依頼してある。もう、約束の期日だ」
「たしか……その剣の名前は【ミエグ・クルタ・ジーン・ユン】だったわよね。えーと、意味は【母・兄・妹・子】であってたかしら。それに【ジルワ・ノエル・クリク・ファーン】……こっちは【父・姉・弟・娘】ね。……意味深な名前じゃないの」
「その意味を為すところは【血】だそうだ」
なかなか面白い組み合わせだと、サティンは思った。少々、名前を呼びにくいのが難点だが。なるほど、生命を破壊し、【魔人】をも殺害できる兵器にふさわしい名前だ。そして、二つで一つ、というわけだ。
「その剣も、この剣みたく黒い輝きを放つの? あの光ってなにか怖いのだけれど、それだけじゃない、不思議な感じがするのよね」
森の中で【魔人】と相対した際の輝き。あの優しくもおぞましい光。光にはあり得ない、黒という色。あれこそが、まさしく命の輝きなのだろう。
「残念ながら、そんなことはない。そもそも、この剣のような力があったなら、常人にはとても修復できまい」
それはそうだ。それでもサティンは少し残念に思った。半身を取り戻した2本の剣が、どのような輝きを放つか興味があったのだが。
「でも、素晴らしい一品だということには間違い無いのでしょう? ジーファスティアの誰に依頼したの?」
ジーファスティアは【鉄の街】と別称される自由国境域最大の工業都市だ。交易都市カイムと、工業都市ジーファスティアとは、切っても切れない関係にある。
そんな街でも、それほどの業物を修復できる人間は限られている。費用とて馬鹿にならない。名匠による名剣の修理など、とんでもない大金がかかる。サティンは充分な路銀を持っているし、ディオールもそれなりの金銭を持ってはいるようだが、とうてい足りるとは思えない。
「ジーファスティアのゼール・リトラスという男だ。義父の古い知り合いでな。費用か? 秘密だ。そう言われている」
「ゼール・リトラスねえ。聞いたこと無いわ。どういう人なの?」
「人格、力量ともに信頼できる。問題は無い」
「そう。なら良いのだけど。貴方の用事はそれだけなの?」
「多分な」
「多分? なんで?」
「それも秘密だ。まあ、そのうちわかる」
ディオールが秘密を作るのには慣れていたので、サティンはそれ以上追及するのは止めた。
サティンとディオールは無事にジーファステイアにたどり着いた。襲撃が無かったのは、サティン達を見失ったのか、とりあえず様子を見ているのか。どちらにせよ、諦めたとは考えにくかった。
「ここがジーファステイア? 色々な意味で凄い街ね」
サティンが呆れたような声を出す。
大きな街だが、カイムや真王国の街々とは、また雰囲気が違う。所狭しと立ち並ぶ建物。熱気と煙。行き交う鉱山の工夫達。なるほど、【鉄の街】とはよく言ったものだ。サティンが命名するのなら、もう少し詩的に、【鉄と油と火の交流する街】とでもするだろうか。緑の自然だとか、風雅な風だとかいった言葉とはおおよそ無縁な、なんとも無骨な街だ。
「ああ……以前来たときよりも狭苦しく感じるな。外壁も広げられたようだ。それだけ、発展しているということなのだろうな」
「……さすがね」
ジーファステイアがこれほど急速に巨大工業都市になったのには、理由がある。交易都市であるカイムに近いこと、良質の鉱山を有していることもそうだが、なにより大きいのは、【式使】達の介入だ。
【式使】達は膨大な知識を溜め込んでいる。物理現象や自然現象の他にも、薬学、化学などについても、他の追随を許さない。だが、彼らは決してその知識を公表しようとしない。自由国境域最北にある【式使】達の総本山、スーレイルが禁じているためだという。しかし、このジーファステイアだけは違う。はぐれ【式使】達がその知識を利用して作り上げた、いわば科学都市なのだ。
【式使】達が提供した知識はほんのわずかだ。知識はあっても利用しきれていないというのが実態だろう。それでも、鉱山の採掘量は爆発的に増大し、生産される鋼鉄の質は驚くほど向上した。小さな鉱山街は、あっという間に自由国境域を代表する工業都市に変貌した。
そして、いまなお拡大は続いている。やがては真王国八藩主に匹敵するまでの勢力になるのかもしれない。
「さて、そのリトラスさんに会いに行きましょうか?」
「いや、その前に宿を探そう。すこし休んでからの方がよかろう。別段、急ぐわけでもないからな」
張り切りかけたサティンを、ディオールが制した。
「そんなことはないわ。大丈夫よ」
ぐっと両腕をあげてみせるが、ディオールは納得しなかった。
「……自分では気が付いていないな。だいぶ疲れた顔をしているぞ?」
「そう? ……かもしれないわね」
サティンは旅に慣れていない。疲れが出てきてもおかしくない頃だ。急病で倒れたりしては、ディオールに迷惑をかけてしまう。ここは素直に従っておくべきだ。
「わかった。じゃあ、先に休息してからにしましょう」
さすがに交易の盛んな都市である。宿はすんなり見つかった。寂れた宿でもなく、かといって目立つ一級宿でもない、個室が得られる普通の宿を選んだ。
「やっぱり……同じ部屋なのよねえ」
「俺は護衛だからな。状況が状況だ、仕方があるまい。……安心しろ。なにかするつもりがあるなら、道中で既にしている」
「そうだけど。久しぶりのきちんとした部屋だから。ふふ、何だか意識しちゃって」
サティンとて本気で気にしているわけではない。会話を楽しんでいるだけだ。
「今日は休め。宿の中は大丈夫だろう。俺は少し周りを見てくる」
「ええ、わかったわ」
久しぶりに湯を使った。この街は埃っぽい。髪にまとわりつくような感じがする。あまり長居をしたくないというのが本音だ。街を大きくするのは良いが、もう少し美観に気を遣ってもらいたいものだ。まあ、この通り水道がきちんとしているだけでも合格点なのかもしれないが。
ともあれ、湯で身体を洗い清めて部屋に戻り、食事を摂ることにした。そうしながら、二人で話をする。
「でも、その剣なんだけど……本当に貴方の物だ、それとも、本当に貴方本人だ、という証明みたいなものはいらないの? まあ、貴方の偽者なんて用意できるはずもないし、顔を見せれば済むのかもしれないけれど」
この街は工業都市であると同時に商業都市でもある。そういった契約の類は発達しているだろう。
「ああ、預り証を持っている。相手を信頼していないわけではないが、約束事だからな」
ディオールは一枚の紙を取り出して見せた。なるほど、剣の修理と見積もりについて事細かに書いてある。期日はもう1ヶ月も前だ。しかし、費用欄については空白になったままだ。
品物は細身の片手半剣。両刃の直剣で、剣身だけで約175cm、柄まで含めて2m超。対の剣と比べてもさらに長い。鋼鉄製というのは間違いないようだが、素材・産地・製法不明故に要調査となっている。当たり前だ、こんな細長い剣、並の鍛え方では簡単に折れ曲がってしまう。
サティンはそれを見ているうちに、大事なことを思い出した。
「ああああっ!」
思わず大声が出た。ディオールも、その声に驚いたようだ。
「どうした?」
「なんてこと! 私、まだ父様の親書を持ってるのを忘れてた!」
当初の目的、使節として送り届ける予定だった、フレイズ藩主からの親書だ。一度は処分しようかと思ったものの、何かに使えるかもしれないと思って荷袋のいちばん奥に保管しておいたのだが、すっかり忘れていた。自分を狙う敵の有力な手がかりになるかもしれない。なぜ、今まで気が付かなかったのだろう。
「なんだと? そんなものがあるのか?」
「ええ、これよ」
サティンは慌てて四通の親書を荷物の一番奥から取り出した。無論、四通ともフレイズの印章で封印されている。
「宛先はわかるな?」
「ええ。まず、父様の数少ない同盟者のアシン。それから少し南のビード。こっちの二通は自由国境域のものよ。フエンゴウとトラントね。アシン、トラント、フエンゴウ、ビードの順で回る予定だったの」
フエンゴウは新しく興った南の領主、トラントはここから南西の領主だ。
「どうする? 中を検めるべきだと思うか?」
封印を解いてしまえば、もはや親書として機能しない。うかつな証拠を残さない為にも、焼却するしかなくなる。
「宛先には親書を送るなんて先触れはしてないから、問題は無いと思う。非常事態よ、開けてしまいましょう」
二人は封印を破って中を検めた。互いに額をつき合わせて内容の吟味をする。
「アシン宛ては普通の親書だな。可能ならば、馬の売買をしたいという内容だな」
「そう……こちらはフエンゴウ宛てね。こちらも特に異常なし。新領主としての心構えみたいなのが書いてあるわ。友好の証として返書されたし、ですって」
「トラントは……ほう、少し変わったことが書いてある」
「見せて……へえ、父はトラントの領主と仲が良かったのね。初めて知ったわ」
頭を抱えたくなるのを我慢して、代わりに精一杯の皮肉を込めてつぶやく。
「自由国境域南部に戦乱の気配あり、ヘーリクスへの物資供給を制限すべし。近隣の状況に不明点多し、急ぎ報告すべし。……どうやら、トラントはフレイズの影響下にあるようだな。近隣の状況を報告せよというのであれば……」
「ふう……。父様ならやりそうなことよ。というか、こんなの親書とは言わないわ、こんなものを私に持たせないでよ」
トラントは自由国境域中北部においての交通要所であり、軍事的要諦でもある。大交易都市カイムに近く、中部、北部双方に睨みを利かせる。なるほど、あの父親の好みそうな都市領主ではある。しかし。
「……え? ……変じゃない、それ。影響を受けている領主なら、近隣の報告を定期的にするのは当たり前でしょう?」
つまり、その連絡が途絶えたからこそ、催促しているのだ。何事かの変事の気配がする。
「ああ、その通りだ。『近隣の状況に不明点が多い』というのは少々不自然だな。トラントはフレイズの影響から逃れたくて貴女を狙った? いや、これはさすがに短絡的過ぎるか」
短絡的ではあっても、可能性としては捨てきれない。誰もが理性的に行動しているとは限らないのだ。自分達の常識だけで物事を判断するのは危険だ。
「どうでしょうね? でも、私掠船も暗殺者も、どちらも条件に合致しないかしらね、うーん……」
サティンは色々と考えを巡らせてみたものの、やはり決定打に欠けた。何か、何か一つ、大事なものが抜けている気がする。
「情報が足りないな。とりあえずは、警戒はした方が良いかもしれん。その程度だ」
「そうね。じゃあ、あとはビード宛ね」
最後の親書の封を開けて中を見る。その内容に、二人して息を飲む。
「海域侵犯に対する警告。武器、兵糧の買占めの批判、撤兵の要求」
「最後通告書じゃないの、これ!」
最後通告、すなわち最終的な外交要求であり、受け入れなければ開戦事由とするというものだ。言うなれば宣戦布告に等しいものである。
真王国中部のアシン藩と、その南に位置するビード藩の間でトラブルが発生していることはサティンも知っていた。アシンとフレイズは同盟関係にあるから、父としてもフレイズ藩としての介入の機会を探していたのだろう。
「とにかくこれは早く焼いてしまいましょう。持っているだけでもまずいわ」
慌てて4通まとめて暖炉にくべる。パチパチと音を立てて燃え尽きたのを見届けて、ようやくサティンは一息ついた。
「……ちょっと父様、これはさすがに冗談で済ませられないわよ」
「即時の開戦も辞さない構えだな。これが正しいのなら、あの私掠船はビード、あるいはその同盟者のものと判断して良かろう。そうだとしたら、特別に貴女を狙ったわけではなく、偶然だったのかも知れん」
「だとしても大変よ。もう私にちょっかいをかける余裕は無いかもしれないけど、このままでは戦争が始まってしまう」
フレイズとビードは陸続きではない。港は冬の間封鎖される。それに、フレイズは雪国であり、冬の開戦は危険が大きい。合理主義者でもある父のことだ、無茶はすまい。
「この親書を届けずに済んだのは、運が良かったのかもしれないわね」
こんなものを娘に持たせるなど、父はいったい何を考えていたのだろう? 相手に届けたその場で捕虜になりかねない。いや、そのことをあらためて開戦事由にするつもりだったのかもしれない。
「まったく。なんてこと……信じられないったら」
そんなつぶやきを、ディオールは少し誤解したようだ。
「外交については父君がなにかしら手を打っているだろう。貴女が心配しても何にもならん」
「そうね」
その誤解を解いてもディオールを不安にさせるだけだ。それにあの父だ。娘の無鉄砲な行動を知って、既に行動に出ているだろう。ここで自分が何を考えても、できる事はない。
それにしても、これほどの手がかりを忘れているとは情けない。自分ではしっかりしているつもりだが、実はとんでもなく間抜けなのかもしれない。サティンは内心で赤面した。
「ともかく、ビードは貴女に手を出している余裕はあるまい。トラントの動向と、その他の敵に注意したほうがよかろう。これは思わぬ手がかりが掴めたな」
「ええ、そうね。ともかく、今できるのは、トラントには近付かないことくらいね」
「ああ、そうだ。しばらくは刺客の類も来ないだろうからな」
「そうだといいのだけど」
楽観論というわけではない。街道で来なかったものが、街中で来る可能性は低いというだけだ。ジーファステイアは工業都市であり、交易都市であると同時に、法治都市でもあるのだ。高い城壁と、よく訓練された警備兵達が、不審者の行動を妨げるだろう。
「……大分話し込んでしまったな。食事の残りを片付けて、今日はゆっくり休むといい」
「そうさせてもらうわね。……ごめんなさい、やっぱり私、相当疲れてるみたい」
「無理も無かろう。俺もそのうち寝ることにするから、先に寝ていてくれ」
「ええ、わかったわ。おやすみなさい」
ここはディオールの好意に甘えておく事にしよう。サティンは寝台に入るとすぐに心地よい眠りに落ちていった。
よほど疲れていたのだろう。サティンが目を覚ましたのは、昼近くになってからだった。
「……自己嫌悪しちゃうわね。陽があんなに高いわ」
「構わんさ。休めるときに休んでおくことの方が大事だ」
「そう言ってくれると助かるけれど」
二人は身支度を済ませて宿を出ると、予定通り、鍛冶匠ゼール・リトラスを訪ねることにした。表通りから少し外れた道を歩いていく。
「思ったよりも、汚れてるわね」
都市が発展するということは、決して簡単なことではない。生産・消費・廃棄といった要素が複雑に絡み合っているのだ。ただ大きくなれば良いというものではない。
「昨日から思っていた事だけど……空気は良くないし、街の区画整理もできてないわ」
フレイズの秩序ある町並みとは雲泥の差だ。どうにも、この街を好きになれそうに無い。
「急速に巨大化した代償だろう。今はともかく、将来的には危険があるかもしれん」
「ええ。領主は何をしているのかしら?」
「古くからの住人、移住者、交易のために移動している人間、それを支える従業者。軋轢もあるだろう。難しいな」
人が多いということ、それ自体がトラブルの元なのだ。統治組織が完成する前に巨大化してしまった都市であれば、細やかな施政が行き届かなくなるのは当然だ。完全に野放しのままで発展してのけたカイムの方がよほど特殊なのだ。ここジーファステイアは活力ある行政と法治、急速に膨張した産業、さらには高い城壁と優れた軍事力によって、結果的に悪い方向へ傾いているのかもしれない。そんなことを考えながら、二人は道を進む。
「ああ、ここだ」
ディオールが一つの工房を指す。小さな工房だが、この周りだけはよく清掃されている。住人の性格のあらわれだろう。二人で中に入る。
「すまない。主人はいるか?」
「どなたですか?」
ディオールが声を掛けると、奥から10歳くらいの少年が出てきた。くすんだ金髪と灰色の瞳をしている。なかなか利発そうな少年だ。
「ああ、俺はディオールという。数年前、ここの主人に長剣の修理を依頼したものだ」
証明書を手渡す。少年はそれを見ると、さっと顔色を変えた。
「……では、貴方があの剣の」
「なにかあったのか?」
「わかりました。奥にどうぞ。ああ、申し遅れました。僕はフィン・テリウス。ここの主人、ゼール・リトラスの孫です。テリウスと呼んでください」
「じいさま、お客様だよ。あの剣の」
奥には一人の男が寝ていた。50代半ばくらいの、厳かでありながら、穏やかな感じのする人だ。名匠ゼール・リトラスその人だろう。
「おお、これはディオール殿」
そう言って身体を起こすリトラス。その逞しい身体には、幾重にも包帯が巻いてある。
「お怪我を?」
「実は……」
テリウスが口を開きかけたのを、リトラスが制した。
「ああ、わしから話す。……実は数日前に、ここに賊が入りましてな。夜分に不意を討たれまして、誠に申し訳無いことに、あの剣も奪われてしまったのです」
(……私の行く先々で何か起こるわね)
自分がトラブルを招いているとは考えたくないのだが。サティンは内心でため息を吐いた。
「犯人は?」
「わかっていないんです。ただ、この辺りも治安が悪化してきましたから……。西のスラムの人間の可能性が高いと思っていますが」
「スラム!? そんなものがあるの、この街には?」
少年の言葉に、サティンは驚かされた。少なくとも、真王国ではあり得ない事態だ。ジーファステイアは自由国境域でも高名な法治都市だというのに。いくら急速に発展した都市とはいえ、荒廃が早過ぎる。都市行政に歪みが生じているとしか思えない。非常に危険な兆候だろう。
「そうです。ええと……」
「サティンよ」
「サティンさん。この街はそういう区画が増えてきているんです。外を歩くときには、注意した方が良いですよ。えっと……貴女は相当にお綺麗ですし」
この少年は本気で心配してくれているのだろう。不器用だが、暖かな言葉だ。
「ありがとう。……ここに来る時に、そういう話をしてたんだけど。もう、そうなってきているのね」
「ともかく、あの剣はいま、ここにないのです。わしの不明の為すところ。誠にお詫びのしようも在りません」
リトラスは深々と頭を下げた。
「修繕は終わっていたのか?」
「ええ、勿論。あれはわし自身、稀に見る傑作。きっと、ディオール殿にも満足いただけると思ったのですが。残念です」
リトラスはさらに老け込んだ様に頭を下げた。
怪我人の部屋にあまり長居をしても良くないだろう。二人はまた明日、見舞いにくることを約束して、外に出た。
「どうするの?」
「どうしようもあるまい。我々で探すわけにもいかん。俺一人ならばともかく、貴女と一緒では危険が大きすぎる。この街に長居をするわけにもいかん。諦めるしかなかろう」
自分達は決して平坦な道程が約束されているわけではないのだ。なによりも、この街に不案内過ぎた。スラムのような区画に入り込むとなれば、危険が大きすぎる。
「そう……仕方が無い、と言わせてしまっているのかしら。ごめんなさい。私のせいで」
「貴女のせいではないさ。彼らのせいでもない。盗みを働く人間は無論、それを摘発できない官憲が悪いのさ」
「でも、大事な剣なのでしょう?」
そのサティンの問いに、ディオールもわずかに応えに詰まった。
「……義父から譲り受けた剣だ」
「そんな大事なものを!」
「あれは遣い手を選ぶ。たとえ俺の手元になくとも、必ず、ふさわしい遣い手に渡る。不甲斐なくも剣を砕いて、もはや使いこなすこともできない俺などよりも相応しい持ち主を選ぶだろう」
「でも、スラムの人間だなんて……」
「あれはそうやって時を渡ってきた。わかっている限りでも300年は超えているそうだ。今更、心配は要らんさ」
義父より受け継いだかつての愛剣。幾多もの死地をともに駆け抜けたであろうその剣を失ったにも関わらず、ディオールは惜しむことをしない。何故だろう。戦士ならではのものの考え方があるとでもいうのだろうか。
「貴方が良いというのであれば、私が言うことはなにもないのだけれど……わかったわ、とりあえず一度宿に戻りましょう」
そうして歩きだしかけた二人の後ろから声がした。テリウスだ。二人を追って、外に出てきたのだ。
「実は、あの剣がどこにあるかはわかっているんです」
「テリウス君。それはどういうことかしら?」
テリウスが説明を始めた。そこには、少年にはあるまじき道理が在る。
「スラムの人間が奪ったのではないか、というのは本当のことです。ただ、その後で剣が市場に出たという話を聞いたんです」
「それで?」
「買ったのはこの街の大物、ゼン・カンタスです。ずいぶん大枚をはたいたそうですよ」
「それをどこで知った?」
「本人からですよ」
「本人だと?」
「ええ、実の親子ですからね」
「親子ですって? どういうことなの?」
「言葉どおりの意味ですよ」
そんな返事をしながらも、テリウスの顔は昏い。この少年の家庭環境にも、複雑なものがあるのかもしれない。
「まあ、そういうことです。僕は剣を盗られたと知って、あちこちで聞き込みみたいなことをやっていたんです。そうしたら、市場にそれらしいものが出ていたというじゃないですか。あれほどの業物です、そうそう見間違えるはずはないでしょう? 慌てて見に行ったのですけど、既に誰かに買われていたんです」
「無茶をする」
こんな子供がスラムを一人で歩いていては、襲って下さいと言っているようなものだ。
「僕にはこれがありますから」
テリウスが腰に下げた短剣を叩く。まだまだ子供の彼にとっては長すぎるくらいの剣だ。
「スラムにも友人がいるんです。彼に習いました。それに、じいさまも人望がありますから。そう危険は感じませんでしたよ」
どういう少年なのだろう? 優等生にも、悪童にも見える。印象が一定しない。
「そんな話を聞いたものですから。もしかしたら、父なら何か知っているかもしれないと思いまして。訪ねてみたんです。そうしたら話してくれましたよ。自分が買ったって」
「それでどうした?」
「どうもしません。見せてくれと頼みましたが、結局、見せてもらえませんでしたから。……あれを父から取り返すのは難しいでしょうね」
この少年は何を言いたいのだろう? いたずらに不審感が募る。だが、貴重な情報だということは確かだ。
「交渉することはできないの?」
「今なら、それだけの金銭なり品物なりがあれば、あるいは。あの剣に釣り合うだけの物をお持ちですか?」
「ないわ。……少なくとも今は」
無論、フレイズ藩公女サティナルクレールとしてならば何の問題も無いが――
「サティン。駄目だ。それは危険が大きすぎる」
先に言われてしまった。ディオールには、サティンが何を考えていたかわかってしまったらしい。サティンも実行するつもりはない。その程度の分別はある。
「わかってるわよ。ねえ、テリウス君。もしかして、お爺さまとお父様は仲が悪いの?」
そもそも、盗品は本来の持ち主に返すのが常識というものだ。ましてや、親子ならば、なおさらだ。
「……ええ、まあ、そういうことです。父はじいさまを憎んでいますから、あれがじいさまの物だとわかったら、逆に、なにがなんでも手放さないでしょうね」
どこにでも家庭の事情というものはあるのだろうが、これは異常だ。仲が悪いなどというものではない。このようなところにあってはならないはずの、確かな憎悪がある。
「ふん……。で、結局のところ何が言いたい? 俺達に何をして欲しい?」
とうとう、ディオールが単刀直入に切り出した。サティンは、この少年なら「話が早くてたすかります」くらいのことを言いかねないと思っていたが、テリウスの反応は予想に反した。
「いえ……そういうわけでもないんです。ここで話をしているのも、じいさまに知られたくないだけなんです。実は……僕は、これからあれを取り返してくるつもりなんです。うまくいく可能性は低いですが、なんとかしてみます。貴方に剣をお渡しできないのはこちらの事情なのですから、こちらでなんとかするのが道理というものでしょう」
テリウスは少し俯き加減にだが、毅然とそう言った。
「では、なぜ俺達にそんな話をする。お前一人でやるというのであれば、こんな話に意味があるのか」
ディオールの追求にも負けず、テリウスは堂々と応えた。
「僕がうまくいけば、それで問題ありません。剣を取り戻して貴方にお返しする。それで万事、解決です。ただ、失敗したときのことを考えているだけです」
「手助けをしろって言うの?」
「いいえ。仮に僕が失敗したとしても、剣だけはなんとかします。……必ず。ただ、その場合に、貴方達が事情を知らないと困るでしょう?」
「無茶よ。うまくいくわけないわ」
この少年が何をしようとしているのかは、おおよその想像がつく。この会話の内容といい、盗品の行き先を追い詰めた手腕といい、この少年からはただならぬものを感じる。しかし、所詮子供だ。剣一本の為に、一つの輝ける未来を消すわけにはいかない。
「よし、わかった。間違い無くやってみせろ。俺達は決行時に外に待機していればいいのだな?」
「ちょっと、ディオール! 何を考えているの!?」
ディオールまで無茶を言い始めた。どういうつもりなのだろう。
「ええ。それでお願いします。明日の昼食、もう一回、父の邸宅を訪ねることになっているんです。その時に。では!」
テリウスはそう言い残して走っていった。速い。あっという間に路地の向こうに消えた。
「ちょっと! どういうつもりなの? そんなに、その剣が大事なの? さっきと言ってることが正反対じゃないの!」
サティンは本気で怒っていた。ディオールが何を考えているのかわからない。少年の無茶な行動を諫めるどころか、むしろ煽っているようにさえ見えた。
「そういうわけではないさ。ただ、あの少年がどこまでやれるか知りたくなった」
「そんな! うまくいかなかったらどうするの!」
いくら親子であっても、この状況は特殊だ。命の危険だってあるかもしれない。
「ここで死ぬようなら、そこまでだったということだ。……いや、もっとも、あの少年の安全については、あまり心配はしてないがな」
そう言うディオールはどこか楽しそうだ。
「どうして? 私からは無謀極まりない様に見えるのだけど?」
この人は理由の無い無茶をする人ではない。サティンはそう信じることにした。ただ、多少の冒険を好む人でもあるようだから、油断はできないけれど。
「ともかく、あの少年は大丈夫だよ」
「今回ばかりは、なにが大丈夫なのかさっぱりだわ。……もう、貴方に任せるわよ。ただし、私の安全はしっかりしてよね」
「わかっている。いつでも行動が起こせる様にしておいてくれ。いざとなれば、この街から逃亡せねばならなくなるからな」
「それのどこが、安全に気を使ってるって言うのよ!」
あの二人には「道理を通す」ためと言ったが、テリウスにはそれなりの思惑があった。一言で言ってしまえば、「あの親父の鼻をあかしてやろう」である。
(父はじいさまを憎んでいますから、か)
テリウスは父親を憎悪していた。それも非常に激しく。父親の祖父に対するそれとは、比べ物にならないほどに。
テリウスの父親と祖父はことごとくうまくいかなかった。理由は至極簡単で、父親は怠惰で、無気力で、浪費家で、女性に節操が無かったのである。なまじ、祖父が厳格な職人だったこともそれに拍車をかけていたのだろう。祖父のもとで修行をしようなどという気はさらさらなく、女性をとっかえひっかえしては貢がせて遊び歩き、あちこちに問題を起こしていた。そうして捨てられた女性は数知れなかったが、そのうちの一人は父の子を妊娠していた。
その女性は貧しく苦しい生活を強いられていたが、不幸中の幸いにも、祖父にそのことが知れ、保護されたおかげで路頭に迷わずに済んだ。彼女は生まれた子供と祖父に愛情を注いだが、2年前に肺炎で死んだ。もともと、あまり身体が丈夫な人ではなかった。
一方、その頃の父親は借金で首が回らなくなっていたが、とうとう、街の大物の娘を掴まえて、ちゃっかりと婿入りした。そして、結婚式に参加した祖父に対してこう言い放った。
「俺はあんたの言うことを聞かないで良かった。だからこそ、俺は成功した」
そんなことを言っておきながら、富を手に入れた父親は、今度はテリウスを手に入れようとしているようだ。息子の素質を聞き知ったからか、それとも別の理由があるのかはわからない。気が向いては食事などに招き、何ともありがたい説教を垂れてくれる。そのたびに出そうになる反吐を飲み込んで、テリウスは父に従っていた。祖父に迷惑をかけたくない。その一心で、こんな二重生活を強いられているのだ。
ともかく、テリウスが剣を奪おうとしているのは、別にあの二人のためだけというわけではないのだ。仮に失敗しても構わない。あの二人に約束した通り、品物だけはなんとかする。あとはせいぜい騒ぎを大きくしてやって、父親に大恥をかかせてやればいい。それくらいのつもりでいた。
もっとも、テリウスにはそれなりの勝算があった。
――彼は特殊な素質の持ち主なのだ。このフィン・テリウスという少年は、物心ついてからのことを全て記憶しており、それを必要に応じて鮮明に頭に思い浮べることができた。邸宅の地図も、衛兵達の見回りの順番も、剣の外見と場所も完璧に記憶していた。それに加えて、子供離れした身体能力と判断力があれば、万全のはずだ。
「そうか、今日は身体を鍛えていたのか」
テリウスは父親――ゼン・カンタスと昼食を摂っていた。曰く、「子と食事を共にするのは親の義務」だそうだ。この街でもっとも優れた料理人が作ったという料理は、味は最高だが、酷くまずい。
「はい。いまどき、自分を自分で守れないのは恥ずべき事ですから」
一点の曇りも無い笑顔で言う。皮肉のつもりだ。この父親に自分の身が守れるとは到底思えない。
「そうかそうか、頼もしいな」
愚鈍なこの男は気が付きもしない。テリウスは、こみ上げる吐き気を必死でこらえる必要に迫られた。
(僕はあんたみたいには絶対にならない)
「身体を鍛えるのはいいが、そろそろ学問をしたらどうだ?」
勉強なら、祖父のもとで必要十分に修めている。特殊な記憶能力のおかげもあって、学問の類で困ったことはない。
「いいんです。まだ、そういう事は」
「そうか? しっかり勉強しないと立派になれないぞ。あの男みたいに落ちぶれてしまうぞ?」
あの男、というのはじいさまのことだ。
(よりによってあなたがそれを言うのか! この吐溜男が……)
「お前には私の跡を継いでもらわんといかんからな、そんなことでは困るぞ」
ここまでがテリウスにとって限界だった。誰があんたの跡など継ぐものか。そう叫びたいのを我慢して、全ての食事を胃に流しこんだ。まだ、自分にはやることがある。いまここで、いたずらに不審を抱かれるわけにはいかない。
「ごちそうさまでした」
「おお、早いな。食事はゆっくりしないと駄目だぞ」
そんな説教を遮って、テリウスは自分の目的のための行動を開始した。
「お願いがあるのですけれど、良いですか?」
「おお、なんだ?」
「さっきの話を少し考えてみようと思いまして。書庫の鍵を開けてくれませんか。本を貸して欲しいんです」
「ああ、構わんぞ。開けさせておくから、自由に持っていきなさい」
息子の思惑も知らず、カンタスは鷹揚に頷いた。
「ありがとうございます」
「私はしばらく部屋に居るから、なにか用事があったら、使用人に言いなさい」
第一段階はうまくいった。書庫は貴重品倉庫の隣にあり、実は部屋の内部で繋がっている。もちろん、鍵がかかっているが、テリウスは名匠リトラスやスラムの友人の教えを受けている。時間と道具さえあれば、どんな鍵でも突破してみせる自信があった。書庫内部からならば、人目を気にしなくて済む。
「さてと……。まずは本からだな」
一応、本を選んでおいた方がいい。そう考えたテリウスは、「真王国の歴史」「必勝兵法」「手紙のまとめ方」と三冊選びだした。目についたものを適当に選んだだけだが、いざというときの言い訳に使うためのものだから、これで問題無い。
それが済むと、テリウスはいよいよ鍵破りに取りかかった。祖父の工房から持ってきた道具一式を広げる。次に、扉の向こうの気配を探る。
「いいか、錠前をいじる前に、扉の向こうの気配をさぐれ。扉を開けたはいいが、その直後に捕まった奴をたくさん知ってるからな」
そんなことを言っていた男も既にいない。貧困のあげく、鉱山の事故であっけなく死んだ。どんな良人であろうと、どんな悪人であろうと、弱い人間から先に死ぬ。それが世の理だと、テリウスは若干10歳にして既に理解していた。
気配は無い。もっとも、この時間であれば、倉庫に人が近付くことはまず無い。テリウスは丁寧に仕事に取りかかった。鍵を破壊したり、扉に傷をつけたりしては、露見するのが早くなる。十分に注意しなくてはいけない。その分だけ時間がかかってしまったが、なんとか、鍵を破るのに成功した。
「ふん……『あの男』の教えは役に立ちましたよ、少なくともあんたの貸してくれた本よりは」
一人、誰に聞かせるでもなく言ってみる。
――こんな風に意味も無く悪党振るのはテリウスの悪い癖だ。それで、しばしば損をする。心のどこかで、自身が優等生であることを嫌っているのかもしれない。
倉庫内に素早く侵入する。さっと周りを見回せば、悪趣味な甲冑やら蝋人形やらが飾ってある。火をかけてやりたいくらいだが、それも仕事を済ませてからだ。
「……あった」
例の剣だ。素早く鞘を払って確認する。
大人の身長より長い剣身、それでいてシンプルかつ優美。暗い倉庫の中でもはっきりと解る、白銀の輝き。しかも、信じられないほど軽い。これが本当に鋼鉄製なのだろうか。本当はいったいどんな材質でできているのか、想像もつかない。
なんて美しい。こんなところで埃を被っていていい代物ではないことくらい、テリウスにも確信できる。これは、戦い、勝利するために生み出された武器のはずだ。
しばらく眺めていたい気分だったが、既にかなりの時間が経っている。すばやく梱包し直してて書庫に戻り、鍵を戻す。ここまでは完璧だ。うまくいき過ぎて怖いほどだ。
「さて、ここからが問題だ」
テリウスは誰に見せるでもなく、腕を組んでみた。自分の身長より長いものを運び出さなければならないのだ。最初、どうやって人の目をごまかそうかと色々な手口を考えてみたのだが、かえって不自然になると結論付けて、一番単純な方法を選んだ。御曹司としての権限を最大限に利用し、多少のことは押し通すという方法だ。まさか自分が剣を盗むなどとは、誰にも想像できないだろう。父親以外の家人ならなんとかなる。父親に見つかったらぶちのめせばいい。そう覚悟を決めて、外に出た。
「あら、テリウス様。もうお帰りで?」
「ええ、おじゃましました」
テリウスは倉庫の外に出てからも、何人かの人間と平然と挨拶をして通りすぎた。物干し竿を背負っている程度にしか思われていないだろう。あと少しで出口だ。そう思ったとき、それは聞こえてきた。いや、聞こえてしまったというほうが正確かもしれなかった。
「ああ、そうだとも」
父親の声だった。父親の部屋は、割合と出口に近い場所にある。見つからない内にさっさと退散しよう、テリウスはそう思った。だが。
「ああ、うまくいったともさ。じじいの哀れなツラが目に浮かぶさ」
(!……じいさまの話だ。まさか……)
つい聞き耳を立ててしまった。ここまでうまくいっていたこともあって、気が緩んでいたのかもしれない。父親の声と一緒に、若い女の声がしたのも気になる。
「それにしても、あいつめ。どうせならトドメを刺しちまえばよかったものを」
「そんなに良い剣なの?」
「さあな。ただ、じじいが大事にしてるって話だったから、盗って来させただけだ。やたらひょろ長い、変な剣だったな」
これがこの男の本性だ。まさかとは思っていたが。そこまで救いがない男だとは、疑いたくなかったのに。
こんな話を大声でできるとは。なんという不用心だ。
じいさまが死んでいれば良かっただって? なんという無慈悲だ。
鍛冶師の子のくせに、この剣がよくわからないだって? なんという無能力だ。
吐き気がする。自分を、自分の血を、自分の命を否定したくなる。この男の血が、少なくとも半分は自分の身体に流れているというのか。
(僕は何者なんだ?)
「ほら、そんな話はもういいでしょう? ほらあ」
父親の妻とは別の声だった。
しかも、まだ、他の女に手を出しているだって? なんという――――
悲鳴が聞こえた。さらに、何かが割れる音。邸内の空気が凍りつく。
「何かあったんだわ」
「……ええぃ、やむを得ん、突入するぞ」
ディオールは迷った。テリウスに危険が及んだのかもしれない。だが、サティンの安全を守ると約束した。巻き込むことはできない。それでも、結局は突入を選んだ。
「もちろんよ、いくわよ!」
駆け出すのはサティンのほうが早かった。一寸の迷いも無く、邸内に走り込む。その姿に感嘆しつつ、ディオールは走った。
「わあああああ、な、なにをするんだ。テリウス」
「この剣の素晴らしさがよくわからなかったとのことでしたから、教えて差し上げようと思いまして」
テリウスは父親の目前に抜き身の剣を見せつけた。白銀に輝く剣身。これほどの逸物の素晴らしさがわからないとは。どれ、豚の肉で切れ味を試してみようか。
「ば、ばばば、馬鹿なことはするもんじゃあない。私は、お前の父親だぞ。な、そんなものはしまうんだ、テリウス」
みじめったらしく命乞いをする。それが余計にテリウスの神経を逆撫でた。
「その名前を呼ぶな! フィンって名前をつけてくれたのはじいさまだ! テリウスって名前をつけてくれたのは母さんだ! あんたが何をした! 種付けだけじゃないか! あんたがしたのは……僕の家族を悲しませることだけじゃないか!」
祖父を罵倒する姿、街で遊びほうける姿、えらそうにふんぞり返る姿、母の悲しそうな顔。鮮明に記憶が蘇る。
(良すぎる記憶力というのも考えものだな……。忘れたいことも忘れられやしないじゃないか)
「わ、悪かった、だから、な、許しておくれ」
部屋の隅から逃げようとしていた女へ向けて、テリウスは素早く卓上のナイフを掴んで投げ付けた。ナイフは女の顔の真横の壁に突き刺さった。女はぺたんと座り込むと、だらしなく失禁した。殺すつもりだったのだが、狙いをはずした。まあいい。
「もう、我慢ならない。あんたを殺して街を出る」
テリウスはさらに一歩踏み込んだ。この人の形をした毒虫を殺してやる。こいつは息をしている限り、人に迷惑しかかけない。こいつがいる限り、自分の存在が許せない。こいつが一言喋るたびに、フィン・テリウスが消えていく。こいつは……!
テリウスには――この父親という名前の男を、一撃で殺す自信があった。
「ひいいいぃいい!」
見せ付ける様に白銀の剣を振りかぶる。振り下ろす。それで全てが片付くはずだった。だが、間に割り込む姿があった。
なんとか間に合った。間に割り込み、斬撃を跳ね返す。
「やめろ、テリウス。こんな男を殺したところで、何にもならん」
斬撃の間に割り込んだのはディオールだった。テリウスは呆然としていた。後ろからサティンがそっと掴まえる。
「子が父親を殺すな。どうしても望むというのであれば、お前がやるまでもない。俺がやってやる」
ディオールは本気だ。この聡明な少年が父を惨殺しようとしたというのであれば、相応の理由があるのだろう。ならば自分が代わりにやってやればいい。自分にとってはいまさら1人や2人、大差はない。この少年が親を殺したところで、生涯消えない傷がつくだけだ。
「……」
テリウスはそう言われて、気を取り直した。――悪い方に転んだとも言う。
「邪魔をするなあああああああああああああああぁぁぁ!」
「きゃあ!」
テリウスはもの凄い勢いでサティンを突き飛ばすと、目標をディオールに変えて、突いてきた。迅い。10歳の少年の物とは思えない。
「くっ。やめろ!」
テリウスの持っている剣【ジルワ・ノエル・クリク・ファーン】はいくら軽いといっても、少年の矮躯には長すぎる。ずば抜けた長身のディオールにとってさえ、並の長剣よりもとてつもなく長いのだ。本能的にそれを知ったのだろう。振りまわすのではなく、突いてくる。長槍の様だ。これでは、ディオールは迂闊に手が出せない。
「僕は! 僕が殺すっっっっ!」
がむしゃらに突いてくるテリウス。それは迅いが、未熟だ。ディオールに倒せない事は無い。だが、この少年を殺すわけにはいかない。ディオールは距離をとって、寝台から落ちたシーツを左手に巻き取ると、森の中の時のように投げつけることはせずに、前面に広げてみせた。
「!!っ」
視界いっぱいに広がったそれを、テリウスは突いた。見事だ。観客が居たならば、拍手が鳴っただろう。しかし、それはディオールの思惑通りだった。ディオールはその脇を抜けると、横あいから拳を打ち下ろして鎖骨を狙った。骨折くらいは我慢してもらうつもりだった。
だが、それは躱された。シーツに絡まれることもなく身を沈めて足を狙ってきた一撃を、ディオールは小さく跳んで躱した。さらに連突で突き放される。
(迅い――いくらなんでも度が過ぎている……)
テリウスの身のこなしは、この年代の少年のものとしては異常なほどに素早いのだ。なまじ、身長差がありすぎるのも問題だった。だが。
「はあ、はあ、はあ……」
テリウスの体力は限界に近い。どれほど優れた素質があっても、基礎体力がついていかないのだ。未熟な技術で長剣を振り回せば消耗も激しい。既に肩で息をして、腕も震えている。
「くそおおおおおお……僕が、僕がやらないと」
「もう、やめろ。テリウス。どうしてもというのなら」
ディオールがそう言いかけた言葉に、割り込む声があった。本来なら、それは豊かな感性に包まれているべきものだった。
「私が殺してあげるから。ね。もう、おやめなさい」
サティンだ。槍を男に突きつけている。
「サティン?」
「……サティンさん?」
「な……なんだ。あんた達は。私を助けてくれるんじゃあ無いのか!」
それに、三者三様に応える。
「私はサティナルクレール・フレイズ。フレイズ藩の第一公女です。そちらの人はテス・ディオール」
サティンが名乗りをあげてしまう。それを聞いたテリウスが目を剥く。
「フレイズの公女!? それに……テス・ディオール? ……あの【蒼鷲】?!」
「サティン、どういうつもりだ?」
もしものために、ここに来る前に二人でリトラスに話を聞いておいた。彼は孫が隠そうとした事実を既に知っていた。それだけでなく、誰が強盗犯を送り込んだのかも気がついていた。故に、サティンとておおむねの事情は知っているが、これは爆弾発言だ。これまで堪えていたものが無駄になりかねない。
「テリウス君、貴方が手を汚す必要はないの。ふふ……藩主になれば何度もしなければならないことよ。いま初体験しておくのも悪くないわね」
そう語るサティンの目は冷たい。普段の溢れんばかりの感情が感じられない。その様子を見て、ディオールは今まで感じたことの無いものを感じた。まさか、この娘からこれほどまでに威圧されるとは。見くびっていたつもりはないが、ここまでのものとは思ってもいなかった。
「やめるんだ、サティン」
ディオールは目の前の可憐な娘からそんな言葉を聞きたくなかった。そんな顔を見たくなかった。だが、サティンは聞く耳を持たない。普段の彼女からは信じられないことだ。
「罪状――強盗、尊属の殺人未遂、それに不義。【真王】が末子、フレイズのサティナルクレールがその王権を代行して判決を下し、かつ執行します」
判決は既に宣告されている。わざわざ口に出すことなく、執行に取りかかる。
「じゃあ、さよなら」
「……やめてください。サティンさん」
テリウスだ。サティンの手が止まる。
「もう……いいんです」
「でも……」
「いいんです。もう。それ以上に……貴女が人を殺すところを見たくないんです。それに、多分、心のどこかで、貴女達を恨んでしまいそうだから」
テリウスが疲れ切ったような声で言った。
「わかったわ。止めておくわね」
既に男は泡を吹いて気絶していた。それを、先程よりは感情のある瞳で見下ろすサティン。厳かに、言う。
「この男の罪を明らかにし、この街で施行されている法に照らし合わせた上で裁きを下す。それで良しとしましょう」
三人でリトラスの工房に戻った。事務手続きなどの面倒なことは、彼と官憲達に任せることにした。テリウスの父、ゼン・カンタスの罪は裁かれることになるはずだ。ただ、サティンが名乗ったのはまずかった。無用な人の目を引いた可能性が高い。
「わかってるわよ。反省してるわ。……頭に血が上っちゃって」
そう言うサティンはいつもの顔に戻っている。
「貴女を怒らせると怖いということが良くわかった」
「もう……」
ディオールの言葉に、サティンがむくれる。自分でもしまったとは思っているのだ。
「誠に申し訳ありません。愚息どもがご迷惑をおかけしました」
「僕も……本当にすいません。いきなり切りかかるなんて。しかも、フレイズ公女様と【蒼鷲】だなんて、とんだご無礼を働きました」
リトラスとテリウス、二人とも深々と頭を下げる。
「いいのよ。本当に。これ以上の騒ぎにならないうちに抜け出したほうが良さそうだけれどね」
サティンが微笑みかける。ともあれ、最悪の事態は回避できたのだ。満足すべきなのだろう。剣も、盗人の手から還って来た。白銀に輝く双子の片割れ、【ジルワ・ノエル・クリク・ファーン】。
「そうだな。急ではあるが、そろそろお暇するとしよう。それはさておき……【支払い】の方はどうするのだ?」
ディオールが言う。そういえば、この剣の修繕費の支払いについて、書類上は白紙になっていたが、なんらかの約束はしていたのだろう。
「貴方の眼から見て、いかがでしたか?」
「合格だな。満点に近い」
「では、よろしくお願い致します」
「危険だぞ? 安全の保障はできん。それについては、既に先客が居るからな」
「そのくらいが、ちょうどよろしいでしょう」
リトラスとディオールが二人で話を始めた。残された二人には、なんのことかわからない。
「何の話なんです?」
二人の話に、テリウスが割り込んだ。それにリトラスが応えた。
「……いいかい、テリウス。お前はこんな街で終わる程度の人間じゃあない。もちろん、儂の跡を継いで欲しい、という気持ちもあるがな」
リトラスがやさしく孫に語り掛ける。その言わんとするところは明らかだ。テリウスは、今、それを知った。
「……じいさま」
「お前は【冠】を持っているんだよ。人の先に立つための、人より優れた才能のことだ。お前は戦士になりたいのだろう? 運さえ良ければ、きっと素晴らしい戦士になるよ。お前が望む様にしなさい。お前はもう10歳だ。外に出るなら、早い方がいい」
「……でも」
孫の心優しさを知るリトラスは、その言わんとする事を遮った。
「いいんだよ、儂のことは気にせんでも。儂はここで生まれ、ここで生きてきた。多分、ここで死ぬだろう。それでも、お前が嫁を貰うまでくらいは生きていて見せるさ」
「それはさすがに気が早いんじゃないかしら?」
サティンが茶化す。
「コホン。まあ、そういうわけだ。行きなさい。ディオール殿にいろいろと頼んでおいたから。……それが剣の【支払い】なんだよ」
「……わかりました。じいさま。行ってきます」
少年の決意。
「ああ、辛くなったらいつでも帰って来なさい。できたら、嫁を連れてな」
「はい。それにディオール様、サティン様。よろしくお願いします」
「敬称はいらないわ。サティンとディオールでいいから。よろしくね、テリウス」
「危険な時は俺達に構うな。自分を最優先するんだ。いいな、テリウス」
「はい!」
二人の言葉に、テリウスが元気良く応える。この少年には輝かしい未来が待っているに違いない。運さえ味方するのならば。
「あ、この剣はお返ししないと」
テリウスが【ジルワ・ノエル・クリク・ファーン】を差し出す。かつてのディオールの愛剣だ。完全に修復されている。その片割れとは対照的に、白銀に彩られた剣。
「いい。お前にやろう。まだ使いこなすのは難しかろうがな」
「ええ? でも……」
「構わんさ。最初からそういう【支払い】の条件だったのだからな」
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