第2話 ユミリン
ユミリンは、このドラマの主人公。十代半ばの美少女である。両親はいない。
孤児院で生活している。
また、聾唖者のため、今まで誰かと対話(手話を含めて)をするという経験がない。しかし、その必要は特になかった。なぜなら、ロボットの愛犬ロビーがいつもそばにいて、何でもしてくれたからだ。
ロビーは犬と言っても、子ヤギほどの大きさがある。電子頭脳で、背中のキーボードを押せば、ユミリンが今、何を欲しているかすぐに理解できた。ユミリンの唯一の友達と言えた。
ユミリンはよく散歩をしたが、歩き疲れた時はこのロビーの背中に乗ったりもした。ロビーの足には車輪が四つついている。だから、転ぶことはなかった。
この時代は、誰でも自分の世話をしてくれるロボットを傍らに置いているが、それは人間というものが、ひどくナマケモノになって、仕事をすべてロボットに任せるようになったからである。人間は働かない。ロボットがその代わりをしていた。
孤児院のユミリンも、人間から世話を受けているわけではない。食事も掃除も洗濯も、すべてロボットがしている。もっとも、ロボットと言っても人間の形をしているわけではなく、その作業に適した形となっていた。
掃除であれば、豚の形をしたタンクに、吸引のためのホースがあり、必要があれば、手が伸びて、特殊なブラシで床を磨く。
ビルの中は、どこもかしこもピカピカで、特に居住区の通路は、大きな通路清掃車が定期的に通る。これが通った後は、天井や壁がいっぺんに綺麗になる。
また、ビルの中には土という汚れたものがなかった。公園やグランドでさえ土がないのだ。したがって、農地というものはなく、野菜は水耕栽培で人工照明で作られた。
いちご狩りは、やはり水耕栽培で年中楽しめた。しかし、梨狩りや栗拾いは存在しなかった。ただし、梨や栗がないわけではなく、植物園の中に多少あった。特殊な装置で、かなり矮小化されていたが。
種の保存は、人類にとって、もっとも重要な務めである。稲や麦は、草であるが、人類がここまで生き延びたのは、ひとえに草のお陰と言える。
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