第35話 職員会議2

連れて行かれた校長に目を向けることもなく、教員一同が零を拍手で包んだ

元より零を校長に、冥賀を教頭にという話はあったのだ

それは仕事をこなす能力と、生徒たちからの信頼。そして教員たちの意見からだった



「まぁやることは変わらないんですけどね。じゃあ本格的に学祭の話になりますが、体育祭についてはいつも通り岡本先生に丸投…おまかせいたします」


「丸投げっていいかけませんでした?」


「言ってないからセーフです。文化祭については私と…夢依むい先生が主に担当します。弥生高校とのアポイントメントは私、生徒たちの指導と伝達を夢依先生にお願いしたいと思っています」


「わかりました、スケジュール調整します。一応初回のご挨拶だけ同行しますね」


「ああ、後で頼もうと思ってました。お願いします」



基本的に零と冥賀は他の教員と仲がいい

天血だから、黒淵だから、と色眼鏡で見られることもない

飲み会で奢られることも奢ることもあり、罰ゲームも受けるほどに零と冥賀は一般人だ



「零先生、白鷺はどうします?」



体育教師が零に問いかけ、議論を起こしそうになったが



「参加させます。が、監視はつけたほうがいいと思うので、実家から患者追跡用のドローンをパクっ…。借りてきました」


「僕の方でも似たようなことを考えています。というのは、生徒会と教員一同で見回りを実施しようと思います。学生時代を思い出して楽しめると共に、警備をしているということで好印象かと」


「それいいな。反対意見はありますか?」


「…通常業務はどうしましょうか。例えば、模擬店の管理とか吹奏楽・軽音楽・ダンス部の管理ですが」


「交代制で回しましょう。模擬店は担任と副担任と体育科、部活動は顧問、副顧問と芸術科でお願いしたいと思います」



零の意見には反対はなく、むしろ喜んでいるような空気さえ醸し出している



「…あとは弥生高校と話し合って、決まったことについて順次会議しましょう。土曜日に臨時会議か電話会議をすることになるかもしれません。後ほどLIMEのIDをメールで送信するので追加し、名前を送信してください。その後グループを作成します」



零はその場でメールを打ち、送信した

LIMEの通知が鳴るなか、冥賀が立ち上がり教頭がいた席に移動する

無論、椅子を持ってだ



「…では、生徒会選挙の話に移りましょうか。まず、選挙管理委員会の顧問として僕がいくつか…」


「んじゃあその前に休憩だな。冥賀、少しコンビニに付き合え」


「全く…。仕方ありませんね。時間的にもお昼時に近いことですし、再開は13時からとします」



解散し、高校生のように人を連れ立って職員室を出ていく教員たち

零は冥賀と共に車に乗り込み、麓のコンビニにきた

そこで人数分の栄養剤を購入し、また学校に戻る



「律儀ですね」


「これくらいはしてやらんとな。校長として、教員の健康を気にしてやらなきゃ馬鹿だ」


「それもそうですが、言ってくれれば半分出したのにということです」


「次回はお前持ちな」


「…いいでしょう」



職員室に戻り、個人用冷蔵庫にそれらを詰め込んで、二人は喫煙所に移動した



「おかもっちゃん、ここにいたんすね」


「零先生までその呼び名を…。ただでさえ生徒に呼ばれて困惑しているのに」


「広めたの俺ですから」


「あんたが諸悪の根源か!」



体育教師が大声を上げ、三人で笑う



「変わらないな、零」


「こっちのセリフだ、悠斗。つか助かったぜ、白鷺の件は」


「あれくらいうちの実家なら余裕だよ。大したことじゃない」


「君の家は情報屋でしたね」


「まぁね。メディアに向けて売るのが仕事だったけど、最近はブログで有料配信してる」


「「現代化…」」



冥賀は未だに新聞を紙媒体で読むし、零は本を紙媒体で読む

二人とも画面で読むのに慣れず、こういったアナログな方法で情報を集めているのだ



「つかいきなり校長とか出世だな」


「まぁ、前々から打診はあったんだ。校長の失脚が決まった2ヶ月前から」


「そんな前から決まってたのか!?」


「今回の件はあくまで言い訳で、実際には一年間ほど調査していました」


「その結果、出るわ出るわって感じでな。っと、時間だな。戻るか」



今日一日、零と冥賀は会議をすすめる中で、今までで一番のやりやすさを感じていた

それは他教員も同じことであり、つつがなく会議は終わりを迎えたのだった

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