第27話 昼食にて

「眠そうだね、夜斗」

「今日を楽しみにしてたら寝れなくてな。スマホいじってたら紗奈を起こしたり、廊下で立ち話したりしてた」

「立ち話…?誰と?」

「あー…まぁ、実家勤務の巫女とな」

というのは嘘である

本当は夏恋と話していたのだが、夜斗の記憶ではアイリスに話していないため誤魔化すことにしたのだった

「そろそろ頃合いだし、飯にするか」

「そだね。3階にフードコートがあるらしいよ」

「捜索範囲が広い…」

夜斗はまた繋がれた手に目を向けて、少し心を和ませた

(俺の手を握ろうという人がいるんだな)

『私を筆頭に5人くらい該当者がおりますが』

(なんかごめん)

「夜斗、どしたの?」

「ん?いや、アイリスが手を繋いでくるとは思ってなくてな」

「そうかな?私夜斗にはオープンだと思うけど」

「言い方を変えると遠慮なしってことだけどな」

「まぁそれはいいじゃん。こんなに可愛い女の子と一緒にいられるんだから」

「事実だけど自分で言うなよ」

到着したフードコートで、夜斗はアイリスに何を食べるのかを聞いた

「だいたいあるよ。パスタもステーキもあるし、謎のお茶漬け屋もあるし、夜斗が好きなラーメンもある」

「アイリスプロデュースの店で頼んだ」

「じゃあパスタかなぁ。レビュー見た限りだと一番コスパいいし」

アイリスは夜斗の手を引いて奥へ奥へと入っていく

刼華と唯利も追従して背後から奥へと入っていく

「夜斗はカルボナーラ?」

「なんで知ってんだよ。そういうお前はミートソースか」

「なんで知ってるの?」

笑い合いながら注文を済ませ、料理を待つ間に夜斗は他愛のない話を振る

「学校はどうだ」

「お父さんか。まぁぼちぼちかなぁ。相変わらず男子は近寄ってくるし女子はおこぼれ狙いでくるけど」

「何も絡みが無いよりマシだろ」

「どーかなぁ。じゃあ逆に夜斗はどうなの?」

夜斗は学校生活を振り返り、スンッと真顔になる

「ああごめん察したよ。中学時代と変わらないんだね」

「そういうことだ」

アイリスは中学時代の夜斗を知っている

大抵人気者に敵対されるが、その人気者が自爆するのだ

それが毎年起きるクラスにいるのが夜斗の特性

「佐久間はすごいよ。また総合で学年一位とったから」

「あいつ無駄に頭いいな。そのわりに何もないとこで躓いたりするけど」

「それは多分夜斗の前だからだと思うよ?」

「そこまで嫌われたかクッソが」

「そこまで言ってないし自虐でダメージ食らってるだけだからね」

アイリス水を飲み干して、夜斗に給水ポットを取るように頼んだ

夜斗はすぐ脇にあったそれを手に取り、流れるようにアイリスのコップに水をつぐ

「ありがと」

「おう。あ、来たぞ。ミートソース」

夜斗はそう言いつつ、視界の隅に刼華を捉えた

が、デート中に他の女子の話題を出さないよう気を払いつつ話を振る

「そういえば2年くらい前、りんきゅうってやついたの覚えてるか?」

「あー、いたねそんなの。興味なすぎてわすれてたよ」

「あのときの久遠ってやつに関してわかったことあるか?」

「…一介の女子高生には難しいよ、調べるのなんて」

「一介の女子高生ならな。どうなんだ?」

「…バレてるんだ。そうだね、調べはついてるよ。ただ、プロテクトが強すぎてカウンターされた」

「アイリスの攻撃プログラムをカウンターしたのか」

「そそ。ファイアウォール突破してからカウンターが起動すると思ってたけど、久遠のはちがかったの。侵入と同時にカウンターされて、アタックプログラムがあんまりファイアウォールを壊せなかったよ」

アイリスはポーチから取り出した紙を夜斗の前に…置かれたパスタの横においた

「一応調査報告書。読めばわかるけど、多分私と同じホワイトハッカーかな。設備はスパコン使ってると思うし、ファイアウォールも並の強度じゃなかった。それでも抜き出せたのは、同じ市に住んでるってことかな」

「ほーん」

夜斗は紙を眺めて、アイリスに返した

「あげるよ。私には不要だし」

夜斗はそれを受けて紙をかばんに入れ、完食したパスタを見て首を傾げる

「こんなに食ったか?」

「まぁ、元が少ないのと夜斗がよく食べるのが大きいかな。食べる?」

「少しくれ」

アイリスがフォークで巻き取ったミートソースパスタを、アイリスが夜斗に食べさせる

「…ふむ、上手いな。俺が作るより断然うまい」

「夜斗って料理下手じゃなかったっけ?」

「おかげさまで未だに厨房入りを果たしてないな。ずっとレジかホールだ」

「私はお客さんが暴走するからって理由で即厨房入りを決められたからね。さすが私美少女」

「自分で言わなければなぁ…」

夜斗はアイリスの口元を紙ナプキンで拭いながら言った

「あ、ありがと」

「おう。さすが俺、気を使える」

「体の周りに光を纏って戦うの?」

「サイ○ジンか俺は」

しばらくするとアイリスも食べ終わったため、席を立つ二人

会計は先に済ませるタイプのため、食器類を返却口に入れてフードコートを離れる

刼華たちも同じようにフードコートを離れ、夜斗たちを追いかけるのを再開した

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