第25話 夜斗とデートと今日の予定

翌日朝6時半

いつもどおりに起床し、夜斗は朝食を取りに一階食堂へと降りた

そこには霊斗と、何故か夜暮がいた

「夜暮、何故ここに?」

「ん?ああ、とりあえずやることは終わったからな、飯だけ食いに来た」

夜暮はそう言いながら、チーンと子気味のいい音を立てたオーブンにパンを取りに歩いていった

「おはよう霊斗。よく寝れたか?」

「逆に聞こうか、寝れたと思う?」

「時雨のことだし隣で寝るくらいされただろうし抱きつかれただろうし何なら夜の営みまで求められて寝れなかった、だろ?」

「寸分違わず正解だよこんにゃろー。可愛かったけど」

「ふっ、ならよかったじゃねぇか」

夜斗は椅子を持ってきて夜暮と霊斗が使っている机の前に腰を下ろした

そしてバイキング形式であることを思い出し、モノを取りに移動する

「やほー、夜斗。元気?」

「澪…。お前もいたのか」

「まーね。刼華と美羽からの相談を受けに来たの。お兄ちゃんたちは道路挟んで反対側のラーメン屋行ってるよ」

「あいつらもきてんのかい…。暇なのか?」

「当主に任せて帰ってきたの。白鷺は公安に連れてかれたけど、うちから損賠請求するから釈放してもらったしね。まぁ、首にGPS埋め込んだから逃げられることはもうないよ」

「逃げられるもんなら逃げてみろ、って感じだな」

夜斗はサラダを山のように盛り付け、シーザードレッシングをかけて粉チーズをまぶした

「相変わらず好きだね、それ。そんなに美味しい?」

「まぁな。最近はチョレギサラダやシーチキン乗せもブームだ」

「聞いてないしそこまでいくと怖いよそのブーム」

澪はそう言って、自分のものを取り揃えた

そして夜斗に手を振りながら、霊斗たちから遠く離れた席にて待つ美羽と刼華の元へ歩いていった

夜斗も食べるものを皿に盛り、パンを持ってきた夜暮と白米・味噌汁・焼き魚を取り揃えた霊斗がいる机へ移動した

「そういや夜斗、お前アイリスさんとデートなんだって?」

「デートなのかはしらないが、まぁそうだな」

「ほう。そうだったのか。であれば、ゆっくりする時間はなかろうに」

「まぁ十時に現地集合というメールが深夜0時に来てたし、まだゆっくりするさ。どうせ厚木まで行くからな」

「一時間くらいか。じゃあ九時に出るんだよな?」

「8時だよ。時間には余裕を持つもんだ。あと、コンビニで昨日もらった報酬を口座にぶち込む」

夜斗はサラダをガツガツ食べ飲み込み、次を口に含む前に一言ずつ喋る

これが夜斗の標準だ。話はしたいが朝食をとりたいが故の選択だった

「どこいくん?」

「アイリスに全任せしてある。選びたいって言うから」

「まぁあの人なら言いそうだな。ところで夜斗、兄貴が夜に電話をよこせと言っていたぞ」

「あー…。まぁいいや、了解」

「そういえばさ、これ夜斗に渡せって時雨さんから渡されたんだけどナニコレ」

「ん?ああ、超小型PCだな。これも報酬なのかね」

「いやなんか、データに目を通しておけって言ってた。白鷺の前にトラブった人のデータだ、って。お前トラブルメーカーすぎだろ」

「俺のせい…なのか?」

夜斗はサラダを食べ終え、バターを塗って焼いたパンにかじりついた

霊斗は見事な三角食べを見せ、夜暮はひたすらにイチゴジャムパンを食べ続ける

「あー、思い出した。りんきゅうのことか」

「誰だそれ。なんか聞いたことあるな」

一足先に食べ終えた夜暮が問いただす

「出会い厨だよ。メイドフェチの自称吸血鬼ってやつ。SNSで久遠ってやつに喧嘩売ったらファンに総叩きにされて泣いてたやつ」

「どっかで聞いたような話だなぁ。時雨に調べさせたのか?」

「まぁ軽く…。電話番号住所本名くらいしか聞いてないけど」

「じゃあこのクレジットカードみたいなやつはSSDか」

霊斗が机に置かれたそれを指差す

いや、と否定しつつ手に取る夜斗

「確かこれは…。冬風夜斗、起動申請」

『声紋データ認証。セキュリティを解除します。閲覧モード、画面を机上に投影』

机に何かが投影され、手を置けと言わんばかりのものが表示される

「これたしか超小型の端末だ。記憶が正しければ、平面ならどこにでも投影できる代わりにそこに置いたり貼り付けたりしなきゃいけない」

夜斗はそういいつつその手のひらマークに手を乗せる

『オーソライズ』

端末がそう発音し、黒背景に白文字で情報が表示されていく

「…あー。なるほどね、あいつ白鷺の関係者か。そして住みは…神戸市西区…って何県だ」

地理に疎い夜斗が夜暮に目を向ける

「兵庫県神戸市だな。県庁所在地じゃなかったか?」

「ふーん。まぁいいや、電話番号はいいとして…。この、Personal IDってなんだ?」

「時雨桜一族が警戒してる人物につける十三桁の番号だ。ほとんどの場合抹殺される」

夜暮は端末の電源を切り、夜斗に投げた

「そういうのは帰ってからにしろ。お前はアイリスさんを楽しませることだけ考えていればいい」

夜暮はそう言い残し、食堂を後にした

夜斗はこちらを眺め続ける刼華と美羽に手を振ってみたが、顔をそらされたことでため息をつく

「嫌われてんな俺」

「お前は一回駿河湾に沈んだほうがいい」

「なんでだよ…。お前今日の予定は?」

「天音と桃香つれて東京。冥賀さんが車出してくれるらしいからな」

「俺も車出してもらうかなぁ、零に」

「現地集合がいいんだろ、デートってのは」

そういって霊斗は苦笑した

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る