第24話 アイリスの心情
そんな夜斗の想いとは全く関係なく、アイリスは布団の中で明日を楽しみにしていた
(どこ行こっかなぁ。神奈川県だと、繁華街しか知らないんだよね。まぁ小田原まで戻れば行くとこあるっちゃあるけど、
強いて言うなら温泉があることしかアイリスは知らないのだ
調べようと思えば調べられる。しかし
(佐久間寝てるし、スマホで見てて起こしても悪いし…。とりあえず西か東だよね。うーん…)
アイリスは体を起こし、佐久間と自分のベッドの間にあるカーテンを閉めた
少なくとも漏れる光は最小限になるはずである
(…かーなーがーわー。うーん…特にこれといって面白そうなところはないなぁ。強いていうならショッピングセンターくらいかな?でも夜斗の家の近くに…ないか。じゃあショッピングセンター?ここなら朝からいても楽しめそうだし…)
アイリスはデート前夜の女子のように探し始める
そして服をちらっと見てため息をついた
(たしかに無難なファッションだけど、私の好みじゃないなー。ホットパンツだっけ、あれ。私スカートのほうが好きなんだよねー)
尚、その理由は動きやすいかららしい
正直ホットパンツのほうが気持ち的に動きやすいのではないだろうか
(…まぁお昼もここで食べれるよね。というか何なら朝行ってすぐ服選んでもらおうかなぁ)
夜斗には行き先は任せろと言っているため、余念なく決めるアイリス
「…アイリス、程々にして寝ないと体を壊すよ。明日風邪を引いたりしては元も子もない」
「佐久間、起きてたんだ」
「かなり前からね。というかちょくちょく声に出てたよ」
「えっ…。ごめん」
「構わないさ。好きな人とのデートというのは、女子にとって大切だからね」
カーテンを開けて、佐久間が微笑む
バイト中に見せる、偽物の笑顔ではなく子や妹を見るような、慈愛に満ちた笑みだ
「むぅ…。好きなのは事実だけどさ、そこまではっきり言っちゃう?」
「僕がそういう性格なのは言うまでもないだろうに。それに、君が言ったんだよ。夜斗との出会いはバイトではなく、過去に隣の家だったことにあるってね」
「まぁね。実際、あの歳でベランダから話ししてたの。楽しかったなぁ」
夜斗は中学生まで普通の一軒家に住んでいた
周りの人に違和感を与えないために夜斗の父が配慮したのだが、その際隣の家に住んでいたのがアイリスだった
本当は、身長的にベランダの壁に阻まれて顔が見えない歳からの付き合いなのだ
アイリスは小さく笑い、佐久間を見た
「佐久間はいいの?」
「ん?何がだい?」
「夜斗を好きなんじゃないの?」
「ごふっ…。急に何を言い出すかと思えば…。あくまで僕から見たらただのバイト仲間さ。とはいえ、プライベートの付き合いがある以上友人なのかもしれないね」
「目が夜斗を追ってるからなぁ、いつも。しかも言われた瞬間視線ずらしたよね?」
「…よく見てるね。けど実際、好きではないと思うよ。自身の感情は微妙にわかりづらいけど」
佐久間はアイリスの隣に座り、机に置いておいたペットボトルのお茶を手にとった
「…まぁ、夜斗であろうと誰であろうと、僕を好む異性はいないよ。口調的には男だしね」
「まだいいじゃん。私とかぶりっ子って言われるからね。その子のスマホOS消してハッキング中継ツールにしてやったけど」
「どうなったんだい?」
「ハッキング犯として逮捕されてたけど、証拠不十分で不起訴」
アイリスはつまらなそうにそう言って、化粧道具を眺めた
乱雑に置かれたそれらが、今朝の忙しなさを彷彿とさせる
「明日のためにも早く寝たまえ。僕は少々やることがある故」
「…?情報とるの?」
「いや、そっちの仕事ではなく本業…というか勉強だよ。追いついていないんだ、数学」
「ふーん。私は現代文と世界史がだめだね。数式にできるものならよゆーなのに」
「逆に数式にされるとわけがわからなくてさ。寝ないなら教えてくれると助かるね」
佐久間はキャリーバッグからノートと教科書を取り出して机の前に置かれた椅子に座った
「いいよん。私も今度教えてもらうからね」
「ああ、問題ないよ」
二人の勉強会は、2時頃まで続いた
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