第22話 終幕

パーティーが終わり、会場を後にした一行はホテルに戻っていた

「特に行動を成約することはしませんが、ある程度モラルのある行動をお願いします」

と言い残し、冥賀は夜暮と共に送迎に使われていたバンでどこかへ走り去っていった

「霊斗、外行こうぜ。暇だし」

「俺は別にいいけど、刼華ちゃんと話しなくていいのか?」

「まぁまぁ、すぐだから」

そういって夜斗は霊斗を連れ出し、近くの公園に足を運んだ

「一連の騒動が長すぎて疲れた。霊斗、お疲れさん」

「あ、ああ。お前こそお疲れさんだな。まさかあんなのが現実世界に存在するとは…」

「まぁな。あいつらは結構前からああなんだよ。中学生時代から、私利私欲のために人をも殺す」

夜斗はそう言いながら、道中のコンビニで買ったエナジードリンクを口にした

「…あれだな、小説とかだったら俺が黒幕でしたーみたいな展開は割と面白い」

「そーかもな。けど今回の事件は、警視総監が逮捕されて終わった。俺の親戚が警視総監になる予定だ」

「…まさかそれを狙って…?」

「…正確には、その次期警視総監からの依頼だったんだ。なぁ、夜美やみ姉」

夜斗は木の陰に向けて声をかけた

そこから姿を現したのは、どこか夜斗に似た雰囲気を持つ女性

身長は女性としては高く、容姿は紗奈に近い

髪色は紗奈の黒より明るく、茶に近いが

「…はじめまして、になるかな。緋月霊斗君」

「あ、ああ…じゃなくて、そうですね」

「まぁはじめましてじゃないけど。香月かげつって苗字、記憶にない?」

「……あぁ!夜斗をよく誘拐してた人!?」

「その言い方は誤解を招くかな!?」

「…事実だろ」

「夜斗!?」

夜美は二人に近づき、封筒をそれぞれに手渡した

「これは…?」

「逮捕協力金。前までは賞状だけだったんだけど、最近は犯罪者が増えてきたから現金を出すようにしてるの。で、これは報酬。あとは…時雨ちゃん」

「ふむ、貴様にまで気付かれるとはな。自信をなくすぞ」

倉庫用のプレハブの陰から時雨が姿を見せ、その場に4人が集まる形となった

「まずこれは貴様らへの報酬だ。ありがたく受け取れ、税金から出てるから」

「使いにくい言い方するなよ…。もらっておくけど」

夜斗はポケットから財布を取り出して、封筒の中身を全て詰めた

霊斗も同じようにカバンから財布を取り出して中身を入れる

「…二人は、どういった関係なんだ…ですか?」

「タメでいいよ、昔はそうだったんだから。私と時雨は学生時代の同級生。私たちはアメリカで飛び級したりしたから、14歳で大学課程を終わらせてるの。で、日本で公務員になって、それぞれがいい位になってる」

「…飛び級…。いやけど、アメリカの大学卒ってこっちじゃ意味ないはず…」

「それがそうでもねぇんだ。10年くらい前のニュースで、アメリカとの関係が親密になったってのあったろ?あれ以来、アメリカの学歴がこっちの学歴と同じようになってる。だから向こうの警察学校を出てるこの二人は、日本で警察になれたんだ」

(うっわ複雑だなぁ、考えるのも嫌になる)

「さて、と。これがお前を呼び出した理由だ。時雨、こいつならどうよ?」

「ふむ。戦闘能力に差し支え問題はない上、メンタル面も即時取り立てる必要はなかろう」

「え?なんの話?俺公安には入らないよ?」

「正確には黒桜に入る、だ。私は現在婚約者を探している。その候補が貴様だ、緋月霊斗」

「なんでですかねぇ!?」

霊斗の悲痛な叫びに笑みをこぼす夜斗と夜美

「お似合いじゃねぇか。ああそうだ、夜美姉。うちの神社のことで話があるんだ、明日の夜きてくれ」

「おっ?お誘い?」

「そういうのいいから…」

夜斗は霊斗を置いて公園を後にした

「案ずるな。貴様が私に惚れるまで手放す気はないし、私も貴様を愛そう」

「その愛がなくなったら?」

「なくなる前に煉炭だ」

「イヤだぁ!死にたくないぃ!」

「まだ愛は目覚めていない。今夜から育むとしようじゃないか、霊斗」

時雨の妖しい笑みに不覚にもドキッとした霊斗だったが、理性をもって逃げ出した

「確保しました、時雨様」

「離せぇ!!」

「うむ、ご苦労」

時雨の部下が霊斗を抑え込み、黒い高級車に押し込んでドア鍵を閉める

「…そういえば、夜斗にこれを渡さなかったな。まぁいい、霊斗に届けさせるとしよう」

クレジットカードほどの大きさの何かを胸ポケットに入れ、時雨は車に乗り込んだ

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