第18話 その頃の夜暮

「会場の設営急げ!客は2時間後に来るぞ!」

「飾り付けは天血に任せていいから料理を早く!200人はくるからね!」

ミーティングも何もなく、忙しなく指示を飛ばす夜暮と澪

主役とは思えない多忙っぷりに、黒淵の病院の看護師が声をかける

「御曹司はそろそろ衣装合わせをした方がいいのでは…?」

「できねぇだろこの様子で!完全に予定が狂った、黒淵の腕が立つやつを集めて迎撃に回せ!」

「は、はい!」

「もしもしお兄ちゃん!?今すぐ戻ってきて!」

澪が零に電話をかけて冥賀と共に戻ることを要請する

夜暮は机の配置を

なぜこんなことになっているのかと言うと、実は先程まで警察が来ていたのだ

そして荒らすだけ荒らして、帰った。完全に妨害目的だろう

「まさかこうまで暴挙に出るとはな…。してやられた」

「なんとかこっちは手配できそうだよ。まぁ、表に警察がいるから何ともできないけど」

「チッ…。なら、アレを使うしかないな」

夜暮は会場を出て、エレベーターで一階に降りた

そしてスマートフォンを操作し、もう片方の手で無線を使い呼ぶ

「桜音、撥ね飛ばせ」

『了解。装甲車を起動、主の携帯の位置情報を元に移動開始。到着まで5分』

答えたのは、黒淵のネットワークの要であるAIだ

黒淵が作った電子機器の全てに、桜音が操作するための子機が搭載されている

それを使い、桜音が裏手に止められた装甲車を表に回す

『到着。暴走開始』

夜暮が建物の中に戻るのとほぼ同時に、表にいた特殊部隊が装甲車に撥ねられた

装甲車は180°ターンし、また特殊部隊に特攻する

「撃て!タイヤを破壊して止めるんだ!」

『無駄。この車両は対戦車を想定している。ガラスも私が設計した最高硬度。貴方達ごときに壊せるものではない』

桜音が外部スピーカーを使いながら突撃、死なないように特殊部隊を壊滅させる

「へ、兵器製造法違反だ!」

『否定。兵器ではなく、ただ狙われても生きていられるようにフレームから構築したもの。車検も通っている。貴方たちこそ、何故ここにいる?』

「それは…!」

『解答。それは貴方たちが洗脳され、法など無視して鎮圧しようとしているから。貴方たちにかけられた洗脳は、警視総監への絶対的忠誠。だから、特殊部隊を使って一般人を殺すことにためらいがない』

桜音は冷静にそう伝えながら、裏手に止められた全装甲車を走らせ取り囲んだ

『警告。これ以上やるなら、容赦はしない』

「くっ…!公務執行妨害だ!」

『どう証明するつもりなのか知らないけど、私が制御しなければこの子達は確実に貴方たちを殺す。それでもよければ、私は貴方たちを取り囲む制御をやめる』

「制御…?ま、まさか…お前は…!」

『肯定。私はAI。深層学習により、自動構築されたもの。製作者がいないから、罪に問うことができない。貴方たちは、この量の装甲車を破壊できる?』

「ひ、引け!撤退だ!」

特殊部隊が背中を見せて逃げるのを横目に、桜音は装甲車を裏手に戻した

『…冬風夜斗。これは、貸しにしておく』

桜音はスリープモードに移行した



「自称警察を排除した。あとは…全員聞け!」

夜暮の声に、天血も黒淵も関係なく手を止め、夜暮を見る

「邪魔は排除した。早急に残りの支度を終わらせるぞ」

思い思いの返事で会場が埋まり、夜暮が指を鳴らして作業に入るように命じた

「霊能力は信じねぇが、お前だけは信じてやるよ、夜斗。白鷺を止めろ」

夜斗たちがいるはずのレストランに目を向けて、夜暮は呟いた

その背中に澪の背中が合わさり、夜暮は安堵する

「…すまんな、澪」

「だいじょーぶ。けど、多分パーティーで乗り込んでくるよね?」

「…どうにかする。夜斗と霊斗と俺がいれば、な」

夜暮は到着した零と冥賀に事情を話し、その場の指揮を任せて立ち去った

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