第14話 懸念
部屋に戻った夜斗は、髪を整え終えた夏恋と紗奈に戻った旨を伝えて机の前に置かれた椅子に座った
そしてPCを起動し、一つのアプリケーションを起動させる
「どうかされましたか、お兄様」
「社務所のカメラに遠隔接続してる。家にいるときは警報がなるけど、外に出てると不法侵入に気づけないからな」
「なるほど…。夏恋さんなら機械なしに見れるのでは…?」
「肯定です。ただ、それを主様に見せられるかと問われるとそうではないんです。電脳空間…要するにインターネットに接続中は対話できませんし、主様の脳に保存することはできますがそれを見れるのは私だけでして…」
「不審者がいるかどうかだけなら夏恋が日頃見てるが、いた場合はこうして確認するわけだ。でまぁ、白鷺が侵入してきたというときの映像がこれなんだが…」
「靄がかかってますね。霊能力でしょうか」
「巫女だけあって異能に抵抗がないな。十中八九そうだ、と言いたいところだが、多分ドッペルゲンガーだろうな。他人にしては似すぎていたし、何より生体反応が全くない」
夜斗は画面を切り替え、サーモグラフィに変更した
温度を撮影するカメラの映像のはずだが、白鷺がいた場所には何も映っていない
「恐らくは、白鷺の霊能力に関係するんだろう。あり得るのは、霊障を受けない力か、ドッペルゲンガーを操る力。夏恋、調べられるか?」
「はい。アカシックレコードに臨時接続…。検索・白鷺大貴」
「…検索、ですか」
「地球の記憶とも言えるアカシックレコードに繋げて調べるのに、最も簡単な方法だ。個人情報は全て載ってるし、何なら趣味や性癖までわかる」
「…個人情報保護法も何もないですね」
「要は使い方だ」
「出ました。白鷺大貴の霊能力は、ありません」
「…ない、だと…?」
夜斗は頭を抱える
であるとするなら、サーモグラフィに映らないのはなぜなのか。あんなにも姿形が似ていたのはなぜなのか
一切わからないのだ
「ただ、双子の兄がいることがわかりました。工業高等専門学校の四年生で、成績優秀でブラコンです。授業の一環で、サーモグラフィを無効化する方法を研究していたようです」
「それじゃねぇか。なんでその研究認めたんだ高専の教師」
「…ということは、一時解決でしょうか」
「とりあえずは解決、だな。寝るか」
「そうですね。明日も早いですし、早めに休みましょう」
「今日が金曜日だとはな…。まぁいいや、夏恋。電気消したら俺の中にもどれ」
「はい、主様」
夜斗は枕が2つ置かれたベッドに入り、紗奈が入るのを待って夏恋に合図を出した
電灯を消し、夜斗の中で眠りにつく夏恋
「夏恋さんは、もう寝られたんですか?」
「ああ。あいつは早く寝れる」
床についてすぐ、というレベルではない
睡眠体制に入れば一瞬にして眠りについているのだ
「では、誰も見ていないということですね」
「そうだな」
紗奈はふふっと笑って、天井を見る夜斗を眺めた
「波乱すぎる…。ここまでとは思わなかったぜ」
「父上が忘れるとは思いませんでしたしね。普段は一ヶ月前に予定を伝えてきますし」
「忘れてたんじゃなくて、あえて言わなかったのかもな。本人達から言わせるために」
「結果的に本人も聞かされてなくて大事件でした」
「全くだ。親父にはさっき抗議のメール送ったけど、全然返ってこないところを見るとわざとだろうな」
夜斗は寝返りを打つように紗奈の方に体を向けた
目の前に紗奈の顔がある
化粧をしていなくとも、そこらの女子とは比べ物にならない容姿を誇る紗奈
そしてその兄である夜斗も、全く人気がないわけではない
「お兄様も罪ですね。アイリスさんと佐久間さん、あと奏音さん…。今後唯利さんですか」
「え?何が?」
「私からお話するわけにはいきませんね。明日、ご本人に聞いてください」
楽しそうに笑みを浮かべて、紗奈は夜斗にピッタリ体をくっつけた
「これができるのは、私の特権です」
「そうだな、求めてくる人がいないし」
「そこまでいくと刺されますよ、お兄様」
「なんでぇ…」
夜斗が肩を落とすのと、紗奈の不意打ちは同時だった
「!?!?!?」
「おやすみなさい、お兄様」
紗奈は笑って、夜斗にしがみつくようにして眠りについた
夜斗は紗奈の肩の上から自分の腕を通し、自身の唇に触れる
紗奈の唇が触れた、自身の唇に
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