第6話
夜斗は奏音と唯利を家に送り、自宅に一度戻った
そしてバイト仲間に電話をかける。LIMEのグループ通話という機能を使ってだ
「もしもし?冬風だけど」
『お疲れ様だね。時津風だよ』
『おつかれー。アクシーナだよ』
「急ですまん、今から明日の夜まで暇か?」
『んー…シフトはないから暇だよ!』
『僕もシフトはないから特に用事はないけど、何かあったのかい?』
僕、という一人称を用いる女子は
容姿はボーイッシュで、髪は短く服もスカートよりズボンを好んで着ている
もう一人、テンションが異様に高い女子は、ロシアと日本のハーフであるという、アイリス・アクシーナ・アンデスティア・
髪は長く亜麻色で、目が青い。出るとこは出てしまるところはしまった体つきで、服の好みは佐久間とほぼ真逆だ
「ああ、実は俺の親族がやらかしおってな。明日、立食パーティーとやらがあるらしいんだ。参加する気はないか?」
『いいけど、服ないよ?よくてワンピースがあるくらいかなぁ』
『僕もないね。スーツもどきみたいなのはあるけども』
「着るものとか移動手段はうちの親族の方で用意させる。時間だけあればタダ飯だ」
『いいね。珍しくバイトがないし、そのようなイベントを逃すわけにもいかない。僕は参加するよ』
『私もいこっかな。いつ出発?』
「あいつらから来たメールによると、2時間後くらいにそれぞれの家を回ることになってる」
『あー、じゃあお化粧する時間はあるね。また時間前に電話ちょーだい』
「了解。佐久間はどうする?」
『僕も薄化粧くらいするさ。僕にも来る前に連絡をお願いするよ』
「おう。じゃあ、頼んだぞ」
伝達を終え、ため息をつく
そして同じことを妹である
「紗奈、行ける?」
「はい、お兄様。ですが、少々お時間をいただきたいのとどこに行かれるのですか?」
「夜暮の親父が、パーティーのこと忘れてたらしくて、夜暮から参加要請が来た」
「あの人なら忘れるのも無理ないですね。わかりました、すぐに支度致します」
「すまんな」
あと四人、といったところで夜斗は自分の交友の狭さを呪った
もう誘えるような人間が、友人の中にいない
「あ、いる」
三人も確保可能であり、しかも夜暮や冥賀を話だけとはいえどもよく知る、夜斗の親友とも言える存在とその兄妹が
「…バイトしてないといいんだが…」
【
【おう、今日はバイト休みだ】
【よし、じゃあ
【お、おう。わかった、すぐ行く】
【すまん】
夜斗はLIMEの返信を終え、自身の支度に取り掛かった
冥賀のメールを十枚印刷し、そのうちの一枚を手に取る
【緊急要項。黒縁家より冬風夜斗殿】
始まりにこう綴られ、彼らにとっての公的文書であると定義されていた
【拝啓、冬風夜斗殿。初秋を迎え、貴殿におかれましてはますますご健勝のこととお喜び申し上げます。
緊急ということで早速本題に入らせていただきます。本日、我が黒淵家当主より、明日九月二十日に会食があると連絡がありました。突然のことで大変恐縮ではございますが、友人方をお連れの上ご来場ください
交通費及び衣装はこちらで手配いたしますので、宿泊の用意をしていただいた上で、黒淵冥賀までご連絡をお願いいたします】
(要約すると、明日立食パーティーのためにホテル取ってくれるみたいだな。軽い修学旅行みたいなもんだなぁ)
そんなことを思いつつ、一泊分をかばんに詰めていると、夜斗は異変に気がついた
(…夏恋。周囲の人間の気配を探知)
『はい。現在確認される生体反応を人間に限定して検索します。………検索結果を報告しますか?』
(頼む)
『冬風家内部に主様と妹様、境内にて主様のお父様と、言い争う白鷺大貴が居ます』
(まずい!)
夜斗はポケットからスタンガンを取り出しつつ、境内にむかった
夜斗の家はそれなりに有名な神社だ。それ故に、訪問客も多い。しかし
(白鷺だと、何をするかわからん!)
夜斗は境内に飛び出し、周囲を見渡した
「親父!」
「夜斗か。この者はなんだ?来るなり、冬風夜斗の妹を寄越せとのたまう」
「俺のクラスメイトだ。警視総監の息子でもある」
「ふむ。であれば、手荒に扱うのはよくないということだな?」
「問題ない。時雨桜一族に手が回ってるらしいから…ほら」
階段を登って現れたのは、黒服に包まれた男たちだった
彼らは時雨桜一族の証である桜のバッチを襟につけている
「…彼らは…時雨桜一族の黒服か」
「ああ。冥賀が依頼したらしい」
「なるほど。とりあえず気絶させたから、対処は任せよう」
夜斗の父は、黒服の彼らに礼をして、白鷺を引き渡した
がんじがらめにされたのを確認して、父が指を鳴らすと意識を取り戻した
「なんだよ、これ…!おいお前、何をした!」
「体内霊力の流れを乱した、などと説明しても理解できる脳はないだろうに。帰れ。すみませんが、よろしく頼みます」
父が深々と頭を下げる
暴れようとする白鷺だったが、かなり強めに縛られているのか動くことはできないようだ
そして黒服たちと入れ替わりで、霊斗たちが階段を登って敷地に入ってきた
「…夜斗、あれなんだ?」
「クラスメイトだ。一応な」
苦虫をかみ潰したような顔をした夜斗が、静かに答えた
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