第5話

夜斗は自然と、流れるような動作で腕時計型カメラに手を伸ばし、動画を取り始めた

「何をしている、白鷺」

「っ!冬風!?」

「あら、大胆なのは嫌いじゃないわ。好きな人からのアプローチならね」

奏音が冷めた目で白鷺を見る

白鷺は唯利の机に体を伏し、その舌で舐める直前だったのだ

「…ったく。少しは誠実かと思えば…」

「ふ、ふん。お前らが何を言ったところで変わらない!」

「まぁそれは事実ではあるしな。それだけ信用がある…かもな」

「かもじゃない、事実だ!」

「…夜斗、この人は壊してもいい人?」

「だめだわ。あとでじっくりやる時間をくれてやるよ」

夜斗は殴りかかってきた白鷺を背負投しつつ言う

気絶した白鷺を閉め出し、教室に鍵をかけた

「…今日金曜日だっけ?」

「そうよ。明日は休みね」

「やることねぇな。なんか面白いこと起きねぇかなぁ…」

夜斗は生徒玄関に向かいつつ呟いた

夏恋がそれに同調する声を上げる

「…んぁ?着信だ、少し待て」

夜斗は靴を履き替えてすぐ、不在着信に折返し電話をかけた

相手は夜暮…と、冥賀だ

とりあえず夜暮に、と操作していると、折り返すより先に再着信が来た

「もしもし?お前ら今日会食じゃ…」

『やっと出たか!すまんが、ちと来てくれ!』

「え?今?」

『今だ!明日の立食パーティーに間に合わせねばならん!』

「お前さては、友人誘う系のパーティー忘れてたな?」

『親父がさっき思い出したように言ったんだ!10人くらいかき集めてくれ!費用はうちですべて持つから、頼んだぞ!』

プツッと音を立てて電話が切れた

と同時に冥賀から着信が入る

「もしもし?」

『冥賀です。大方夜暮から聞いているかと思いますが、友人を10人ほど集めてください。明日夕方6時より、立食パーティーが執り行われます。参加してほしいんです』

「一応言っとくが、服なんざ神事用しかないぞ」

『服や移動手段はお任せを。全て手配してあります。友人というのも、僕と夜暮を知らなくても構いません』

「あー…。ちと待って」

「どうしたのよ」

「明日暇?冥賀が来いって」

「私は構わないわ。唯利もなの?」

「ああ。人数合わせだからな」

「私も問題ないけど…」

「待たせた。とりあえず三人は確保したぞ」

『君と九条さん、桜嶺さんですかね。あと七人お願いします』

「うい」

通話が終わり、ため息をつく夜斗

そして七人を今日中に集められるかと言われると…そうでもないのだ

「…何があったの?」

「どうやら冥賀の親が、明日の立食パーティーのことを忘れてたらしくて、冥賀や夜暮に伝わってなかったんだと。んで友人参加させるやつだから、今焦って人をかき集めるらしい」

「事件だね」

「…あと二人は確保できる…けどなぁ…」

夜斗はまた深いため息をついた

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