第4話:鶴の恩返しを○○○が書いたら
どんどんと激しいリズムを刻みながらビートを効かせつつドアをたたく音がするので「誰であろうか? WHO?」と思ったのであるが、立ち上がり玄関までいくのが億劫である。とにかく単に嫌なのでなんとなく座って鹿斗して「早くあきらめてくれるぬものか」と思った。
大体に於いてこんな夜更けにやって来る者は胡乱であり不審者であるのだけど、いつまでたっても戸を叩く音がなりやまないので難儀することこの上なし。もしご近所の者であれば鹿斗もまずかろうか。わろしと思う。気が滅入る。
どうにもならず音は鳴り止まぬのだから倦怠をひきずりつつも玄関にいきオープンザドアする。つまり僕は出たわけなのだけども、果たしてそこにいたのは不審者ではなかったのであるから、これはこれで吃驚なのだけども、不審者で無いならば知っているか知人なの?ご近所の人なのというとそれも違っていて、なにしろそこにいたのは美しい女であったわけだ。こんな美女が家にやって来るわけがないと思うのだけど、もっとよく思って考えてみると僕には家を訪ねてくる知人もおらず近所の人もおらず、完全に社会から隔絶されているというか僕が社会を隔絶しているのですからね、おほほほと思う。
「このような夜分に申し訳ありませぬ」と女はいった美女が、美女のように。
どうにもおかしいと思う。なにがおかしいのかというと女が美しく、これは「僕は幻覚をみているのではなかろうかね」といみじく思うのだけども、不審者ではありえず、彼女を不審者というのなら僕は「それは違うよ君」と謂うであろうくらいに美麗。なので問題は僕が見ている美女は誰なのかということになるのだけども黙っていると女は「ご恩返しに来ました」といきなりほざきました。しかしながら全く記憶になくこれも酒の影響で記憶がわちゃになっているのではないかと思うのだけども、思うだけで何の解決にもならぬ。
美女はご恩返しに家に住まわせてくださいと宣うのである。
「え、ええ? それはね、君、僕も若い男であるし」と下卑た劣情を隠しながらそんなことを言ったりするしかないのである。したところ女はそれでもよろしゅうございますということで家に上がってきただけではなく「嫁にしてくださいまし」と抉るように食い込んでくるというか踏み込みが鋭い。だもんで嫁にした。
とかく美しい女というのは鑑賞専用であり実用性の面ではどうかなと思うことがケースとしては多いのだろうけども考えてみれば僕は語れるほどのケースを知らないので落ち込む。死ね。死なすと思う。弱者に厳しい社会に対し。
僕の嫁となった女は機織をして美しい布を
だもんで覗かないでいたのだけども「なんでかしらん」というような思いがむくむくと大きくなってくると「これは、あな恥ずかしいのか知らん」と思うと機織がはつかしいとはもしかしたらござっているのではいか。僕の嫁はもしかしたらござっておって、ござっているから僕のところに嫁に来たのではという想念がいみじう大きくなってくるのだからたまらん。いとわろし。しかもなんとなく嫁が労働の日々において顔色そのものが泥水のようになってくるのである。だから僕は覗いたのである。したらそこで鶴が機を織っていたのだから魂消た。酒飲みたい。
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