第3話:シンデレラを○○○○が書いたら

 この物語が始まったとき、僕はシンデレラであったし、それ以外の何者でもなかった。

 僕はやれやれと掃除道具を手にする。かまどの灰の掃除、今日二回目の掃除だ。

「シンデレラ」

 かまどを掃除しながら目線を上げると、継母がいた。僕は深いため息をついて手を止める。

「かまどの掃除は終わらないのですか」

「ええ」

 何度も繰り返した会話であり、これはこれからも繰り返されるのだろう。

「早く終わらせて、こんどは部屋の掃除よ」

「また掃除?」

「そうよ、何度でも掃除をするの」

「何度でも? いったいいつ掃除をおわらせればいいんだ?」

「分からないわ」

 継母はいぶかしげに僕を見る。

 やれやれ、それは自明のことだった。

 夏に飲む冷えたビールが美味いのと同じだ。

 そして僕は掃除の終わりが分からない。

「どこまで掃除すれば満足するのかな?」

「決して満足しないわ。100%の不満が存在しないように100%の満足も存在しないの」


 加速する時間が急停止し、多釈可能な世界の中で新しい夢と古い夢が重なり合い、積層した世界のメタファーを露とする。

 僕はシンデレラとしてその様な世界で生きて行くことしか出来なかった。

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