36《お姉ちゃんのお見舞いに来ました 》

 病院内に入ると、ツンとした消毒液の匂いが鼻を刺激した。病院に来るのはいつぶりだろう、僕も母親も病院嫌いなので極力行かないようにしている。


 白く静かで清潔な。

物珍しげに設備を見ていると僕を無視して、セリナは行き慣れているかのように受付に向かう。


「こんにちは。突然でごめんなさい、お姉ちゃんのお見舞いに来ました」


「セリナちゃんこんにちは。久しぶりね。分かったわ、セリカちゃんなら前と同じ部屋にいるからね」


わぁ、すごいな、お姉ちゃんで通じるんだ。

何てのんきに眺めていると、


「あら、そこの男の子は彼氏?」


「………はい?」


「違いますッ!!!!あんなの、全ッ然そんなんじゃないですッ、撤回してください!!」



 看護師さんによる衝撃の爆弾発言。そしてあまりにも強すぎるセリナの悲鳴のような全否定。


 いやもちろん、そんなんじゃないけどそこまで否定する?撤回まで言っちゃう?ねぇ。


 刺されたような胸を抑えて僕は呻いた。

ううう、心に刺さる………。


「あらあら」


 看護師さんは柔らかく言って微笑んだ。

……絶対に勘違いしている。


 動揺しつつセリナが僕を睨み、ついてきなさいと罵声を飛ばした。ここは病院だぞー静かにー。

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