30《お姉ちゃんから、くまをもらったのっ!?》
バチンッッ!!!
頬が熱かった。
僕は茫然として頬を抑え、目の前の少女を見る。
殴られたという事を認識するまでにたっぷり10秒。…………えーとこれはどういうこと?
平手打ちをかました当の本人は、悪びれもしていない。露ほどを僕の事を信用していない様子に無性に腹がたった。
「いやでも、僕はセリカと会ったんだ!一緒に焼き芋も食べたし、勉強もした!そうだ、それにくまをもらったんだ!」
それまで深い軽蔑と蔑みのこもった視線を向け、明らかに冷笑しながら僕の事を眺めていた彼女は、僕がくまと言った瞬間、驚いたように目を大きく見開いた。
その動作はあまりにも自然で、やはりセリカとそっくりだった。
「……くま……?お姉ちゃんから、くまをもらったのっ!?どんなやつっ!?」
先程の驚くべき冷徹っぶりから一転、食い入るように僕に詰め寄る。
ちちち、近い………っ!!
その変わりように一抹の恐怖を感じながらもくまの特徴を説明する。
――……赤いチェックのキーホルダー付きのくまだ、と。
それを聞いたセリカ妹は、膝から崩れ落ちかけた。慌てて支えると、真っ白な顔に何やら驚愕の表情を張り付けているのが分かった。
色を失った唇は「そんなはずはない」と呻くように微かに動いていた。
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