28《………セリカっ!!》
慌てて周りを見回した、その時。
――……目が、合った。
一瞬、空気の流れが止まったような気がした。周りの音も全て消え、ただただ僕は彼女を見ていた。彼女も僕を見ていた。彼女の目は、いつもと同じように真っ直ぐだった。
「………セリカっ!!」
我に返り、咄嗟にセリカの名前を呼ぶ。
セリカは怯えたようにあとずさった。
――……待って、行かないで。
僕は君と話したいだけなんだ。
君の無事を確かめ、感謝を伝えたいだけなんだ。
君が何者でも良い、僕は君が好きだ。
周りがざわめく。
セリカの隣にいた友達が、ぎゅっと彼女の手を握って僕を睨み付けた。そして耳元で何かを囁いている。
「あの人、知り合い?」
その言葉に、セリカは一瞬怪訝な顔をしたがすぐに意を決したように顔を上げた。
セリカの髪の毛は短くなっていた。
前までは腰ぐらいまであったのだが、今は肩の辺りで切り揃えてある。だが、僅かに猫っ毛なところは同じだった。上半分だけ結んである、ハーフアップという結び方(彼女に教えてもらった)も、前髪の雰囲気も、セリカだった。
良かった、セリカはちゃんといた。生きてた。僕だけの想像の友達では無かった。
――……あの写真は、風間の嫌がらせに違いない。奴はさぞ気持ち良かっただろう、僕が思う壺に嵌って。セリカもさぞや僕に腹立たしく思ったのだろう。急に青い顔をして何者?とは無礼全万だ。怒ってそのまま帰ってしまったんだ。絶対そうだ。
――……じゃあ何でセリカはあのとき、ありがとうなんて言ったの?
心の中に湧き上がる疑問。
気付かなかったふりして小さく首をふる。
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