25《ねぇ、もう君は弱虫じゃないよ》

 恐ろしく長い時間が立って、セリカが僕からするりと離れた。


何歩か歩いてから、ゆっくりと僕のことを振り返る。


「…セリカ?」


問うが、セリカは答えない。

悲しげな瞳で僕の顔を見つめた。


また、時が立って。



「ねぇ、もう君は弱虫じゃないよ」


そう言って、


「ヒカルと話すのは楽しかった。ほんとにほんと。風間くんとの戦いはまだ続くだろうけど、ヒカルなら大丈夫。私が保証する」


……脳が認識することを拒んでいた。セリカの言っている意味がわからない。どうして、過去形なんだ。まるで、まるでこれじゃ、


「今までありがとね、ヒカル。さようなら」





お別れの言葉みたいじゃないか――。




 言うが否や、セリカはさっと踵を返した。

そのまま、木立ちの向こうにその小さな背中が消えた。


「…え?あ、ちょっと待ってっ!?」



呆気にとられたが、僕はすぐに追いかけた。


 だが、本来すぐに追い付くはずの距離なのに、辺りには誰もいなかった。




…僕は、完全に一人だった。






星は今日も、きらきらと輝いていた。

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