25《ねぇ、もう君は弱虫じゃないよ》
恐ろしく長い時間が立って、セリカが僕からするりと離れた。
何歩か歩いてから、ゆっくりと僕のことを振り返る。
「…セリカ?」
問うが、セリカは答えない。
悲しげな瞳で僕の顔を見つめた。
また、時が立って。
「ねぇ、もう君は弱虫じゃないよ」
そう言って、
「ヒカルと話すのは楽しかった。ほんとにほんと。風間くんとの戦いはまだ続くだろうけど、ヒカルなら大丈夫。私が保証する」
……脳が認識することを拒んでいた。セリカの言っている意味がわからない。どうして、過去形なんだ。まるで、まるでこれじゃ、
「今までありがとね、ヒカル。さようなら」
お別れの言葉みたいじゃないか――。
言うが否や、セリカはさっと踵を返した。
そのまま、木立ちの向こうにその小さな背中が消えた。
「…え?あ、ちょっと待ってっ!?」
呆気にとられたが、僕はすぐに追いかけた。
だが、本来すぐに追い付くはずの距離なのに、辺りには誰もいなかった。
…僕は、完全に一人だった。
星は今日も、きらきらと輝いていた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます