23《……セリカ、君は、何者なの》

 裏山につくと、やっぱりセリカはそこにいた。


「ヒカル、今日は早いね?……ってどうしたの、真っ青だよ?」


 驚いたようにセリカが立ち上がり、僕の額に手を当てた。


…外にいたせいで手はひんやりと冷たかったが、柔らかな感触はやはり生身の人間だ。


 さらさらとした長い髪の毛、寒さのせいで少し赤くなった頬、長い睫毛、大きな瞳。

頬の産毛さえも、マフラーの僅かな毛羽立ちさえもセリカがそこにいる事を証明していた。


「うーん、熱はなさそうだけど……何かあったの?」


何も知らないセリカは無邪気な表情で首を傾げる。


僕だって意味がわからない。

あの写真がわからない。


僕の理性は風間の悪戯だと主張している。当たり前だ。僕以外にセリカが見えていないというのはあまりにも非現実的だ。





でも。





 答えない僕にセリカは不思議そうな顔をする。座るように勧められるが、僕はそれを無言のうちに拒んだ。


一層怪訝そうな顔をするセリカに、僕は意を決して問い掛けた。






「……セリカ、君は、何者なの」






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