21《ねえねえ、おめーの彼女はどこにいんだよ?》

次の日。


僕が教室に入ると、明らかに雰囲気が変わった。今までにもそんな経験は腐るほどあるが、今日は少し違った。

――……戸惑いを隠せない雰囲気。



 一瞬怪訝に思うが、黒板を見て謎はすぐに解けた。



「おっはようメガネ。いや、敬意を込めて霊能者って呼んだほうが良いのかな?」



 黒板中に貼ってあったのは、裏山で過ごす僕を写した写真。中心には、呆れるほど拡大コピーした模造紙が貼ってある。







……そんなことよりも、







「これは、どういうことだよ!?」


……胸が、冷えた。


昨日飲んでいたココアの缶と単語帳を持ち、談笑している写真の模造紙。その写真には、僕しか写っていなかった。


いるべき位置に、セリカの姿はなかった。



その写真だけでは無くて、すべての写真は僕だけだった。一緒に教科書を眺めている写真。一緒に笑い合っている写真。一緒に空を見上げている写真。





僕だけしか写っていない写真。






 写真は、たっぷり余白を明けて撮られている。セリカが昨日座り、笑い、勉強し、空を見上げていた位置も写っている。

が、そこにセリカはいない。



「いやいや、どういうことか聞くのは俺の方だよ、メガネ君。お前さあ、最近おかしいなあってずっと思ってたんだよね。急に反抗期入っちゃったし、いちいちうぜーし。だからさ、昨日こいつらとお前の後を尾けていったらこーんなことしてた訳!ねえねえ、おめーの彼女はどこにいんだよ?お前には、視えてるんだろ?一人でにやにやしたりしゃべったり、ココア飲んだり教科書覗いたり。完ッ全にやばいやつだな」


……意味が、分からなかった。

なぜセリカはいない?風間には見えていない?いや、風間だけではない、『こいつら』と呼ばれた他の人にも見えていなかったようだ。取り巻きたちの怯えたような表情が物語っている。演技ができるような器用な奴らではない。


「ふざけんな、くっだらない嫌がらせすんなよ!」


――……セリカは、他の人間には見えていない。


 精一杯虚勢を張るが心の中では悲鳴を上げていた。頭の中で、そんなはずはないと必死に念じていた。

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