11《……立ち向かえだなんて、無責任だ》
「……立ち向かえだなんて、無責任だ」
セリカが何か諭そうとして息を吸い込んだ音がした。僕は、やっぱり顔を上げられないままだ。そのまま、かぶせるようにして呟く。
「分かってる。そんなこと分かってる。僕が弱虫なことも、皆分かってる。でも、僕は怖い」
「無理だよ、そんなこと。できるなら苦労しない。それに、」
「君は、いじめられたことがないからそんなこと言えるんだ。そりゃあ、君は何でも言えるよな、僕じゃないから。僕がもっといじめられても君には関係ない。痛くも痒くもないんだろ?僕がどんなに辛いか、やっぱりわからないんだ。それなのに、もっと苦しめという。ほんとに、ほんとにそれで風間はやめるの?…もっといじめられるだけってことが、どうして分からないんだよ」
怒涛のようにこみ上げる黒い言葉。それを吐く僕は何て醜いんだろうとぼんやりとした頭で考える。
でも僕はもう止まることはできない。セリカに1度も口を挟ませる機会を与えずに、一気に言い募る。
そして、そのままゆらりと立ち上がり、一目散に走って逃げた。
……ちらりと視界の隅に入ったセリカは、何か言いたげな、そして、酷く傷ついた顔をしていた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます