8《ヒカルって、面白いね?》
「ほんとにそう思ってるか?ほんっとにそう言い切れるか?」
「…う…ん…。いや、そういう子なのかもよ、風間くん…?たぶん………?」
「…おまえ、頭脳派の看板下ろすか?その制服脱いだほうがいいぞ、絶対」
セリカが着ているのは、僕たちの街で言わずとしれた名門女子校・聖マリアンヌ学園のセーラー服だ。
高倍率の上に試験は超難関。県でも1位、2位を争うほどの進学校である。
そこに通っているということは、当然僕よりは頭が良いはずだ。僕の高校も偏差値が低い訳ではないが、それでもセリカの高校には劣る。
「やだよ〜寒いもん。凍えちゃうよ」
「比喩表現だよっ!!僕は変態かっ!?」
本気にしたらしく、大袈裟に身をよじるセリカに叫ぶ。まるで俺が変なこと考えてるみたいじゃないか…。誠に遺憾だ。なーんてどこかの政治家のように頭の中につぶやいてみる。ふと隣を見ると、セリカは鳩が豆鉄砲を食らったような顔をしていた。
その素っ頓狂な顔を見てると、なぜか笑いが漏れてきた。おかしいな、今日も神経をすり減らしたのに。今日も吐きそうな思いをしたのに。こんなにも苦しかったのに。
それでもククッと漏れ出る声を押し殺して笑うと、セリカもつられて笑い出す。
「あははははっ」
からりと晴れた朝のような笑い声。
湿った気持ちを吹き飛ばすような底抜けな笑い声は、僕の心をなぐさめてくれた。
「あーあ。もう、ほんとヒカルって、」
笑い過ぎて目に滲んだ涙を華奢な指で拭いながらセリカが呟いた。
「ヒカルって、面白いね?」
…同じ言葉を、今朝にも聞いた覚えがある。
でも、そのニュアンスは全く違う。
そのことに微かに驚きながらも、心が暖かくなった。
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