第79話 残酷な運命の神様
「俺、加恋のこと、好きだったんだな」
神之木さんの言葉が、私の胸を貫く。
神之木さんの痛いくらいの叫びが、私の心に届く。
私の心が誰かに握られているみたいに、痛かった。
――あれ?
神之木さんが涙をこぼす。
それと同時に、神之木さんは笑っていた。
まるで胸をナイフで刺されたみたいに痛そうに、だけど好きな人の胸の中で眠るみたいに、幸せそうに。
――あれ?
私の胸が、また痛くなる。
それこそナイフで刺されたみたいに。
その傷口から溢れてくる、温かなもの。
――あれ?
嘘でしょ?
……でも、私は気づいてしまった。
この胸の痛さが、私に気づかせてしまった。
あぁ、なんでこのタイミングで私は――
――恋に落ちてしまったんだろう。
それはひどく残酷で。
私のこの思いは間違いなく叶わないと決まっていて。
――この初恋は、痛いだけ。
なんでだろう?
私が見てきた物語はみんなハッピーエンドなのに、なんで私の物語だけバッドエンドが決まっているんだろう。
ひどく現実は残酷だ。
だけど私は現実に飼いならされたただの人間で。
この気持ちから抗うことができない。
――私は神之木さんが好き。
溢れてやまないこの思い。
でも涙は零れない。
私は温かな眼差しで、神之木さんの頭を撫でる。
痛い。
痛い痛い痛い。
だけど、だけど――好き。
痛いくらいに――好き。
「神様って、運命って――残酷ですね」
でも恨んだりはしない。
この好きだという初めての気持ちは、私の中で最も大切なものだから。
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