第48話 メインヒロイン光さん

「チュンチュン」


 そんな小鳥のさえずりで目が覚めてしまうほど目覚めがいい朝。

 そういえばちょっとだけ朝チュン憧れちゃうよね、と無駄なことを開口一番に思ってベッドから抜け出した。


 いつもより二割増しでカッコつけてテキパキと支度を済ませていく。

 何せ今日は、隣の家に住む幼馴染、加恋と水着を買う日だからである。


 もう絶対に恋愛関係に発展しないとはいえ、俺が女子と、しかも美少女と水着を買いに行くとは……今頃親族はスタンディングオベーションしてるだろうな。


「ふふっ」


 俺、気持ち悪いな。

 

 今の微笑みは反省。次回から気をつけよう。


「さてと」


 今日出かけるために翔に選んでもらった服を身に纏う。

 我ながらなかなかに決まっているな。


 そしてこの夏のために密かに練習を重ねていたヘアセットも行う。

 正直こういうちまちました作業は苦手なのだが、こちらも翔大先生の講座を受講済み。

 他人に見せても恥ずかしくない出来にはなったと思う。


「よしっ。行くか」


 そうカッコつけてみるが、行くのは五メートル隣の家。

 いやぁ、こう振り返れば恥ずかしい。


 だが突き進んで、インターホンを押す。


「俺です」


『あぁー律君! おはよぉ~』


「おはようございます」


『今開けるわね~♪』


 朝からやけに上機嫌の茜の母、光さんがドアを開けて出迎えてくれた。

 相変わらずのフリフリエプロン。さすがメインヒロインだ。


「いらっしゃい。もうご飯できてるわよぉ~」


「ありがとうございます」


 光さんに手招きされて、家の中に入る。

 

 大体の食事は、光さんの計らいで紅葉家で食べることになっているのだ。

 本当にありがたい。光さんマジ聖母。


「今日加恋とデートなんでしょ?」


 リビングに向かう途中、そんなことを突然言われる。

 もちろん最高に可愛い笑顔を見せて。


「デート……ってわけではないですけど……まぁ」


「あらあら……キスくらいしちゃいなよ?」


「光さん⁈ 相手はあなたの娘ですよ⁈」


「そろそろ女の子になってほしいのよねぇ」


 ニヤニヤ顔を俺に向けてくる光さん。

 ほんとこの人とんでもないな……。


 ははは、とぎこちない笑顔を浮かべて、その場をやり過ごす。

 終始ニヤニヤしていた光さんが恐ろしかったけど、ほんと可愛かったのでよし。マジで美人。


 リビングに入ると、そこには寝癖立ちまくりな加恋の姿があった。

 気だるげに目を擦りながら、トーストにかじりついている。


「昨晩は楽しみに過ぎて寝れなかったのか?」


「ふへぇ⁈」


 背後からそう声をかけると、加恋が肩をビクッと震わした。

 驚きすぎじゃね? ってか、俺のこと睨み過ぎじゃね? 親の仇なの?


「おはよう」


 そう挨拶しながら、加恋の横に座る。

 どうやら怒っているようで、加恋がジト目で俺のことを見てきた。

 

「……ふんっ!」


 挨拶もしてくれない始末。

 思春期の娘を持った父親の気分だ。


「それは律のことでしょ?」


「それ?」


「きょ、今日が楽しみ過ぎて寝れなかったってやつ」


「俺はばっちり」


「ばっちり?」


「寝た」


「……うがー‼」


 その言葉は何年も加恋のことを見てきた俺でも初めてだゾ……。

 

 新しい幼馴染の到来を感じた朝だった。



―――――――――――――――――――――――――――――――――――――


更新がストップしてしまい、すみません。

僕としてもこの作品は僕にとって大切な作品で、絶対に完結させようと思っていました。

なのでこれから毎週日曜日に更新していこうと思います。


こんなにも期間が空いてしまい、すみませんでした。

これからもこの作品もとい本町かまくら作品を応援していただけたら嬉しいです。

よろしくお願いします(o^―^o)ニコ

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