第39話 天使はドリンクバーを欲している
翔と出かけた翌日。
俺は夏休み終盤になってからが宿題との戦闘本番だと思っているので、夏休み前半は全く手をつけない。そのため、特に何かをすることはなく適当にゴロゴロして一日を過ごした。
そして白幡さんと出かける日。
翔に選んでもらった夏らしいカジュアルな服装で待ち合わせ場所に向かった。
白幡さんとの待ち合わせなので、待たせてはいけないと思い十分ほど前に着くように家を出る。
しかし待ち合わせ場所についたころには白いワンピースに身を包んだ、ほんとに天使にしか見えない白幡さんがすでにいた。
駅前なので視線を多く集めている。
朝から路上ライブをして今にも撤退させられそうになりながらも歌うのをやめないアマチュアミュージションも、思わず演奏をやめて目を見張っていた。
あまりのポンコツぶりで最近忘れてたけど、白幡さん超が付くほどの美少女なんだよなぁ……。
「あっ神之木さーん!」
無邪気にビュンビュン手を振ってくる。
おいそこの知らないおじさんたち。なぜあなたが手を振り返すんだ。めっちゃにやけてるし。アイドルじゃねーぞ。
「おはよ、白幡さん」
だが俺は昔から白幡さんと同じくらい美少女である加恋と行動を共にしていたため、こういう視線は慣れていた。
「おはようございます! それにしても待ち合わせ十分前なのに早いですね」
「それはこっちのセリフ。どれくらい前から来てたんだ?」
「えーっと……一時間前くらい?」
「はやっ! どうしたんだよ」
「少女漫画のヒロインが、デートの待ち合わせ時間の一時間前から待っていたからです」
「何でもかんでも少女漫画お手本にすな! あれはそういう演出だ!」
「そ、そうだったんですか⁈」
じゃなきゃ待ち合わせ時間設定する意味ないから。
ほんとに世間知らずだなと思う。まぁ友達いたことないって言ってたし、待ち合わせをすることが今までなかったのかもな。
こういうことも、教えていくか。
「まぁでも、待たせてごめん」
「いえいえ! 私が早く来すぎただけみたいなので大丈夫です! さっ、早くファミレスに向かいましょう! この時間ならすいてるはずです!」
「そうだな。よし、行くか」
「はい‼」
ファミレスに行くというだけでこんなにも目をキラキラと輝かせる女子高校生が居るだろうか。
でもそこが白幡さんの魅力でもあると思うので、失われてほしくはないと思うのだけど……ドリンクバー見てはしゃぐのはやめようね!
俺、凄く恥ずかしいから!
そんなこんなで、さっそく駅前のファミレスに向かった。
案の定、今は朝と昼の境目みたいな時間帯なので客は少なかった。
それに白幡さんは幸運の持ち主なのか、またドリンクバーの目の前のテーブルになる。
「うわぁ夢です! 夢が詰まったドリームマシーンが私の目の前にありますよ! 神之木さん!」
「ソダネー」
本日初回のドリンクバー撮影会。
あかん。ほんと、白幡さんが変人にしか見えない……いや、変人なのに間違いはないのだが。
「まだ昼時じゃないけどがっつり頼んじゃう?」
「そうですね! 今日のファミレスのために昨晩からご飯を抜いているのでお腹ペコペコです!」
「ファミレスにかける思いが熱すぎる……」
ファミレスにフードファイトしに来てるの白幡さんしかいないだろ。
「今度こそ元取ります!」と言ってやる気満々。もはやそういうゲームになってきている。
「すみませーん」
店員さんを呼んで、俺はカルボナーラ。白幡さんはミートスパゲティを注文する。もちろんドリンクバーも頼んだ。
白幡さんが興奮気味に、「ど、ドリンクバーください!」と言って店員さんも若干引いていたが、「可愛いなこの子」と頬をぽっと赤く染めて戻っていった。
可愛ければ何でもありかよ!
来世は絶世の美女になりたいなと思う律だった。
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