第29話 テストの終わりと夏休み始まりの予感
その後、テストまでの時間はあっという間に過ぎていった。
朝の加恋とららの修羅場も、なんだかんだ回数を重ねると落ち着いてきて、今では普通に話している。でも一日に一回は必ず言い争いが起こるんだけどね。
ほんと仲がいいのか悪いのかわからん。
それにたまに俺に関することでマウント合戦をしているから、ほんとこいつらは何をどうでもいいことで争っているんだと疑問に思う。
総合して、朝の登校は謎。
さらに周りの反応として、ららと加恋が一緒に登校していて、なぜだか俺がその二人についていっているというデマ情報が拡散。
結果身の程知らずと陰でささやかれるようになった。
この一件を踏まえて俺は、周りの目を気にしないというスキルを身に着けた。
ほんと、嬉しいのか悲しいのかわからない。
例えるならば、モンスターから逃げまくってたら世界一の敏捷性を手に入れてたみたいな感じ。なんかのタイトルかよこれ。
白幡さんはどうやらテスト勉強に力を入れているようで、最近では毎晩、『私絶対に紅葉さんに勝ちますから!!』というメールを俺に送ってくる。
ほんと、俺に言っても点数は伸びないと思うんだが。
そんなこんなで時間は過ぎていき――
夏休み前のラスボス、期末テストを迎えた。
***
「今回も又加恋ちゃんが一位だったね。おめでとう!」
「ありがとう! でも今回は割と二位と接戦だったわ」
期末テストが終わり、順位表が廊下に張り出された。
それを今、俺と加恋と神カップルの四人で見に来ていた。
結果は先ほども言った通り加恋が一位。惜しくも白幡さんは二位だった。
ちなみに俺は五十位とそこそこ健闘。すごい非効率的なのだが、徹夜を繰り返して根性で点数をもぎ取ることに成功。でも、もうやりたくない。今すぐ寝てぇ……。
「いやでも今回はトップの二人がすごすぎるわ。俺も頑張らないとな」
「いやそういう翔は普通に五位とかいうめっちゃいい順位じゃねーか。羨ましいぞ」
「でも音羽は四位。今回は負けたよ。さすがは俺の彼女だな」
「今回は翔に教えてもらったから点数取れたんだよ。翔、ありがとね」
「おう!」
ほんとどこまでもこの二人は安定している。
しかしなぜだろうか。最近この二人のイチャイチャを見ていると、『リア充爆発しろぉぉ!!!』と思うようになってしまった。
たぶん夏休みを目の前にして神カップルと言えども浮かれているからだろう。だからアツアツ感が伝わってくる。
まぁこいつらに嫉妬をしたところで、俺の夏休みに恋はないだろうけど。なにせリスタートしてからというもの、恋の出会いがなかったからな。
せめて夏休みずっと空白ってことだけは避けたいところだ。
そんなことを考えていると、先ほどまで順位表を見ていた加恋が俺の隣に来た。
「あの二人あんなにイチャイチャしてたのね。まぁもう夏休みだしね」
「そうだな。夏の魔法かかっちゃってるなあれ」
「……律はさ、夏休み予定とかあるの?」
「ないけど?」
「……だったらさ、私と……」
加恋が何か言おうとした瞬間、加恋の言葉が遮られる。
そして加恋の目の前にある人物が立ち止まった。
「紅葉さん。今回は……負けまし……んぐっ! ……た」
すんごい悔しそうな表情で、歯を食いしばりながらそう言うのは、天使系美少女こと白幡さん。拳を力いっぱい握りしめ、エンジェルスマイルを維持しようと頑張っている。
「あぁあなたは白幡新奈さんだったわよね? 今回二位の」
「んぐっ……!!」
二位という言葉が白幡さんにクリティカルヒット。
加恋も同様に負けず嫌い。二位の部分を強調したあたり、加恋の奴白幡さんをつぶしに来てやがる……あぁこれはめんどくさいことになった。
「でもまぁ今回は接戦だったわ。私が負けてもおかしくなかった」
「へっ?」
俺がなぜか間抜けた声を出してしまう。
嘘だろ? あの加恋が優しい対応をしている……?!
あいつに一体どんな変化があったというのだ。優しくなれる薬でも飲んだのか?
「まぁ次回の中間も、お互いに頑張りましょう」
「は、はい!! 次は負けませんから!」
そう言って学年トップツーの二人は順位表の前で握手を交わした。
あれ? なんか俺が知らない間に二人とも丸くなってね?
その後、なぜかその二人の様子を見たギャラリーが「おー」と言って拍手をし始め、順位表の前は拍手に溢れたのだった。
な、なんだこれ?
俺の健闘の五十位、霞む。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます