第28話 少女漫画は夢が溢れすぎている

 加恋の家から帰宅した後、俺は自室で今日買った少女漫画を読んでいた。

 正直なところを言えばテストが近いのでそれどころではないのだが……今日の夜に白幡さんが少女漫画についてメールを送ると言っていたので、俺が読んでいなかったらまずいだろう。


 まぁ一日くらい徹夜したって問題ないだろう。


 そんなこんなで読み進めていたのだが……ほんとあめぇ!!

 あまあますぎてなんか苦みが欲しくなってきたわ。めっちゃグロい漫画と少女漫画を並行して読んだらたぶんちょうどいい。

 

 そんなことをしたらもはや何読んでるのかわからなくなるけど。


「ほんとにこんな恋愛あんのかよ……」


 この物語は、主人公である少女が幼いころにある男の子と結婚の約束をしていて、高校に入学して好きになった人がまさかの幼い頃に約束してた男の子だったっていう……まぁよくある話。

 それは二次元に限るけど。


 でもこんなピュアな恋愛実際あるのかね。大体数年も経てばそんな約束忘れて身近な男の子のことを好きになりそうなもんだけどな。

 まぁそんな純粋で一途な女の子がいようもんなら、なんか可愛くて好きになっちまうかもしれないけどさ。

 

 そんな仮定に意味はないのだけれど。


 しばらくして、その少女漫画を読破した。

 正直な感想。男子高校生でも、泣けて読める。いやほんとに絶賛。とにかくこの一途で純粋な女の子が可愛いったらありゃしない。


 この気持ちを伝えたいんだけど不器用さが出て伝えられない、もどかしい気持ちを抱える少女が可愛い。そして不器用ながらもその気持ちを伝えていくのも可愛すぎる。

 

 結論、うん可愛い。

 絶対このアニメ見よう。

 なんだか少女漫画に目覚めそうな予感がしていると、携帯が「ピコン」となった。


「ん?」


 メールが届いていて、その相手とはもちろん白幡さん。


『今読み終わりました。まず第一の感想として、恋って美しいですね』


 す、すごい理解だ……これが高校二年生にして恋愛を知った女子の反応か……いや、白幡さんを一般的な反応として受け取るのは間違っているか。


『俺も今読み終わった。どうだ? 少しは恋についてわかったか?』


『そうですね。なんだか恋って楽しいものではないんですね。割と胸がキュってなるときがありました』


『確かにそうだな。恋って楽しいことばっかじゃないからな』


 これに関しては俺の経験則から言える。

 なにせ、フラれまくったからな俺。それでも、楽しいことがなかったと言われれば嘘になる。

 本当に、恋とはよくわからない。


『あと、人って恋をすると目がハートになるんですね!』


『いやそれはちがーう!!! それはただの演出だ!!』


『では背後にバラが咲くのも?』


『それも演出だ! 急に背後にバラ咲いたら非科学的すぎんだろ! 恋愛感情よりも恐怖が上を行くぞ!』


 ま、まぁ落ち着け俺。これくらいのぶっ飛んだことを言ってくるのもしょうがない。なにせ恋愛について何も知らないんだからな。

 でも……知らなすぎてバカになってないか? でも、そこがおかしくて……なんだかここまで来てしまうと面白いなと思ってしまう。


『でもなんだか私、少し人を好きになるってことが分かった気がします。恋、してみたいです』


『そうか。まぁ少女漫画と現実の恋愛は少し違うから、参考にしてみたらとは言ったけど、あんまり参考にしすぎるなよ? 現実に運命的な出会いはない』


 そうなのだ。現実はもっとさっぱりしているし、時にはドロッとしている。


『そ、そうなんですか?! でも、運命的な出会いがなくても恋はきっと少女漫画の登場キャラクターたちと同様に現実でも輝くと思います。無知な私の憶測なのですが』


『まぁそうだな。これから白幡さんが恋をしていくなら、その恋が輝くことを祈るよ』


 我ながら恥ずかしく、かつキモいことを言っているなと思っているのだが……少女漫画を読んだ後なのでどうにもこういう発言をしてしまう。

 こういうセリフ、『ただしイケメンに限る!』って感じなんだよな。

 

 あまりルックスがぱっとしない俺がいったら、言われた相手も俺もたぶん爆発するだろう。でも、白幡さんだからたぶん大丈夫だろうなとは思った。


『ありがとうございます! これからも、お願いしますね』


 正直、俺ができることは今思い浮かんではいない。たぶん白幡さんが質問してきたことに答える、もしくはぶっ飛んだ発言にツッコミを入れることしかできないだろう。

 でも、それくらいでもいいのかもしれない。


 でもとりあえずどうやって一般的な恋愛を教えていくかは追々考えていくことにして、『もちろん』と返しておいた。


「ふぅ。さて、勉強しますかね」


 少女漫画を読んで、さらに白幡さんとメールのやり取りをしていたもんだから時刻はもう十二時近い。

 だけどテストが近いので勉強せねば。


 俺はペンを走らせた。

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