第25話 とりあえず恋の教科書を読め!

ドリンクバーをしばらく堪能した白幡さん。

 どうやらコーヒーやココアがドリンクバーで作れることを知らなかったらしく、そのことを知ってからはテンションがさらに上がり……なんか暑い。


 そしてある程度落ち着いてきたところで、本題に入ることにした。


「で、恋愛について教えるんだったよな」


「はい! その前に一つだけ、質問してもいいですか?」


「ん? 質問? ま、まぁ全然いいけど」


 そう承認すると、白幡さんはコーヒーを一口飲んだ後、質問してきた。



「紅葉さんが本命じゃなかったんですか?」



 いかにも「全然変なこと言ってませんよね私」と言いたげにこちらを見てくる。

 しかし、結構変化球投げて来てるからね! キャッチャーである俺そのボール取れてないから!

 

 ただここでじっと黙っていたら、本命な感じがより出てしまうのでここでしっかりと明言しておく。


「いや別に加恋が本命ってわけじゃないよ。というかそもそもなぜその質問?」


「私今まで紅葉さんと神之木さんは付き合ってはいないけどいい雰囲気なのかなとは思っていたんです。でも今日の朝にあの可愛らしい女性と一緒にいたので……いや、もしかしたら神之木さんは一夫多妻制の支持者だったり?」


「なわけあるか! 別にそういうんじゃないから! 加恋とはまぁ……今はただの幼馴染だ。それにららに至っては俺をからかってくる後輩だよ。ほんと、そういうのじゃないから」


 まぁそう言いつつも、第三者から見ればそういう風に見えてしまうことも理解している。ただそんなに人の目を気にしてはいけないなとも思う。まぁ、思うだけだけど。実際視線集められると胃が痛くなるけど。


「そうなんですか……では神之木さんは今、好意を寄せている女性はいないんですか?」


「そうだな……いない、かな」


「そうなんですか……まぁ高校生の誰しもが恋をしているというわけではありませんしね」


「そうだな」


 まぁ実際恋したいけど。

 でも何度も言うが、そうそう出会いなんて転がっているわけではないので、諦めてから新しい恋は早い段階で見つかることはないということも分かっている。

 まぁほんと、新しい出会い求めてるけどな。その結果、なんかおかしいな方向に行ってる気がしなくもないけどな。よし、目を閉じよ。


「白幡さんはいいなと思う人……は、いたら俺に告白してこないか」


「まぁそうですね。でももし恋人になる理由として、『その人といたら楽しい』ということがあれば、神之木さんは私の中でいいなと思います」


「なっ……!!」


 きゅ、急に何微笑みながら言ってるんだこいつは!

 ほんとバカみたいにまっすぐというか、純粋すぎるというか……この子恋愛において恥じらいとかないんですかね! 義務教育でちゃんと恋教えとけよ!


「でも私、友達もいないので友達と恋人の区別がついていないのかもしれません。性別でなら区別可能ですが」


 ほんとそういうとこで冷静さ発揮するんですね……。


「まぁそうだな。というか白幡さん友達いないのか」


「いないですね。なぜか私近寄りがたいみたいで」


 確かに分からんでもない。

 俺も初対面の、何も知らなかったあの時はこの天使系美少女オーラに圧倒されたものだ。おそらく親近感がわかないのだろう。

 実際は、ドリンクバーで興奮する少しおかしなただの女子高校生なんだけどな。おっと前言撤回。かなりおかしい女子高校生だった。真実は包み隠さず言わないとな。


「まぁそこんとこはそうだな……お、俺でよければ友達になる……ぞ?」


 まさかこんなクサいセリフを生涯吐くとは思ってもいなかった。

 でも、まぁ俺なりの気持ちってやつだ。

 白幡さんは俺の言葉に顔をパーッと明るくして、俺の手をギュッと握ってきた。


「ほんとですか!! ありがとうございます! お友達……嬉しいです!」


「お、おう……ほんと俺でよければ……」


「いえむしろ神之木さんがいいです! これからもよろしくお願いしますね!」


「おう!」


 こんなことでこんなにも喜んでもらえるとは……なんだかこっちまで嬉しくなってしまう。

 ただ、これで白幡さんと俺のよくわからない、恋愛を教えるという不確定な関係に名前を付けることができた。

 白幡さんもご満悦の様子。ほんと、天使なんだけどなぁ……うん。


「で、恋愛について教えていただこうと……」


 白幡さんは俺の手から手を離し、本題に戻る。


「あぁそうだったな。でだな……正直俺が何か教えられるか不安だから……一つ提案だ」


「提案?」


 首をかしげる白幡さん。

 実は俺、恋愛を教えるということについて少しだけ考えが思い浮かんでいたのだ。

 果たしてそれが正解なのか分からないのだが、自信はアリ。そのため、少し自信ありげに提案する。




「少女漫画を読んでみたらどうだろうか」




「少女漫画?」


 そう。女子ならみんな大好き。まさに恋のバイブル。


 少女漫画――

 

 恋の教科書である。


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