第24話 初ドリンクバー記念打ち上げ
その後、今日も普通に授業をこなし、あっという間に放課後になった。
今日加恋は委員会の集まりがあるらしく、放課後を知らせるチャイムが鳴るとすぐに教室を出ていった。俺はそれを見て、「俺も行こう」と思い、鞄を持って白幡さんとの待ち合わせ場所である中庭へ向かう。
中庭に着いたころにはもうすでに白幡さんはいて、天使の佇まいでオーラをむんむんと放っていた。
俺が彼女の本当の姿を知っていなければ、背中に天使の羽が見えたところだ。今は全く見ないけど。
「白幡さんお待たせ」
「いえいえ。私も今来たところですので。では行きましょうか」
「おう」
白幡さんはやけにご機嫌。足取りが軽そう。
まるでドラ〇もんのように三センチくらい浮いてるんじゃないかと思うくらいに。でも思うんだけど、よく浮いてて歩けるよね。今それどうでもええがな。
「どうしたの? やけにテンション高いけど」
ファミレスに向かう道中、会話の種として疑問を投下。
「あぁーやっぱりわかっちゃいます?」
「うん。だいぶルンルンだから」
「そうなんですよ! 私実は、学校帰りにファミレスとか初めてで……もう憧れだったんですよ!」
体をグイっと寄せて食い気味にそう言う白幡さん。
俺の脳内で「ATフィールドが破られました! もう終わりです!」というくだらない警鐘が鳴り響く。心底思う。俺の脳内はくだらないと。
「そ、そうなんだね……まぁそんなたいそうなもんでもないと思うけどな」
「いや何言ってるんですか! あの無駄にドリンクバーで元取ろうとしても結局仕入れ値が安いから元取れるわけないのに奮闘しちゃうあれをしてみたかったんですよ! 高校生ならすべきことでしょう!」
「……白幡さんって意外とミーハーなんだな。まぁドリンクバーが流行ってるかどうかはさておいて」
「私だって一応高校生です。そういうのに憧れを抱く気持ちくらいありますよ……」
恥らいながらもそう言う白幡さんを見て、何気にこうしてみればただの女子高校生なんだよなぁと思う。天使という箔付きではあるが。
「じゃあ今日はそれを楽しむために?」
「まぁそれもあるんですが、恋愛についても教えてもらおうと思いまして!」
「……そんな俺教えられるかわからんけど、善処はするよ」
「はい! お願いします!」
白幡さんは嬉しそうににっこりと笑った。
***
高校から少し歩いたところにある、駅前のファミレスに入る。
白幡さんはファミレスに入って店員に席を案内され、テーブル席に座った現在でもなおそわそわしている。
そ、そんなディ〇ニー来たみたいなテンションになるか普通? もう常軌を逸してますあの天使。
「すごいです……すごいですよ神之木さん! ドリンクバーがあります! しかも光ってますよ!」
「そうだな。光ってるなあ」
俺はもはやこの白幡さんを受け入れることにし、適当に反応しておく。
ドリンクバーで興奮するヒロインという新しい属性が開拓されてしまったようだ。
「ドリンクバーは……もちろん頼むとして、他になんか頼むか?」
「むろん頼みません! 先ほども申し上げたように、ドリンクバーだけ頼んで何時間も居座る迷惑な客になりに来たので!」
「それちょっとディスってるよね? 高校生ディスってるよね!」
「ちょっと悪そうな方がモテると聞きました!」
「今それ関係ないから! というかそんなことしなくてもモテるだろ!」
このツッコミ二連撃で俺は疲れてしまった。最近は持久力が課題に……って、何俺真面目にツッコもうとしてるんだろ。物語の役回り気にしてんじゃねぇよ俺。
その後、白幡さんはドリンクバーのみを注文。俺はドリンクバーとポテトを頼んだ。
ドリンクバーでドリンクを入れるとき、白幡さんはやけに興奮していたのだが何とかそこを乗り切り、キラキラした目のままテーブルへ帰還。
「感激です……私高校生になったんだなって今実感しました」
「もう高校二年だけど? 遅くない?」
「そんなことより、乾杯しましょう!!」
「はいはい……」
白幡さんは本当に普段のおっとりとした雰囲気はどこえやらと言った感じでアゲアゲ。
ただ、楽しそうで何よりだ。
「では私が僭越ながら、乾杯の儀を……」
「そう言うの良いから。高校生はもっと緩い感じだよ」
「そ、そうですか……おほん。では――」
白幡さんはグラスを片手に立ち上がる。
やる気満々だなほんとに。俺もここで乗ってあげないとかわいそうなので、一旦店内を見る。客は少なそうなので、まぁいいかと思い俺もグラス片手に立ち上がる。
「「かんぱーい」」
特に何もめでたいことはないのだが、今回は初ドリンクバー記念打ち上げということにしておこう。
こうして、俺と白幡さんのファミレス会議は始まった。
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