第19話 私なりの準備期間作戦

「はぁー……」


 私は律と糸電話を強制終了させて、窓際の壁に寄っかかってため息をつく。

 今日この糸電話を作るためにわざわざ早く帰って、買い出しまで行って作ったのに、こうも簡単に壊してしまった。でもあんなに自分のことをさらけ出してしまったら、逃げ出してしまうことも致し方なし。


 よく頑張ったぞ私! と自分を褒めることにする。


「ほんと、恥ずかしかった。でも、言いたいことは言えたし、思惑通りね」


 私は私なりに考えて、糸電話という懐かしい会話方法を用いた。

 昔、私と律は夜にこっそり糸電話をしていたことがあった。まぁそれをすることで、少しは昔の気持ちを思い出してくれるかなとか思ったんだけど……どうにも現実はうまくいかないらしい。


 私はこのもやもやをすべてベッドに飛び込み、ハートのクッションを思いっきり抱くことで解消。

 

「友達として、幼馴染として……かぁ……」


 天井に、息を吐くようにそう呟く。

 もちろん返事なんて返ってこなくて、私を都合よく励ましてくれる言葉もない。ただ、私の救われない言葉だけが、私に戻ってくる。


 まぁ確かにそうだ。私がやらかしているってことに気づくのが遅かったんだ。私が律の立場なら、きっと同じように諦めてた。だから、至って普通の対応だ。


 でも……でも……


「このぉぉ!! 律の野郎ー!!!」


 律が何かしたわけでもないけど、この行き場のない気持ちはどうすればいいの!!

 恋する乙女は悩むというけれど、ほんとにそうだなと思う。


 でも、今回は進歩と言える。さらに残念ながら、予想通りだ。

 これで私と律は、ある意味もやもやがなく関わることができる。私はもやもやしかないんだけど……それは一度おいておこう。


 私は『ヤクソク』を捨てることにした。

 正直、今までずっとそれだけを見ていたから捨てるのは惜しいし嫌だけど、私だけの独りよがりな『ヤクソク』なんて、何の意味もないってことに気づいたから。だから、私は『ゼロ』からあの幼馴染を惚れさせてやろうと思う。


 そのために、この幼馴染に戻るという選択だ。


 昔の幼馴染に戻ることで、私と律は圧倒的に関わることがたやすくなる。

 それに、律と一緒にいることは普通になるんだから、変に気を使わなくても済むはずだ。

 

 私にはきっとまだまだ時間がある。急に焦って今行くよりも、時間をかけて律をちゃんと好きにさせる方がより安全だ。

 それに……実際私が告白する勇気がまだないし……。


 ほんと、一万回も告白したメンタルどうにかしちゃってるやつが身近にいるけど……私は恋なんてちゃんとしたことない恋愛初心者だ。

 逃げかもしれないけど、まだ私には心の準備ができていない。それに、今律は私を見ていないような気がするから。


「んーーーーー!!!!!」


 なんだかそう思ったら無性に叫びたくなってきた。というか叫んだもうすでに。

 

 ただ、本当にこれで私は色々と前進で来たわけで……でも、これからなところがある。


 でも私が心の準備を整えられて、かつイケる! と思った時には……今度は私が……





 ――告白しよう




「んーーーーーーーー!!!!!」


 で、でも今の私じゃ無理! 絶対無理! は、恥ずかしいし……!


 だから私のペースで、が、頑張ろう!!


「わ、私いつからこんなに律のこと……んーーー!!!」


 ヤバイもう体が熱くて熱くてたまらない。もう夏も近いのね! きっと!


「お風呂……もう一回入ってこよう」


 そう言って、お風呂に向かう私だった。

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