第18話 新しい幼馴染の関係
「お、幼馴染に戻る?」
「そ、そうよ……」
糸電話をしているので加恋が今どんな表情をしているのかとかは何もわからず、今は加恋の声と言葉しか情報がない。まぁ恐らく、この言葉を面と向かって言われたとしても、意味を理解することはできないだろう。
俺は、この意味は俺の中で考えても全く分からないだろうと思い、補足情報を求める。
「あの……もう少し詳しく……」
「ま、まぁ言葉足らずだったわね。その……前みたいに、私の家でご飯食べたりとか……くつろいでってこと! その……お母さんたちも少し心配してるし……ま、まぁ私も……」
「…………」
俺はまさかの二連チャンデレに言葉を発せなくなった。
ありえない。まさか加恋のデレが開拓されたことでデレの出現率が上がったのか? だとしたらそれはもう最高である。ようやく、ツンデレキャラを確立。
「つまり、前みたいに私の『幼馴染』として生活しようってこと。その……律は諦めちゃったみたいだけど……その……」
加恋がごにょごにょ言っていてなんて言っているのか聞こえない。
糸電話なのでなおさらだ。
「ちょっと加恋。何言ってるか聞こえない」
「べ、別に聞いてほしくて言ってるわけじゃないし! いちいち突っかかんないでよね!」
「す、すみません……」
あぁツンだ。
しかし、デレを知った俺はツンでさえ安心感と感動を感じれる。今の俺はツンデレ上級者。これ国家資格級にレア。まぁ誰得だけど。
「まぁその……別に強制じゃないんだけどさ……」
「…………」
きょ、強制じゃない……だと?!
あの基本的威圧して強制的に相手に要求をのませる、いわば悪者と同じ手口を用いているあの幼馴染が俺に許可を求めている……だと!!
もうだめだ。いちいち突っかかっては時間がもったいない。
そう、もう加恋は進化したのである。俺の知っている加恋ではないのだ。
「そうか。じゃあ、お言葉に甘えてこれから元の幼馴染として戻るとするかな。まぁでも安心しろ。友達として……幼馴染として、これから接していくから」
「……は?」
「そうかこれ糸電話だもんな。さすがに聞こえずらいか。じゃあもうちょっと大きな声で言うわ。これから友達として、仲良くさせてもらうな!!」
「聞こえてるわよ! 大きな声で言わないでくれない? 普通に糸電話を通じてじゃなくても聞こえたんだけど!」
「き、聞こえてたのかよ! じゃあそれらしい反応してくれよ!」
「無理よ! 今あまりにも現実は難しいもんなんだなって痛感してたところなんだから!」
「ほんとそれどういうこと?! 摩訶不思議すぎるんだけど!」
ほんと俺の知らない加恋になっちまったもんだ。
まぁあいつは変わり続けてるもんな。
幼い頃は割と温厚で優しかった。でもいつしかツンになっていた。そして現在――摩訶不思議なツン『デレ』キャラへと。
ほんといつまでも変わらない俺にとっては追いつけないですハイ。
でも、この先まだ加恋は変化し続けるのかなと思ったら、それも又少し楽しみなように思えてきた。
「別に今律が理解できなくていいわよ! とりあえず、明日からは昔の幼馴染通り接すること! 朝ご飯もちゃんと食べに来てよね! あと、登校も一緒にするわよ! じゃっ!」
「ちょ……おい!」
加恋は勢いでバーッと言った後、糸電話を切断。
よって会話不可能な状況へとなってしまった。
さ、最後はやっぱり強引なんですね……。
でもまぁ、それは優しくて温厚だった昔から変わらないものではあるけど。
それにしても明日から昔通りか。
まぁ加恋と距離を置いていたのも諦めるために心の整理をつけるためだし、いろいろあった現在、諦めをつけることはできていたし、わりと変に意識するようなことにはならなくなったと思う。
それにまぁ、一万回告白して諦めた後でも俺と加恋の関係は続いていくわけだ。
そんな固い絆で結ばれた友情を、ここで終わらすのももったいないということ。それに、加恋との恋愛だけが、俺たちのすべてではないと思うから。
だから、ある意味ここがリスタートなのかもしれない。
「まぁ、きっと大丈夫だろ」
そう呟いて、糸電話を回収していた。
あいつ糸切って紙コップだけ持っていきやがったから、俺の紙コップに長い糸つながったままなんだよなぁ。だから、ちゃんと回収しないと。
俺と加恋の家の間に垂れ下がった糸を回収しているとき、ふと気づいた。
「あれ、俺朝ららと約束してなかったっけ?」
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