第16話 今どき糸電話ってありかよ

「ぶふぁー」


 またもや制服のままベッドに飛び込む。

 まさかの二日連続同じ行動をしたということもあって、既視感が半端じゃない。ただ、昨日と同じくらいに疲れていることは間違いなくて、大変な毎日になってしまいそうな予感がしてならない。

 

 退屈すぎる毎日よりかはいくらかマシのなのだが。


 ベッドにゴロゴロしながら、携帯の画面を見る。

 

『先輩傷心デートどこ行きたいですか~? ちなみに、デート場所によってこんな風に私の私服が変わります。一番先輩の好きな私を選んでくださいねぇ~。あっごめんなさい、全部の私が好きでしたねてへぺろ』

 

 そしてそれに何枚かポーズをとっている私服のららの写真が送られてきていた。

 なるほどこれは迷惑メールか何かかな。もしくはスパムメールと同じ類?

 とりあえず適当に、『送信先間違えてますよ』と送っておく。


 そしてもう一通。


『今日はいろいろとすみませんでした。あと、これからは私に色々と教えてくださいね? 突然のメール、失礼しました』


 という律義な文。

 色々と教えてくださいね? の部分に少しだけドキリとしてしまうのは、まだ白幡さんに幻想を見ているから。ポンコツなことと今までのイメージがかけ離れているので、まだしばらくかかりそうだ。


 俺はあの後、「これは俺がすべきことだな」と思ったため、白幡さんのお願いを承諾した。

 俺が正直恋愛を教えられる立場にはないのだが、白幡さんの今の現状から見れば俺が適任であると感じた。あれを社会に離すのが怖いってこともあります。


 まぁこれも何かの縁だと思うからな。


 俺はとりあえず、『力になれるようできるだけがんばる』と送っておいた。


 普段携帯をあまり使わないので、打つだけでなんか疲れた。

 今どきの高校生ってすごいよな。あんな打つの早いとか、指の筋肉だけ以上に発達してすんごい太くなりそう。


 ……想像したらなんか面白いな。

 それに中学校のジャージを合わせたら……おうけいさらに俺の頭がおかしいということが証明された。

 おうまいがー。


「ピコン!」


 すると携帯が鳴った。

  

 何事かと思ってみて見たら、差出人のところに『加恋』という二文字が。

 そしてメールの内容が、『窓を開けろ』


 なるほどこれはららよりも恐ろしいメールが来てしまったな……加恋じゃなかったら犯罪のにおいしかしないよ。

 

 でも加恋からこういうメールが来たことはなかったので、とりあえず窓を開ける。

 すると、隣の家の窓から、中学校のジャージを着た加恋が何かをもって俺の方をじっと見ていた。


 そこで俺がまず初めに思ったこと。


 やっぱ私服中学校のジャージなんだ……


「加恋どうしたんだ?」


「いや……その……とりあえず、これ受け取って!」


 そう言って加恋は俺の方に向かって何かを投げた。

 きれいな放物線を描き、俺の部屋へとゴールイン。


 投げ込まれたものを手に取ると、それは紙コップだった。それも、紙コップに糸がついたもの。

 

「……糸電話?」


「その……とりあえずこれで話をしなさい!」


 加恋はそう言って、俺の紙コップとつながった紙コップを持って窓から姿を消した。

 俺はそんな加恋の様子を見て、とりあえず紙コップを耳に当てる。


「あーあー。テステス。聞こえてるなら返事して」


「聞こえてますはい」


 ……一体今からどんな話が始まるのだろう……。


 懐かしい糸電話、始まる。

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