第14話 このラブコメおかしなヒロインしかいない

「……へ?」


 想像の斜め上空二万メートルを行く告白に、俺は「へ?」しか言えない低能な人間に成り下がってしまう。

 しかし、たぶん実際男ならこの状況になったら誰でもそうなると思う。


 白幡さんは依然として天使のような笑みを浮かべていた。

 

「その……どういうことですか?」


「だから、私と付き合ってくれませんか?」


「それはつまり……恋人になろう……と?」


「はいそうです!」


 そ、そんな天使の笑みを浮かべながら俺のことを見ないでぇ……。

 いや普通に考えろ俺。この人が俺のことを外見とかで好きになるわけないだろ。というか俺のことが好きになる理由が我ながら一つも分からない。


 だからこそ、白幡さんの告白は失礼だが全く信じれなかった。

 

 なので、失礼ながら質問をしてしまう。


「そ、その……それはどうして……ですか?」


「それはもちろん、神之木さんだからです」


 それ、理由になってませんよね?


 でも、ここで俺はふと思う。

 もしかしたら俺は、今まで自分を正当に評価することができていなかったのかもしれない、と。

 つまり俺は実は――イケメンだったりして?


 いやさすがにそれはうぬぼれだな俺。さすがのキモさに読者も引くぞ。

 で、でも、もしかしたら俺にいいところがあったりするのではなかろうかそうではないか?

 

 いやなんて俺は失礼なことを今考えているんだ。

 今は白幡さんの告白について考えなければいけないというのに……でも、詳しく知ることもたぶん重要だよね。


「その……そこを詳しく聞いてもよろしいでしょうか……」


 俺は恐る恐る……さらに少しの期待を込めて聞いた。

 すると白幡さんは変わらぬ表情で、またもズバッと言った。





「神之木さんは、紅葉さんの幼馴染だからです」





 俺の期待を返せこらぁぁぁ!!!

 もう俺世界に嫌われてるとしか思えない。あと、その理由意味わかんない。

 俺はさらに情報を求める。


「なぜー加恋と幼馴染だから俺と付き合おうと……?」


「それはですね……私、いつも紅葉さんに負けて何でも二位なんです。定期テストも、体力テストも。そして……人気さえも……!」


 おうけいよく分かった。

 さすがラブコメだ。

 俺はなぜかいろいろと吹っ切れて、戦闘態勢になる。


 そもそもおかしいと思ったんだ。ありえないと思ったんだ。

 それを本能が察していたようで、どこか白幡さんと付き合えるんじゃないかという期待は最初から俺の中になかった。


 それに、新しい恋を見つけたいといっても、こんなに急なのは俺としては心の準備が……と、贅沢なことを言っているが、実際新しい出会いを求めているのには間違いない。


 とりあえず、このおかしな天使系美少女(偽りの姿)の相手をしよう。


「よしとりあえず、俺とゆっくり話そうか?」


「は、はい……いいですけど……」


 長話になりそうなので、椅子になりそうなちょうどいい段差に腰を下ろす。

 白幡さんは、人一人分くらいの感覚を空けて俺の隣に座った。


「で、だ。白幡さんは恋愛経験ってある?」


「きゅ、急にそんなこと……私の告白はどうなったんでしょうか」


「いったん保留だ。今は白幡さんと大事な話がしたい」


「そ、そうですか……」


 白幡さんは少し曇った表情をしたが、すぐに「わかりました!」と言ってぱーっと笑顔になる。

 今の少しの会話で分かったこと。

 この子たぶんポンコツだ。俺が人のことを言えないのは自覚してるのでどうかお許しを……。


「私は恋愛したことないです。告白されたことはあるんですけど、どうにも恋人になるメリットが分からなくて……」


「なるほどね」


「だけど、神之木さんと付き合えば紅葉さんを出し抜いたことになりますし、メリットがあるんです! 私思ったんですよね。これが恋なんだ! って」


「オーケー一つ声を『大』にして言いたいことがあるから言ってもいい?」


「は、はい……いいですけど……」


 今の白幡さんに教室の時のオーラはない。

 なぜなら、正直ポンコツ度で言えば白幡さんの方が高いと理解したから。


 だから俺は、今声を大にして、言いたいことを叫べた。






「そんな理由で告白してんじゃねぇよぉぉぉぉぉぉぉ!!!!」







 俺、いつから叫ぶ系主人公になったんだろう……

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