第13話 単刀直入に言わせてもらおう
「あれは一体何だったんだろう……」
白幡さんが教室を去って少したってから、時計の針は再び動き始めて、教室に喧騒が満ちていった。
ほんとイナズマ〇レブン世代の俺からしたら『ヘブンズ〇イム』かと思っちゃうよね。今それすごーくどうでもいいんだけどさ。
「いやさ、ついに律にもモテ期が到来したのかもな」
「なわけあるか。俺に話したこともないのに惚れる要素がどこにある」
「……ほんとだ全くないな。正論過ぎて何も言い返せねぇよ」
「そこはどうにか返してくれよぉ!!」
そう泣き泣き翔に言う。まぁ実際事実だし、ほんとだと思って言ったんだけどね。
だけどそういうときこそ否定してほしいなっていう気持ちも込めて言っているわけで。人間、めんどくさい生き物だなって思ってしまう。
急に悟り開いてどうすんだ俺。
そんなことを脳内で語っている場合じゃなかった。
加恋の話がさっきので中断されてしまったのだ。
だから今すべきことは加恋の話を聞くべきことだろう。
そう思って加恋の方に視線を向けると、加恋がちょうど俺の方を見ていた。
「加恋……さっきの続きを……」
「……や、やっぱいい……。また、機会があったら……」
加恋はそう言い残して、さっと自分の席へと行ってしまった。
「あーあ。お前ってつくづくラブコメの主人公だよな」
「何それ悪口にしか聞こえないんだけど!」
「だってラブコメの主人公ってもはや悪口として使われてるだろ? 今の世の中」
「全ラブコメの主人公に謝れこらぁぁ!!!!」
翔が謝らないので俺が代わりに謝ります。
ほんとすみませんでしたぁぁぁ!!!
「で、ほんとにさっきのは何だったんだろうね……でも屋上で話って……というか屋上解放されてなくない?」
「た、確かに……もしかしてそれを知らないのか?」
「まぁとりあえず、行ってみるしかないか」
返事した以上、行くしかない。
でも、屋上となると他の人には聞かれたくない話だよなぁ。
ほんと、何なんだろう。
そう頭を悩ませていると、担任がホームルームのため教室に入ってきた。
俺はそれを見て、放課後になってみないと分かんないなと、一つの答えに落ち着いた。
***
「じゃあそろそろ行ってくるわ」
「おう。行ってらっしゃい」
「行ってらっしゃい」
神カップルに見送られて、俺は屋上に向かう。
加恋の席の方にちらりと視線を向けたが、もうすでに加恋はいなかった。
いたところで、俺が何かしようと思ったわけではないけれど。
話とは一体何だろうという疑問を頭に巡らせながら、屋上に向かう。
すると、わりとすぐに屋上に着いた。
しかし一般開放はされていないので、開いているとは思えないのだが……
「いちおう……」
屋上のドアノブをひねる。
するとさび付いたドアが「きききぃー」という音を立てて開き、一瞬の風がぶわっと俺のもとに吹き込んできた。そして、俺を置いて吹き抜けていく。
一瞬にして視界が開ける。
ここらへんで学校の屋上は一番高い位置にあるため、遮るものは何もなく、まるで雲の上にいるような感覚に陥る。それほどに、幻想的で、美しい景色。
そしてそんな非現実的で、美しい景色を脇役として従えている白幡さん。
正直なところを言うと、俺が今までに見た女子の中で一番美しいなと思った。
そんな白幡さんが俺に気づくと、また天使の笑みを浮かべて口を開く。
「あっこんにちは、神之木さん」
「こ、こんにちは」
おっとりとした雰囲気はまるでお嬢様のよう。
俺まで慣れない「こんにちは」という言葉を発してしまう。
日本人実際そんな挨拶しないからな。……なるほど、俺だけのようだ。
「来てくれてありがとうございます」
「い、いや……別にいいけど」
なぜだろう。白幡さんといると自分が下の存在であるように思えてしまう。
いやたぶん社会への貢献度とかもろもろ言ったらきっと俺は下なんだけどね?
やめよう自分を傷つけるのは。俺に優しくできるのは俺だけなのだから(名言風)。
「では、単刀直入に言いますね」
「……は、はい……」
すごい単刀直入だな。
ただ、それほどに簡潔で、白幡さんから見れば軽いものなんだなと、勝手にそう思った。
さらに言えば単純で……そう。たとえば、くだらないけど「気になっていたんですけど、いつも寝癖たってますよ?」みたいな、クソどうでもいいこと。
俺はそんなことだろうと、そう思い込んでいた。
白幡さんは本当にズバッと、まさに屋上を吹き抜ける風のように清々しく言った。
「私と付き合ってくれませんか?」
全然軽くないじゃん!!!
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