第10話 彼と彼女の『一万回』は『ゼロ』になる
「さっきのは何だったんだろう」
自室のベッドに横たわりながら、天井に向かってぼそりと呟く。
加恋は俺と約束をしたみたいなんだが、いつしたのかも……どんな内容だったのかも思い出せない。というか、俺は知らない。
でも、加恋が泣くほどに大きな約束だったんだよな。しかも、俺の恋に関する約束……だよな、きっと。
じゃあなおさらなんで覚えてないんだ俺。
もし「結婚できる年になったら付き合おう」っていうピュア乙女みたいな約束してたなら絶対どっかに書いてるしな。というか呪文のように唱えるけどな。たぶん、呪われてるのは俺だな。
無意味に左手を天井へ伸ばす。
ほんと、俺はこれからどうすればいいんだろう。
加恋は俺が約束を覚えてなかったことにえらく腹を立てていたし、なにせ俺は諦めると決意した。だから、俺と加恋はきっとこの先はただの『幼馴染』として接していくんだと思う。
でも、約束とやらが気がかりなのは、間違いない。
でもこればっかりは悩んでもしょうがないな。
もし話そうと加恋が思った時は、ちゃんと耳を傾けることにするか。
「うぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!」
隣の家からとんでもない声が聞こえてくる。
俺の部屋のすぐ隣の家の部屋に、加恋が暮らしている。
つまり――この声は加恋のもの。
「あ、あいつどうしたんだ?」
今日だけで幼馴染はバグってしまったようだ。
こんな姿、十年弱の間に見たことがない。なにかあった……と言えばやはり俺が諦めたことが原因だろうな。ほんと、じゃあどうすればいいんだよ!!
でも、俺は新しい恋をしようと思ったんだ。
今俺は原点、つまり『ゼロ』にいる。だから、スタートダッシュを切らねば。
でも、そんな出会いなんてそこらへんにあるもんじゃないもんなぁ。
「はぁ」
また意味もなくため息をはいた。
――この時の俺はまだ知らなかった。
まさか俺がこうも早く、美少女からモテ始めるなんて。
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